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かつては、難しい、訳がわからないと敬遠されがちだった、現代美術。それが…
かつては、難しい、訳がわからないと敬遠されがちだった、現代美術。それがいま、大きな人気を集めている。
この夏から秋にかけ、横浜、札幌、福岡で、大規模な国際展覧会が相次ぐ。秋田、山形、愛媛、大分などでも催しが企画され、来年は京都、再来年には埼玉でも大がかりな計画がある。
昨年の「瀬戸内国際芸術祭」の107万人、「あいちトリエンナーレ」の62万余人、という盛況の実績が、この流れを加速する。
作品を訪ねる旅や、展示を見ながらの町歩きなど、周辺の楽しみも加わり、アートはいまでは、有力な観光資源になった。
廃校や空き家をよみがえらせ、地域を元気づけるきっかけも作っている。洗練された感覚は商品開発にも活用される。
社会に働きかけ、大きな成果をあげるアートの力。それを、もっと発展させたい。
でも、数字には表せない、人々を揺り動かす力や豊かさは、もっともっと大事にしたい。
例えば、横浜美術館を主会場に11月まで開かれている「ヨコハマトリエンナーレ」のテーマは「忘却」。ディレクターを務める美術家の森村泰昌さんは、こんな考え方を示している。
〈日ごろ忘れていることを、いろいろな角度から照らし出してくれる。それが芸術の力です〉
韓国の作家の「8つの息」という作品は、青い風船を積み重ねたように見える、親しみやすい立体だ。だが、近寄ると、金属製だということに気がつく。見る人は思い込みを揺さぶられ、立ち止まる。アートの力が見慣れた風景を一新する。
やさしい言葉の音声ガイドや、ひらがなで書かれた解説本に助けられながら、子供たちも熱心に作品と向き合っている。
異彩を放つ出品者もいる。
大阪の「釜ケ崎芸術大学」。日雇い労働者の街で、アートを通して学び合う場だ。
美術館に、「大学」の拠点の一部が再現され、街の人たちが書いた詩や書、絵や立体作品が並ぶ。生活に困難を抱える人も多い地域で、「大学」を運営するアートNPOのスタッフは「表現することは、人が生きるうえで、衣食住と同じくらい必要だと感じます」という。
生きることと切実に結びついた作品群は、おおらかなユーモアをたたえている。それを介して、経済成長を労働で支えてきた街と、見る者とが出合う。
美しさで魅了する、びっくりさせる、笑わせる、考えさせる……。アートの力は多彩だ。触れる機会を増やしたい。
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