1.日時:
平成26年8月7日(木)9時30分〜11時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室
本日は、冒頭のみカメラ撮影が入ります。ご挨拶の部分が終わりましたら、カメラマンの方はご退席をお願いします。
それでは、池尾座長、よろしくお願いいたします。
それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまよりコーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議の第1回会合を開催いたしたいと思います。皆様、ご多忙中のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
申しおくれましたが、私、このたび当有識者会議の座長を務めることになりました慶應義塾大学の池尾と申します。よろしくお願いいたします。
それでは初めに、事務局の池田総務企画局長よりご挨拶をいただきたいと思いますので、池田局長、よろしくお願いします。
ただいまご紹介をいただきました金融庁の総務企画局長の池田でございます。どうかよろしくお願いいたします。
本日は、大変お忙しい中、委員の皆様にはご参集いただきましてまことにありがとうございます。有識者会議の第1回会合の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
ご案内のとおり、今年の6月に閣議決定されました『日本再興戦略 改訂版』におきましては、「上場企業のコーポレートガバナンス上の諸原則を記載した『コーポレートガバナンス・コード』を策定する」ということが明記されました。
政府及び金融庁におきましては、これまでも上場企業のコーポレートガバナンスの強化に向けまして各般の施策を講じてきたところでございますけれども、今般、コードという形でコーポレートガバナンスに関する基本的な考え方を取りまとめるということは、持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じて、企業それから投資家、ひいては経済全体の持続的な成長に寄与するものというふうに考えております。
コーポレートガバナンスをめぐりましては、本年2月に日本版スチュワードシップ・コードを策定させていただきまして、5月末までに127の機関投資家からこれを受け入れる旨の表明をいただいております。今後、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードが、いわば車の両輪となって企業価値の向上、企業の持続的成長、それと投資家・受益者の投資リターンの拡大という好循環を生み出していくことを強く期待しているところでございます。
メンバーの皆様におかれましては、大変ご多忙の方ばかりとは承知しておりますけれども、ぜひとも活発なご議論をいただきたいということをお願い申し上げまして、私からのご挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。
どうもありがとうございました。
続きまして、事務局の東京証券取引所静常務よりご挨拶をいただきたいと思います。静常務、お願いします。
東京証券取引所の静でございます。共同事務局としまして、皆様のご議論をサポートすべく努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
後で説明があると思いますけれども、日本も加盟しております国際機関OECDが、世界の国々に向けましてコーポレートガバナンスに関する5つの原則というのを公表・策定したのは、もう今から15年前のことでございます。ガバナンスを通じて実現すべき目標のようなものを5つの原則に取りまとめたというものでございますが、あわせてこの5原則につきましては、世界共通の目標であるということですとか、しかしながら、5原則を実現するための手段は国によって、あるいは市場によって違うんだ、そういう多様なものであるということも一緒にうたっているものでございます。
私ども東京証券取引所では、これに準拠いたしました「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を定めまして、上場会社にコーポレートガバナンスを通じて実現すべき目標というものを提示させていただいてまいりました。また、私ども独自で、企業行動規範という規範を設けることで、原則を実現するための手段を何年もかけて次第に充実させてきたという経緯がございます。その一つとしてこの2月に登場したものが、いわゆる独立取締役の選任努力義務でございます。これを含めて、今ではこの行動規範は全部で30ぐらいまで増えてきています。その多くは、私どもが投資家の声を取り上げて上場会社に要請をし、上場会社が次第にそれに応えて、やがては主流になっていくような形を通じて自然発生的に規範化されたものです。
今後、この会議におきまして決定していただく基本方針に従いまして、私どもでは最終的に具体的なコードという形のものを策定していくという作業をさせていただくことになるわけでございますけれども、以上のような私どもの経験を踏まえまして、現在、このコードに私どもは期待をしていることが3つほどございます。
1つ目は、今申し上げましたような自然発生的な規範ができていくというプロセスを、例えば定期的な見直しを伴うようなシステマチックなものに進化させていけないかということでございます。そうすることによって、これまでよりもスムーズに、より納得性の高い規範を生み出し続けていくための土台として、将来にわたって活用させていただきたいと思っている次第でございます。
2つ目は、幾つもの規範を羅列的に並べるのではなく、目標としての原則的な考え方と、それを実現する手段としての規範との間で、個々の対応関係がはっきりわかるようなものにしていければと思っております。コードの母国であるイギリスでは、こういう手法をとることで、規範を逸脱している会社が果たして原則を尊重する気があるのかということが、会社の説明からよくわかるように仕組まれているということでございます。
3つ目は、先ほどもご紹介ありましたけれども、政府の成長戦略にも明記されておりますとおり、コードにつきましては、上場会社の実情に沿うということも大事ですが、国際的にも高く評価されるものであってほしいと思っております。これまでに積み重ねてきた規範だけでなく、国際的な評価を高めることのできるような新しい規範を一つでも多く組み込むことができればありがたいと考えております。
