某トマト大好きさんの「YOUもパクっちゃいないよ!」的な記事を見て背筋が凍るような思いをしたのでそんな気分を書きます。リンクなんて貼ってやんねーよ。
※このキリンさんはフリー素材です。
構ったら負けのような気がするけど、一度盛大にパクられを経験している身としてはあの記事を「犯罪被害者に対して第三者が『お前に落ち度があったから被害に合うんだ』と説教しているようなもの」と認識しました。間違いなくわざとやっていると思うのですが、あまりにも倫理的に問題のある発言なのでびっくりしました。
みなさん「なぜパクリがいけないのか」を書かないんですよね。「麻薬=絶対ダメ」という感じのノリで「パクリ=絶対ダメ」と思い込んでいる感じさえあります。こういう思い込み、思考停止は怖いです。
さて、コンテンツのパクリって、何でいけないんですか?これ、真面目に答えられる人、どのくらいいるんでしょう?「盗むのはいけないことだからいけない」「法律違反だからいけない」みたいな幼稚な意見はダメですよ。
ここを「コンテンツ」じゃなくて「コンビニに並んでいる商品」とか「余所の家にあるカッコイイ置物」とか「友達の持っているかわいいストラップ」とか「道端の畑に転がっているスイカ」に置き換えて何を感じるかってことだね。倫理観とかまるでないじゃん。窃盗の推奨をしているわけじゃん。「どうせばれないし冤罪とか言えば見逃してくれるだろうし痴漢しまくろうぜ」って言っているようなものじゃん。発想が怖いよ。炎上とか言うレベルじゃなくて謝罪削除ものじゃないか。
時代の流れが速すぎて現在の法律では裁けないのかもしれないけど、「他人のコンテンツを許可を得ずに転載する」ことは間違いなく泥棒です。「かーしーて」「いーいーよ」がないのに持っていってはいけないって幼稚園でも徹底していることですよ。
バイラルメディア関連の報道を見ていて感じるのが、一時期流行った「ツイッター冷凍ケース事件」と構造が似ているなっていうこと。私的な悪ふざけ自体の罪はおいておいて、それを無自覚に拡散させていることが問題だったんだけど、拡散した当の本人サイドはそれがどう影響を与えているか知ったことではないという感じだった。今回も一緒で「パクリは悪いことだからしてはいけませんよ」と言っても「なんで? ボク悪いと思っていないからやっちゃうもん! だって楽しいもんねー」ってまるで聞き入れることはない。金儲けとかそれ以前の倫理観とか住んでいる世界が違うと言ってもいいと思う。
もうね、こういうのは分かり合おうと言うのが無理なのかもしれない。ツイッター冷凍ケースなどはバイト先や学校などが当該生徒に厳重処罰をしたことが見せしめになっていたけれど、こういう「何故パクリはいけないのか」という倫理観がない奴は誰か実際に痛い目を見ないとわからないのかもしれない。でも実際まだネット上での著作権の範囲はあやふやなところが多い。「拾った画像だから使ってるんです!」っていうのが結構あるし、たくさんの人に保存されてもはや出所不明の画像はどう扱っていいのかよくわからない。
だけど、やっぱり他人の畑のスイカを勝手に持って行って自分の店で売るのはよくないというのはわかると思う。「僕はこのスイカをおいしいから紹介しているんです!」って言ったって利益がその人のところに行くわけでもないし、何より次に何も知らない客が訪れるのは畑の持ち主のところではなく、スイカを売っていたパクリのお店になるわけだから畑の持ち主が儲かることはないし、「あそこのスイカはオイシイらしいぞ」って別の泥棒がわく可能性がある。そして最終的に「盗まれるのが嫌ならスイカを作るな、売るな」「スイカに麻薬でも混ぜておけばスイカ廃人が畑にまで押し寄せるぞ」っていう根本的に解決しないアドバイスでなぁなぁにされてしまう。
実際にまだまだ「パクリの線引き」すら曖昧な状態だと思う。完全に成りすましみたいなひどい奴から「フードをかぶっているのはあのアニメのパクリ!」みたいな難癖レベルまで「パクリ」と認識されるものは幅広い。それをどうやって皆がある程度ストレスなく運用できるかというところに来ているんだと思う。ルールの上で気持ち良く「コンテンツのシェア」ができるのであれば問題はない。そのルールがあやふやだから現状の良くない面がクローズアップされている。
バイラルメディアを積極的に肯定する意見と根本的に相容れないのは、「ビジネス」でしか物事を判断できないからなのかもしれない。儲かるか儲からないかで考えているので相手が嫌だなーと思うことを平気でやる。「俺はやられても平気だからみんなもやろうぜ!」っていうのは「俺はこれだけ仕事をしたんだからお前らも苦労して俺みたいに成功しろ!」っていうのと全く一緒だよね、あれ、みんなが大嫌いな何かの構造にそっくりだなぁ。
自分が怒っているのは「法律的にはまだグレーゾーンであっても、現状でわざわざダメな方向に促すようなことを平然と正当化している」ことですかね。親告罪で訴えられた後なら当事者間の問題だけれど、「僕は被害にあっても平気だからどんどんやればいいと思うよ!」って推奨するのはダメでしょ。虐待スレスレのことをしている家庭があって、法律では裁けないからと言って「当事者間の問題でしょ」っていうのは違うし、「子供も死ぬわけじゃないし、甘やかされるより強く育つからみんなも叩いて躾をしよう!」ってダメじゃん。法律も技術もまだまだグレーゾーンの段階のところを「俺はいいからいいの!」ってそれはアンタが決めることではない。
どんなことを伝えようとしても、本当に届けたい人にはこのメッセージは届かない。某師に限らず「まだ古臭いコンテンツ観で消耗しているの?」など言われてしまう。でも、声を挙げずにはいられないくらい「パクられた」側の底の方には怒りとも絶望ともとれない感情が渦巻いていると思う。そこをうまく付いた某師のバイラルメディアのスケープゴートっぷりは見事すぎて声も出ない。わざわざ誰かの恨みを買って生活していくなんて、あまりにも業の深い商売だ。こんな世界平和に喧嘩しか売らない商売を放置しているほうが問題なのではないだろうか。
どうしようもないおまけ
↓冒頭の「盛大にパクられた」の顛末
Copy writingへの投稿作が反広告社にパクられる一例。 - Togetterまとめ
↓それに関する自分から見た騒動のまとめ
Twitterでハッシュタグ投稿をしてパクられても知らないよ。 - 価値のない話
例のアカウントは現在23万人もフォロワーいるんだよな……何も知らない23万人が自分の作った文章を他人が作ったものと認識して賛辞を贈るって、結構心中穏やかでいられるもんじゃないよ……。