(2014年8月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
2013年9月、カタルーニャ自治州の独立を求めて「人間の鎖」を作った地元住民〔AFPBB News〕
スペイン北部・カタルーニャ自治州の独立運動を率いる幹部は、もしスペインがカタルーニャの分離独立の是非を問う住民投票を認めなければ、スペインは外国人投資家からの反発と公的債務に対する新たな市場圧力に見舞われると警告した。
カタルーニャ左翼共和派(ERC)のウリオル・ジュンケラス党首によるこの発言は、同州の政治的な将来を巡る一触即発状態の対立の激化を告げている。
こうした発言は、独立を巡る議論を、マリアノ・ラホイ首相率いるスペイン中央政府がこれまでで最大の成果と見なすもの――つまり、スペインを景気後退から脱却させ、外国人投資家の信頼を取り戻すこと――と直接結びつけることで、スペイン政府への圧力を強めることを狙っている。
「スペイン政府は1兆ユーロの債務を抱えている。この債務は我々の税金で返済しなければならない。だから、スペイン政府が支払い義務を果たす最善の方法が、自国の市民と衝突することだとは思えない」。ジュンケラス党首は本紙(英フィナンシャル・タイムズ)とのインタビューでこう語った。
「もし私が投資家だったら、自国の市民と対立しているスペイン王国が存在するよりは、義務を果たす用意がある独立したカタルーニャがあると分かっていた方が安心できる」
住民投票を認めない中央政府、対立が景気回復を損なう恐れ
カタルーニャの州政府は独立の是非を問う住民投票を11月に実施することを約束した。英国からの独立に関するスコットランドの住民投票から2カ月足らずで行われるタイミングだ。だが、英国政府と異なり、スペイン政府は独立に関する州の住民投票は違法であり、カタルーニャの住民投票は実施されないと主張している。
迫り来る衝突は今のところ、スペインに対する投資家の熱意をそいでいない。スペインでは、国債利回りが歴史的な低水準に低下し、過去2年間で株式市場が大幅に上昇してきた。
だが、一部のバンカーや企業経営者は内々に、カタルーニャ問題の行き詰まりは、始まったばかりのスペインの景気回復に対する信頼を損ねかねないと警告しており、ジュンケラス氏はこの懸念をカタルーニャに有利に働かせようとしているように見える。