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瓦の産地は全国にあります。有名なのは三大瓦産地。

公開日: : 投稿者:神谷 英嗣 屋根と瓦の豆知識 ,

瓦屋に生まれて、瓦に囲まれて育ちこれが普通だと思って育った(株)山平の神谷です。
大学生になって、地元を離れて初めて私の育った環境が特殊だったことに気づきました(笑)。
私の育った地元、高浜市は瓦の一大産地だったんです。

元々瓦は運搬手段の発達していなかった頃、使う地域の近くで瓦を製造しており、全国各地で瓦を作っていました。
現代になり、運搬手段品が整備されることによって、重くて壊れやすい瓦が運搬しやすくなり、粘土質の良いモノが豊富に取れ、量産できる産地が三大産地と呼ばれるようになりました。

map

(引用元:島根県の石州瓦工業組合

全国で24か所の産地が活動されています。(平成24年現在)
この中で瓦の三大産地と呼ばれるものがあります。

瓦の三大産地

  • 愛知県の三州瓦
  • 兵庫県の淡路瓦
  • 島根県の石州瓦

この3つの産地で、全国の約9割近くの瓦が生産されています。

愛知県の三州瓦

ときどき、三州瓦という会社名だと間違えられることがあります。
展示会などで三州瓦のロゴで出展していると特に言われます。

三州瓦とは地域ブランド名です。
愛知県西三河地方が昔三州と呼ばれていたことから、三州で作られた瓦ということで、三州瓦と呼ばれています。

IMG_6431愛知県陶器瓦工業組合で瓦のPR活動をしています)

三州は良質な粘土が豊富に採れ、日本のほぼ中心にあるため全国各地に輸送しやすいという立地条件にも恵まれました。
さらには、運河沿いに発達した瓦の産地ということもあり、江戸時代には江戸に運搬する船を安定させる重しとして、船底に瓦を積んで運んだとも言われています。
立地の良さは現代でも続き、西へ東へとも全国各地に瓦が届けられています。

三州瓦バリエーション

三州瓦は、J形瓦、S形瓦、平板瓦、いぶし瓦に、陶器瓦となんでも揃う品揃えのバリエーションが豊富です。
特徴としては、高い焼成温度製造による優れた耐火性、凍害への強さが挙げられます。
そして西洋瓦の様式を日本風にアレンジしたS型瓦を開発するなど、洋風の瓦への取り組みが古くから行われていたため、全国の産地の中で洋瓦・平板瓦の生産量は突出して多くなっています。

 

兵庫県の淡路瓦

兵庫県の淡路島にある瓦の産地です。
淡路島で取れる良質な粘土を使って製造する、いぶし瓦の一大産地です。
銀色に美しく輝く、いぶし瓦の生産量で全国シェアの半分弱を占めています。
淡路(引用元:淡路瓦工業組合

淡路瓦の歴史は古く、飛鳥時代に瓦の製法が伝来して10年ほど後のものと思われる瓦の窯跡が発掘されていますが、現代につながる瓦産地としては、江戸時代初期の400年くらい前、成山城築城の際に播州瓦の名工・清水理兵衛を呼び寄せてお城のための瓦を焼かせたところから始まったとされています。
立地条件が悪い「島の伝統工芸」が全国シェアを占めるに至ったのは、関西方面への船での運搬が可能だったと考えられます。
京セラドームの近くの大阪市港区の運河沿いには無数の瓦問屋さんがあり、ここから瓦を荷揚げして陸路で運んだんだなと想像されます。

淡路瓦の原料の粘土は、粒子が細かくなめ土と呼ばれる粘土です。
いぶし瓦は焼く前に、粘土を水で溶いたものを塗る吐け土(はけつち)という工程を経ることで、表面に浮き出るあくを抑え独特の艶を生み出します。
さらに、淡路瓦独特の製法としては、窯変瓦と呼ばれるものがあります。
これは化学的な手法を使わずに、窯の炎の加減や時間などによって色あいに変化をつけるものです。
淡路瓦ではいぶし瓦、釉薬瓦、そしてこの窯変瓦が主につくられ、実に1000種類以上の製品供給ができるともいわれています。
ただ、焼成する温度がそう高くないため寒冷地には不向きとされています。

 

島根県の石州瓦

島根県の旧名石州(せきしゅう)地域で作られる瓦のことです。
石見銀山の近くの江津市を中心に太田市、浜田市、益田市などでも作られています。

石州瓦の特徴は鉄分の少ない良質の白陶土と、出雲の来待石(きまちいし)から取れる釉薬を使うことで作りだされた柿色(赤褐色)です。
その色から赤瓦と呼ばれます。
石州(引用元:石州瓦工業組合

この赤瓦は、一般的な瓦より高い1200~1300度で焼成するので、よく引き締まって硬く、濡れて水を吸い込む係数がとても低いのです。
そのため、厳しい気候にも耐えれることから、雪に強い瓦と言われ、冷害や海岸付近に多い塩害にも強い瓦とされています。
そのいわれは、今でも日本海沿岸の古い町々を訪れると、赤褐色の石州瓦の街並みが残っていることからも伺えます。

赤褐色の瓦屋根に彩られた街並みは本当に美しいです。
この赤褐色は白壁によく映えます。個人的には、白壁の洋風住宅によく合うと思います。

まとめ

瓦は全国各地の産地で焼かれています。
その土地によって土の違いがあり、それが産地の特徴になっています。
そして、その地域から取れる土の特性が、その土地の風土に合うという自然の力の素晴らしさに驚くばかりです。

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神谷 英嗣

神谷 英嗣

代表取締役社長株式会社 山平
㈱山平の神谷英嗣です。瓦屋に生まれ、瓦に囲まれて成長し、住宅営業マンを経験してから、瓦業界に戻って早10年が経過しました。小学一年生からやっている野球をはじめとして、フットサル・スノーボードなどなどスポーツで身体を動かすのが趣味です。チームスポーツが大好きで、仲間と一緒に目標に向かって進んでいくのが大好きです。地震が来るたびに瓦屋根が悪者にされがちですが、本当はそんなことないんですよ。皆様の守る大切な瓦屋根のことを正しくお伝えし、家族の幸せな住まいを守っていきたいと思います。屋根に関する悩みはお気軽にご相談下さい。

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