国内大手の生命保険会社や損害保険会社が投資先企業の株主総会で議決権を行使する際の方針が1日までに出そろった。生保は議案の賛否の判断基準をはっきりさせ、企業経営を監視する姿勢を強めた。損保は営業力強化の一環として取引先の株を持つ割合が高く、曖昧な方針の開示にとどまった。生損保の「物言う株主」への変身は道半ばだ。
日本生命保険は議案の賛否を検討する際の具体例を公表した。一定期間にわたり無配や赤字が続いている企業が退職慰労金を贈ったり、役員報酬を増やしたりするケースが対象になる。
明治安田生命保険は取締役選任の際に、社外取締役が最低1人いる必要があるとの基準を公表した。住友生命保険は取締役会への出席が不十分な社外取締役の再任には原則賛同しないとしている。情報開示に積極的な第一生命保険は議案の賛否数の公表にまで踏み込んだ。
東京海上日動火災保険など大手損保も、赤字企業の退職慰労金の贈呈といった議案を精査する考えを示した。ただ、生保各社と比べると総じて具体性は乏しい。自動車メーカーなど取引関係のある会社の株式を持つケースが多く、純粋な投資家として経営改善を働きかけにくい面がある。
政府は機関投資家に求められる行動規範「日本版スチュワードシップ・コード」を公表した。生損保大手は政府方針に呼応し議決権行使に関する対応方針を示した。投資先企業が反発する懸念もあり、生損保の取り組みは曲折がありそうだ。
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