みずほ:日本株アナリストから「投資銀行家」への転向を後押し
9月2日(ブルームバーグ):みずほフィナンシャルグループ は、日本株の調査を行うアナリストが投資銀行業務を行うインベストメントバンカーに転向することを後押ししていく方針だ。みずほ証券の長手洋平シニアエグゼクティブが明らかにした。
みずほ証の長手グローバル・パンアジア・エクイティヘッドはブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、自社アナリストに、バンカーに転向し日本企業が市場からの資金調達や合併・買収(M&A)など収益を拡大するための助言を行う機会を、積極的に与えていく考えを示した。
みずほFGと三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友FGのメガバンクは貸し出しによる収益が伸び悩む中、手数料収入を増やすため投資銀行業務の拡大を模索しており、競争は厳しさを増している。日本の上場企業の約7割を取引先に持つみずほは大企業との関係を強みに、引き受けやアドバイザリー業務を強化している。
金融スペシャリストに特化した人材コンサルティングKANAEアソシエイツの阪部哲也代表は、「業界再編につながるようなビックディールをやる際、アナリストが持つセクターの深い知識や将来の市場動向などを予見する能力は有効だ」と指摘。一方で、「企業を評価する」という立場からフィーを企業から「稼ぐ」立場に変わるため、これまでの経営トップとの「距離感」やビジネス上の「メンタリティー」の変更を迫られるだろうと難しさにも言及した。
みずほ証ではすでに日本株アナリストがバンカーに転向する動きが出始めている。半導体や精密機器メーカを担当していた大森栄作氏は7月、電気・精密機器などの企業を担当するバンカーに、また運輸業界を調査していた国枝哲氏は1月、運輸・物流業界のバンカーになった。
「有意義な仕事」米バンク・オブ・アメリカ (BOA)メリルリンチから2012年にみずほ証に移籍した長手氏は8月25日のインタビューで、「みずほはコーポレートバンクのカルチャーを持っており、そこにエクイティマーケットのカルチャーを持った人材を送りこみ、それを融合させることで顧客企業にプラスな説明ができる」と語った。また今後は担当転換などの人材流動化を「積極的にやっていきたい」との方針を示した。
ブルームバーグ・データによれば、みずほは株式引き受け業務では14年は現在5位、M&A助言では10位で、三菱UFJやSMFGの証券子会社よりランキングは低い。
金融機関向けコンサルティングのエグゼクティブ・サーチ・パートナーズの小溝勝信代表取締役は、「エクイティアナリストで投資銀行業務に携わりたいと思う人は多く、ファイナンスやM&Aなど企業の生死を左右し得る重要で有意義な仕事だと思っている」と述べた。また、アナリストは「企業分析ができ、経営トップへの人脈もある」と投資銀行業務を行う上での強みについて話した。
KANAEアソシエイツの阪部氏は、「保守的だったみずほのこうしたチャレンジは興味深く注目に値する」と述べた。
日本株強化へみずほ証ではこのほか日本株の調査と営業体制も強化する。長手氏(46)によれば、調査では年内にもテクノロジーと素材(化学など)の分野でアナリストを外資系証券などから起用する。また現在約70人の営業体制を強化するため、セールスとセールストレーダーを5人程度アジア、欧州、米州で採用する計画だ。日本企業のカバレッジは14年3月末時点の440社から来年3月をめどに480-500社程度まで増やす方針。
長手氏は株式相場は年末までの数カ月で大きく上昇する可能性があるとみている。企業業績は消費増税後も期待より高く、上方修正の公算が出てきていることや、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )の株式投資の拡大が見込まれることから、「日本から欧州に行ったお金が、日本に流れてくる可能性が十分にある」と指摘した。
みずほは9月3日から東京で投資家フォーラムを開催する。国内外から過去最高の約2000人の機関投資家が参加する見込みだ。5日には甘利明経済再生担当相が「アベノミクスの今」と題して基調講演を行う予定。
また同フォーラムでは日本企業約300社と投資家との個別ミーティングが予定されている。みずほ証によれば外国人投資家からリクエストの多かった企業10社は、楽天、ダイキン、ブリヂストン、サイバーエージェント 、コマツ、スタートトゥデイ 、日本電産、ホンダ、KDDI、ソフトバンク。
記事についての記者への問い合わせ先:東京 日向貴彦 Takahiko Hyuga thyuga@bloomberg.net
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更新日時: 2014/09/02 00:00 JST