「日本の女性首相候補ナンバーワン」といわれる小渕優子議員(40)は「最年少」や「初」という修飾語が多い。優子氏は2000年に急逝した父・小渕恵三元首相の選挙区である群馬5区を引き継ぎ、26歳で「最年少」国会議員になった。また、34歳だった08年には麻生太郎内閣の内閣府特命担当大臣(少子化対策担当)に戦後最年少大臣として抜てきされた。そして、大臣在任時に第2子を妊娠、現職閣僚としては初の妊娠となった。
40歳にして既に5選、大臣・自民党幹事長代理・党人事委員長などベテラン議員以上の経歴を誇る。その優子氏が今度は自民党の初の女性幹事長であり、最年少幹事長に抜てきされる可能性が高いと読売新聞が先月31日に報じた。安倍晋三首相が、自分の強調する「女性重視政策」の宣伝効果を最大限に生かそうと、女性幹事長任命を推し進めているというのだ。
自民党「ナンバー2」の幹事長になるということは、首相の座に一歩近づくということだ。03年、小泉純一郎首相は当時3選だった新米議員の安倍氏を幹事長に抜てきし、最年少首相への足掛かりをつくった。
小渕恵三元首相は長男ではなく積極的な性格を持つ次女の優子氏を早くから自身の後継者に考えていた。恵三氏は「英国のサッチャー首相のような女性首相になれ」と、「優子」と「サッチャー」を合わせて「ユッチャー」と呼んでいた。優子氏は大学卒業後、テレビ局(TBS)のアシスタントプロデューサーなどをしていた。1999年に首相の父親を助けたいとして退社、首相の私設秘書を務めた。TBSプロデューサーの夫との間に男の子が2人いる。
優子氏は「敵をつくらない性格」で知られていた父親の性格にそっくりで「謙虚で思いやりのある女性議員」としても有名だ。安倍首相が12年末に入閣を勧めたが、「まだ大臣を務めていない先輩議員も多い」と断り、その代わりに財務副大臣に任命された。少子化や子育ての問題については発言が多いが、安全保障・外交分野では自身の声を挙げることがない。
しかし、優子氏が所属する派閥「平成研究会」は韓国・中国などアジア重視の外交を強調し、安倍首相とは距離を置いている。平成研究会は小渕恵三氏のほか、田中角栄氏、橋本龍太郎氏など歴代首相を数多く輩出している名門派閥だ。議員52人が所属しており、日韓議員連盟会長の額賀福志郞議員が会長を務めている。額賀氏は韓国・中国との外交問題を考慮し、安倍首相の靖国神社参拝に反対している。
このため、安倍首相の「小渕優子幹事長抜てき」は、来年9月の自民党総裁選で平成研究会の支持を得るための妙手との見方もある。
だが、平成研究会では「小渕議員の若さで幹事長を務めるのは、まかり間違えば政治的に危うくなる可能性もある」という慎重論も出ている。来春の地方選挙で負ければ、幹事長の責任論が取り沙汰されるかもしれないためだ。