広島土砂災害:豪雨情報、広島市放置 「1時間70ミリ」
毎日新聞 2014年09月01日 07時30分
広島市北部の土砂災害で市の避難勧告発令が遅れたとされる問題で、広島地方気象台が発表した「1時間の雨量が70ミリに上る」などと注意喚起するファクスを、市が見落としていたことが分かった。市によると、災害が発生した20日の午前1時台から、気象台や民間気象情報会社から注意を促す電話が何本もかかっていたが、市が避難勧告を出したのは午前4時15分だった。市が混乱の中で、刻々と変わる情報に対応しきれていなかった実態が浮かび上がった。
気象台は20日午前1時15分、市が避難勧告を出す指標の一つとしている「土砂災害警戒情報」を出した。気象台によると、同時刻ごろ、担当者が市に電話を入れ、「警戒情報が出ました。危険度が高まっています」と告げた。1時49分には全県を対象に「1時間の降水量は多い所で70ミリに上る」との情報も出した。この情報は市が契約する気象会社からファクスでもたらされたが、市によると他のファクスに紛れ、放置していたという。
1時57分には気象会社から「安佐南区の積算雨量が100ミリを超えた。朝4〜5時までは強い雨が続く見込み」という電話連絡があった。2時36分にも、安佐南区で降雨量を示す5段階の「レベル5になった」、「あと1時間程度は雨脚の強い状況が続く見込み」と相次いで注意を促す連絡があったという。これに先立つ午前1時50分、気象会社は「午前2時以降の時間雨量が1ミリか1ミリ未満」という予報を出していたため、状況の急変を知らせる目的だった。
市は「100ミリを超えたと言っても避難勧告を出す際の目安(安佐南区八木・緑井地区で160ミリ)には遠いと考えた。最初に『1ミリ程度』の時間雨量予測もあって判断が難しい状況だった」と説明。ファクスの見落としは「河川の水位が急激に上昇しており、対応に追われていた」とし、「1時間に70ミリ」の雨量については「対象が県全域で時間帯も書いていなかったため、仮に気づいていても対策に生かせたかどうかは検証が必要だ」としている。【高橋咲子、入江直樹】