「はやぶさ2」完成 12月ごろ打ち上げへ8月31日 18時55分
4年前、数々のトラブルを乗り越えて地球に帰還した日本の小惑星探査機「はやぶさ」の後継機、「はやぶさ2」の機体が完成し、31日、報道関係者に公開されました。打ち上げはことし12月ごろの予定です。
「はやぶさ2」は、小惑星で採取した石や砂を地球に持ち帰り太陽系が誕生した当時の姿や生命の起源に迫る予定で、初代の「はやぶさ」とは異なる水や有機物を含むタイプの小惑星を目指します。
ことし12月ごろの打ち上げを前に機体が完成し、31日、組み立てが行われた神奈川県相模原市のJAXA=宇宙航空研究開発機構の施設で公開されました。
公開された機体は、高さ1メートル25センチの箱形の本体に、2つの円形の通信用アンテナや折り畳まれた太陽電池パネル、それに「はやぶさ」の時より推進力や耐久性を高めた「イオンエンジン」が取り付けられています。また、小惑星に着陸する際に石や砂を採取する「サンプラーホーン」という筒状の装置や、採取した物質を地球に持ち帰る「再突入カプセル」にも、前回の教訓を生かして改良が加えられました。さらに、「はやぶさ2」は小惑星内部の石や砂を採取するため、地表面の物質を吹き飛ばし人工のクレーターを作る装置を備えています。この装置は「インパクタ」と呼ばれ、金属の弾丸を秒速2キロという高速で小惑星の表面に向けて打ち出します。
JAXAは来月の後半にも「はやぶさ2」の機体を鹿児島県の種子島宇宙センターに運び、ことし12月ごろの打ち上げに向けた作業を開始することにしています。記者会見した「はやぶさ2」の國中均プロジェクトマネージャは、「機体の開発には苦労もあったが、自信作を完成させることができた。宇宙の現場は決して甘くないが、プロジェクトのみんなで力を合わせて新たな航海へ向かいたい」と話しています。
たび重なるトラブル乗り越え帰還
小惑星に着陸し、その石や砂を持ち帰るという世界初のミッションを担った「はやぶさ」計画は、たび重なるトラブルで何度も絶体絶命のピンチに見舞われましたが、開発チームの機転と執念によって地球への帰還を成し遂げました。
「はやぶさ」が打ち上げられたのは2003年5月。ほぼ計画どおり、2年後に地球から3億キロ離れた小惑星「イトカワ」に到着し、2度にわたって着陸しました。
当初、順調だったミッションはその後、相次ぐトラブルに見舞われます。着陸の際、機体を損傷し燃料漏れが発生した結果、地球との交信が途絶え、「はやぶさ」は宇宙空間で一時、行方不明になりました。その後も、計画の鍵を握る、少ない燃料で長距離飛行を可能にする「イオンエンジン」が4つすべて使えなくなるなど、絶体絶命のピンチに何度も見舞われました。
そのたびに危機を救ったのは、開発チームの機転と決して諦めることのないメンバーの執念でした。姿勢制御のエンジンが使えなくなった時には、別のエンジンの燃料を直接宇宙空間に放出し、その反動で姿勢を立て直したり、イオンエンジンのトラブルには、別々のエンジンの装置どうしをつなげるという裏技を使ってエンジンを再生させました。
たび重なるトラブルにより宇宙の旅は計画より3年長い7年にわたりましたが、今から4年前の2010年6月、はやぶさは無事、地球への帰還を果たしました。
「はやぶさ2」が目指すのは
「はやぶさ2」は、世界で初めて小惑星の微粒子を地球に持ち帰った「はやぶさ」の後継機として開発されました。
「はやぶさ」と同じように、小惑星を探査して採取した石や砂を地球に持ち帰る計画ですが、その目的地は異なります。「はやぶさ2」が目指すのは、「1999JU3」と呼ばれる、太陽を中心に主に地球と火星の間の軌道を回る小惑星です。この小惑星は、「はやぶさ」が着陸した「イトカワ」とは異なるタイプの小惑星で、水や有機物を含んでいるとみられています。有機物の中には、生物の体を作るタンパク質の元となるアミノ酸も含まれていて、地球にもかつて、こうしたアミノ酸がもたらされ、今の生命につながったともみられています。「はやぶさ2」はこうした仮説に答え、生命の起源に迫ることを目指します。
2018年に到着目指す
「はやぶさ2」は、ことし12月頃、鹿児島県の種子島宇宙センターから日本の主力ロケット「H2A」で打ち上げられます。打ち上げ後、太陽を周回する軌道に入り、およそ1年後の来年12月ごろ、地球の重力を使って加速しながら進路を変更し、小惑星に向かう軌道に入ります。
そして、打ち上げから3年半後の2018年6月ごろ、目的の小惑星に到着。その後、およそ1年半にわたって小惑星の近くにとどまり、さまざまな科学観測を行います。
「はやぶさ2」は小惑星には3回着陸する計画で、1回目と2回目に小惑星表面の石や砂を採取します。そのうえで3回目にこれまで行ったことのない小惑星内部の石や砂の採取に挑戦します。小惑星の表面の石や砂は、太陽にさらされることで成分が変わる「宇宙風化」と呼ばれる現象が起きていますが、内部は風化が起きておらず、太陽系誕生当時の情報がそのままとどめられていると考えられるためです。
そうした小惑星内部から石や砂を採取するために搭載されるのが、新たに開発された「インパクタ」と呼ばれる装置です。「インパクタ」は、小惑星の上空から秒速2キロという極めて速いスピードで金属の弾丸を発射して、人工のクレーターを作ります。小惑星内部の石や砂は、そのクレーターの中から採取する計画です。
こうして採取した石や砂をカプセルの中に詰め込んだ「はやぶさ2」は、2019年12月ごろ、小惑星を離れて地球への帰途に就きます。そして打ち上げから6年後、東京オリンピックが終わったあとの2020年12月ごろ、総飛行距離52億キロの旅路を経て、小惑星の石や砂が入ったカプセルを地球に帰還させることになっています。その際、カプセルはオーストラリアの砂漠に落下させる計画ですが、「はやぶさ2」自体は大気圏に突入することなく、再び地球を離れて宇宙へ飛び立つ計画となっています。
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