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くねくね科学探検日記

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RSS 遺伝子診断の虚構

<<   作成日時 : 2014/08/31 22:26   >>

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このところ、日本でもいろいろな大手企業が、安価な遺伝子診断に乗り出すというニュースを目にする。

DeNA が DNA検査サービス MYCODE を開始、9800円からの個人向け。

ヤフー、一般向けゲノム解析サービスを10月に開始

次世代シーケンサ技術の急速な発達で、遺伝子解析のコストは劇的に下がってきている。今の時点では、一人分のゲノムを全部読むには、10万円程度かかるけれど(それでも驚異的なコストダウンだけど)、数年もすれば1万円を切るようになるだろう。

その技術の進歩を背景に、一般向け遺伝子診断ビジネスに乗り出す企業が出てくるのは、特に法規制のようなものがない日本では、当たり前といえば当たり前のことだ。

ただ、この遺伝子診断というやつは、ほとんどの場合、原理的に星占いと同じくらいのリアリティしかない。

それが良く解るのはこの記事だ。

自閉症の遺伝子診断は幻想 フランスの分子生物学者が講演

これは自閉症の遺伝子診断の話だけど、全く同じ事が他の大半の診断にも成り立つ。

遺伝子診断で、何か深刻な問題がわかるのは、事実上、単一遺伝子疾患だけといっていい。この種の病気は、単純なメンデル遺伝で、ある遺伝子に異常があるかないかで、明確に病気になるかどうかが解る。

こういう病気については、すでに既存の検査技術でわかるものだった。

アンジェリーナ・ジョリーの乳房切除は話題になったけれど、その原因遺伝子はBRCA(Breast Cancerの略)という遺伝子が変異したBRCA1、またはBRCA2を受け継ぐ家系に特有のものだ。

このBRCA1がある女性の65%は乳がんに、39%は卵巣がんになる可能性があり、BRCA2では45%が乳がんで、11%が卵巣癌になる可能性がある。

これはかなり高率なので、家系の中に乳がんや卵巣がんの患者が少なからず存在していて、うすうすそういう病気になるかもしれないと予感できている事が多い。

こういう深刻な病気の場合は、遺伝子で解ることの限界を十分カウンセリングして、本当に診断をして良いのか、診断結果をみてどう判断するかを、非常に丁寧に行う必要がある。

一方、日本で始まりつつあるカジュアルなテーマに関する遺伝子検査は、非常にたくさんの遺伝子が関与していて、ある遺伝子の異常があったとしても、実際に病気になるのは何%いう曖昧な確率でしか現せない。

しかも生活習慣などによってもその病気が起きるかどうかは変わってくる。

さらにいえば、今の時点では、この遺伝子の変異と、ある病気との間の関係というのは、十分信用できるものとも限らない。

いちおう、サービスを始める企業は、今いちばん確からしい論文を根拠にするといっているけど、遺伝子の変異と健康情報の関連に関する情報というのは、まだ研究が不十分で、これからやられていくものだからだ。

遺伝子を調べるコストが安くなったことで、それを調べることはできても、ある遺伝子の変異があると、その人の肉体に生涯のうちにどういう変化が起きるかはすぐにはわからない。

たくさんの人を対象に、遺伝子情報と、何十年にもわたるその人の健康状態の前向きの調査(コホート)をつきあわせてやらなければ、ある遺伝子の変異がどういう影響を与えるかは、正確には解らない。(Yahooのサービスは、検査ビジネスをしながらそういう調査も兼ねてようとしている感じもある)

つまり、いまの遺伝子解析サービスで言えることのほとんどは、結局の所誰にでも当てはまる、不摂生は良くないよというアドバイスの範囲を越えることは事実上無いんだよね。

ワイドショーなどでの取り上げ方も、今の時点では、わりと気楽な占い程度の感じではあるみたいだけど、遺伝子診断というと、実際にわかること異常に妙に権威があると感じてしまう人が、今後出てこないとも限らない。もちろん、そういう診断データがなにかの差別に使われるようななる事があったら、最悪だ。

いずれにせよ、個人向け遺伝子診断というのは、極めて例外的なケースを除けば、未来永劫、それほど大した情報は提供できないということを、皆が知っておいたほうが良いだろうとは思う。


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