東條英機は陸軍大臣の時は、支那からの撤退を主張する近衛文麿に反対し、陸軍の立場を代弁したが、首相になってからは、天皇の意を受けて、開戦には消極的であった。開戦もハルノートに煽られて渋々である。石原莞爾みたいなタイプではないから、確固とした持論があるわけではない。明治憲法下で首相にたいした権限はないので、何でも出来る独裁者というわけではないが、憲兵を積極的に活用していたのは確かである。中野正剛を自殺に追い込んだ件などが象徴的である。戦時下なのだから、首相が誰であれ言論弾圧はするだろうが、恨まれるのも当然である。陸軍大学校を60人中11位で卒業しているので、エリートではあるが、必ずしも抜きん出た存在ではなかった。小柄でも喧嘩は強く気性は激しかったが、風采が上がらないのも確かであった。カリスマ性はなく、あまり主役というタイプではない。出世欲はあったが、首相になりたいわけではなかった。昭和九年に皇道派の真崎甚三郎により九州に左遷され、その後、東條と昵懇の関係だった永田鉄山が暗殺されたので、東條の身を案じた林銑十郎が東條を関東軍憲兵司令官として満州に逃がしたのである。昭和十一年の2.26で皇道派が衰退し、統制派の東條英機に何となく出番が回ってきた格好である。東條英機が陸軍次官になった時、近衛文麿は東條のことをまったく知らなかったのだから、周りが失脚していくうちに浮かび上がった存在なのである。東條英機の父親は岩手県人であったから、長州閥の専横でずいぶん苦労したのだが、山県有朋が死んでからずいぶん長州閥の力は後退し、むしろ長州閥が攻撃されるような感じになったので、その意味でも東條英機は上に上がれたのである。

敗戦後、東條は割腹自殺などしなかった。そしてムッソリーニのように民衆から私刑にされることをおそれていた。MPが東條英機を拘束しに訪れた際に、ピストル自殺を試みて重傷を負いながらも生き残ってしまったが、誰もがこの失態を嘲笑の種にした。頭に向けて引き金を引けばいいものを、心臓を狙ったため、銃の反動で逸れてしまったのである。マッカーサーの元には「東條を死刑にしてくれ」という手紙が大量に届いた。同時代の民衆からの悪評は凄まじく、巣鴨プリズンに収監されてなければ確実に民衆から殺されていた。

靖国神社や戦犯の問題を語るとなると、東京裁判は事後法だから無効という話になるのだが、そもそも東条英機は戦没者ではない。生きてるから東京裁判に掛けられたのであり、戦没者なら東京裁判の場にいるわけがない。乃木希典は明治天皇の崩御に際して殉死したが、戦没者ではないので祀られていない。乃木希典を祀らないのであれば、東条英機も祀るべきではないであろう。厚生省の祭神名票が戦犯を祀る根拠ともなっているのだが、このような混乱が生じるのは、戦前の靖国が国家の施設であったのに対して、戦後は単なる宗教法人なので、すべては靖国神社の判断次第になっているからである。戦傷病者戦没者遺族等援護法の問題もあり、公務死認定基準として、戦犯で処刑された人間も公務死とされているが、歴史の問題としては、処刑された戦犯が戦没者のわけはない。遺族年金や弔慰金を支給するという問題と、靖国に祀る問題が同一視されているのである。

東京裁判史観は、昭和天皇は無罪ということである。昭和天皇を無罪と断じた東京裁判をネトウヨが批判するのがよくわからない。東京裁判の主席検事のジョセフ・キーナンは、その最中に昭和天皇に責任を問わないことを記者会見で強調している。法廷でのキーナンと東條のやりとりも、昭和天皇に責任がないという結論に至るように、事前に打ち合わせた上で行われているのである。マッカーサーの強い意向でそういうことになったのである。国際法的に昭和天皇が無罪だと決まったのに、靖国に戦犯を合祀して、東京裁判は無効であると大騒ぎする感覚はよくわからない。あの当時の状況で、東京裁判をやらずに、昭和天皇を無罪にする方法はあり得ない。東條英機という人間のクズが、打ち合わせ通りに答えて死刑になったのは、彼の人生で唯一の善行であるのに、それを靖国に祀って混乱させるのは、禍根を再燃させることでしかなく、日本にとってマイナスでしかない。東條は処刑される前に、陛下に累が及ばなくて本当によかったと教誨師に語り、天皇陛下万歳を三唱した。クズがクズなりに最後だけ頑張ったのだから、決して東條の名誉は回復させてはいけないのである。東京裁判により昭和天皇の無罪は永遠であり、戦犯の大罪は永遠である。サンフランシスコ講話条約には東京裁判の結果も含まれている。これは昭和天皇の無罪が国際的に確定していることも意味する。靖国神社は朝敵であり、もはや嫌韓の本拠地でしかない。天皇を崇拝する人間と、韓国が嫌いな人間は別の人種であり、後者が靖国に参拝するのである。







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