デング熱 継続的な蚊の駆除必要9月1日 19時25分
デング熱に国内で感染した患者が20人を超えたことについて、蚊の生態に詳しい国立感染症研究所昆虫医科学部の沢辺京子部長は「ウイルスを持った蚊が1匹ではなく、数匹、もしくは何十匹と公園内にいたということだ」と指摘し、代々木公園やその周辺での蚊の駆除を継続的に行う必要があるとしています。
デング熱を媒介する蚊は主に「ネッタイシマカ」と「ヒトスジシマカ」の2種類で、このうち国内に生息しているのは「ヒトスジシマカ」です。
ウイルスを感染させるおそれがあるのはメス。
メスは30日から40日という一生のうち4回程度、産卵しますが、いずれもその直前にヒトや動物を刺して血を吸います。
このとき体内にウイルスを取り込んだり、逆にうつしたりするのです。
このため1匹のヒトスジシマカが感染させることができるのは、多くても3人から4人程度とされています。
しかし、今回は2週間ほどの間に20人以上が感染したとみられています。
沢辺部長は「これだけの患者が一度に出るということは、ウイルスを持った蚊が1匹ではなく、数匹、もしくは何十匹と公園内にいたということだ」と指摘しています。
また先週、東京都が薬剤の散布を行った代々木公園の複数の場所で、沢辺部長のチームが蚊の調査を行ったところ、場所によっては薬剤散布の前よりも多い数の蚊が確認されたということです。
沢辺部長は「駆除が十分でなかった可能性があり、ウイルスを持った蚊はまだ公園内にいると考えられる。代々木公園やその周辺について蚊の分布を調べたうえで、一斉に駆除を行うべきだ」と指摘しています。
一方、デング熱は、ウイルスに感染しても症状が出ない「不顕性感染」の人が、全体の50%から70%いると言われています。
症状が出ないため感染には気付きませんが、体内に1週間程度ウイルスを持っている状態で蚊がこうした人を刺すと、ウイルスを吸い込んで別の人にうつすおそれがあります。
このため一度蚊を駆除しても、症状のない人が公園に来て蚊に刺されれば再びウイルスを持つ蚊が発生することが考えられ、沢辺部長は「蚊が活動しなくなる10月下旬までは継続的に薬剤散布をするなど駆除の対策を継続していく必要がある」としています。
さらに沢辺部長は、今回、感染した患者がさまざまな地域に住んでいることから「患者の自宅周辺などで二次的な流行が広がるおそれもあり対策が必要だ。一般の人たちは感染しないためにも、また自覚しないまま感染を広げないためにも、蚊に刺されない対策を取ってほしい」と話しています。
デング熱の症状は
国立感染症研究所によりますと、国内でデング熱と診断された患者の数は、現在の方法での調査が始まった平成18年4月からの5年間に581人で、いずれもアジアを中心とした海外で感染したケースとみられるということです。
このうち4.1%に当たる24人が重症でしたが、死亡例が報告されたことはないということです。
海外で感染した患者が毎年20人程度受診するという国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志医師によりますと、デング熱の症状は、40度近い高熱や関節痛、それに目の奥の痛みなどで、インフルエンザと似ていますが、およそ半数の人で熱が下がり始めたころに全身に発疹が出るということです。
通常は7日から10日程度で回復するということですが、中にはけん怠感などが続く人もいて、完全に回復するまでに数週間かかる場合もあるということです。
重症化した場合でも点滴など適切な治療をすれば致死率は1%未満とされていて、このセンターでは、これまで治療した100人以上の患者の中で死亡した人はいないということです。
忽那医師は「かぜみたいなものだと油断するわけにはいかないが、ほとんどの人は自然に治ってしまう。ただ血液中の血を固める成分が減少するなどの症状が出ることもあり、きちんと治療する必要があるので、発症の疑いがある場合はまずはかかりつけの医療機関を受診してほしい」と話しています。
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