先週、中国とASEANの連携を深めようというシンポジウムがバンコクで開かれました。
タイの主要な財閥の幹部など200人余りが顔をそろえ、演壇に上ったタイと中国の代表は、両国の急速な接近ぶりを印象づけました。
タイ シハサック外相代行
「タイは東南アジアの中心に位置し、経済も地域で2番目の規模を誇る。
中国とASEANを結ぶ架け橋となることができるでしょう。」
中国 在バンコク中国大使館 公使参事官
「タイはASEANの重要メンバーで、とりわけ立地も良い。
中国とASEANをつなぐ重要な拠点となるでしょう。」
シンポジウムでは、タイが中国にとって魅力的な投資先になるにはどうしたらよいかなど意見が交わされ、中国への期待の大きさを伺わせました。
参加したビジネスマン
「中国や中国企業は世界中とつながっている。
今日のセミナーは私たちタイの企業にとって非常に有意義でした。」
タイの国際政治の専門家は、両国が急速に接近するきっかけとなったのは5月のクーデターだという見方を示しています。
安全保障問題研究所 ティティナン・ポンスティラック所長
「軍事政権はクーデターを認め、支援してくれる存在を必要とした。
それが中国だ。」
クーデターを受け、欧米諸国は公式訪問や軍事交流を取りやめなどタイの軍事政権と距離を置く対応を取りました。
これに対して中国は、北京を訪れたタイの外相代行を外相より格上で副首相級の楊潔チ国務委員が迎える異例ともいえる歓迎ぶりを見せました。
欧米とは一線を画した対応に、軍事政権側も応えます。
先月(7月)、凍結されていた中国へとつながる高速鉄道の計画を推進することを決めました。
完成予定は2021年。
総工費2兆円余りを投入して、中国との人やモノの流れを加速させようというものです。
鉄道は大型船が入港できるタイ南部の港湾地帯にまで伸びる計画で、南シナ海などで有事が起きた際には、中国にとって重要な物流のバイパスとなります。
さらに今月(8月)、タイは、中国との外相会談で中国が設立を目指し、日本が警戒感を示している「アジアインフラ投資銀行」に支持を表明したうえで、創設のメンバー国となることを明らかにしました。
タイ シハサック外相代行
「中国との関係はとても良くなっています。
インフラや投資銀行に関する中国側の提案は大歓迎です。」
こうしたタイの姿勢は、アジアの安全保障を巡る議論にも影響を与えています。
今月、ミャンマーで行われたASEANの外相会議では、中国が海洋進出を進める南シナ海の領有権問題が最大の焦点となりました。
NHKが入手した、共同声明の草案です。
高官レベルの協議の段階では、沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海での緊張の高まりに懸念を示す項目や、南シナ海で「緊張を高める行為を停止する期間を設ける」という、フィリピン政府による提案の検討など、中国をけん制する内容が盛り込まれていました。
ところがこれらの文言は、タイなどが反対にまわり削除されました。
最終的に発表された共同宣言では、むしろ中国政府が最近、南シナ海問題で対話に前向きだと評価する内容が強調されていました。
安全保障問題研究所 ティティナン・ポンスティラック所長
「中国は今、タイにとって最良の友だ。
欧米の批判が強まれば、さらに中国シフトを強めるだろう。」