皆様方におかれましては、短い期間に大変集中的なご議論をお願いすることになると思いますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
以上です。
どうもありがとうございました。
それでは、この有識者会議の進め方等について事務局からご説明をお願いしたいと思います。
共同で事務局を務めさせていただきます金融庁企業開示課長の油布でございます。それでは、カメラの方、撤収をお願いいたします。
それでは、お手元の資料、たくさんございますが、資料1の2枚紙をごらんいただきたいと思います。この「有識者会議の開催について」という紙でございます。これはもう細かいご説明は省略させていただきますけれども、閣議決定を踏まえまして、民間有識者の方々の知見を生かしつつ、ガバナンス・コードの基本的な考え方について提言を得るということを目的として開催するものでございます。
2ページ目についておりますのが本会議のメンバーの方々のリストでございます。ここで私のほうから、今日お見えになっておられる方、左手の方から順番にお名前を読み上げさせていただきましてご紹介させていただきますので、ご起立だけお願いできればと思います。それでは、メンバーの皆様の右側のほうからお名前を読み上げさせていただきますので、ご起立だけお願いいたします。
太田順司様です。
よろしくお願いいたします。
大場昭義様です。
よろしくお願いします。
小口俊朗様です。
よろしくお願いします。
神田秀樹様です。
よろしくお願いします。
武井一浩様です。
よろしくお願いいたします。
冨山和彦様です。
よろしくお願いします。
中村美華様です。
よろしくお願いいたします。
堀江貞之様です。
よろしくお願いいたします。
森公高様です。
よろしくお願いします。
本日はご欠席でございますが、このメンバー表にございますように、内田章様、スコット・キャロン様、松井忠三様にもご参加いただくということになっております。
また同様に、本日は欠席でございますけれども、この有識者会議のアドバイザーとして、OECD(経済協力開発機構)のマッツ・イサクソン様にも適宜ご参加をいただくということにしております。
次に、私の左手のほうになりますけれども、幹事をご紹介申し上げます。経済産業省産業組織課の中原課長です。
中原でございます。よろしくお願いいたします。
このほか、幹事といたしまして、法務省より大臣官房の坂本参事官にご出席をお願いしております。本日はご欠席でございます。
また、事務局につきましては、金融庁と東京証券取引所が共同で務めさせていただきますが、時間の都合もありますので、これはお手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。
以上でございます。
ありがとうございました。
続きまして、当有識者会議の運営要領(案)について事務局からご説明をお願いいたします。
それでは、お手元の1枚紙、資料2でございます。会議の運営の要領についての申し合わせということでございます。定型的なパターンのものを用意してございますけれども、第2条をごらんいただきますと、会議は座長が招集する。それから招集すべき日時が決まり次第、遅滞なく会議日時を公表するということでございます。それから第5条、本日もそうなっておりますけれども、有識者会議は公開とする。第6条で、議事録はその都度作成し、公表する。第7条、有識者会議の資料も公表する。これが大まかな運営要領の内容でございます。
どうもありがとうございました。このような進め方でよろしいかどうかということで、ご確認というかご意見をいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。こうした原則公開で全てやるということでよろしいでしょうか。
では、そういうことで進めさせていただくということで、この資料2の内容を当有識者会議の申し合わせということにさせていただきます。
そうしたら、続きまして、当有識者会議にかかわるこれまでの経緯、それからOECDコーポレートガバナンス原則、それから各国のコーポレートガバナンス・コード等について、事務局から資料3に沿って説明をいただきたいと思います。その後、自由な討議をさせていただきたいというふうに思います。
では、まずは資料3のご説明をお願いいたします。
それでは、お手元に横版の資料で右上に資料3と書いておりますパワーポイントの資料がございますので、これに沿ってご説明いたします。
表紙をおめくりいただきますと目次がついてございまして、本会議の経緯、それからOECD原則、各国のコード、それから参考といたしまして東証のガバナンス原則とスチュワードシップ・コードについて資料を作成しております。
目次をさらにおめくりいただきまして、有識者会議の立ち上げ経緯でございます。これは6月24日に閣議決定されました改訂版の日本再興戦略(成長戦略)の抜粋でございます。4枚ほどにわたっておりますが、サマリー部分と各論部分に2回記載がございますので、それを全部載せているということで、4枚の分量になっております。1ページ目は、そのサマリーの総論の部分でございますので割愛させていただきます。2枚目、2ページの下のほうをごらんいただきますと、ここもサマリー部分、総論のところですが、その一番下をごらんいただきますと、ガバナンスの強化というところで、「コーポレートガバナンス・コードの策定」、「持続的成長に向けた企業の自律的な取組を促すため、東京証券取引所が新たに『コーポレートガバナンス・コード』を策定する。上場企業に対して、当該コードにある原則を実施するか、実施しない場合は、その理由の説明を求める。」、「来年の株主総会のシーズンに間に合うよう策定」と記載がございます。
3ページをごらんいただきまして、これが成長戦略の各論部分の記載でございます。3ページのちょうど中ほどのところからご紹介いたします。コーポレートガバナンスの強化、リスクマネーの供給云々というところでございますが、その下、「生産性向上により企業収益を拡大し、それを賃金上昇や再投資、株主還元等につなげるためにも、グローバル企業を中心に資本コストを意識してコーポレートガバナンスを強化し、持続的な企業価値向上につなげることが重要である。こうした取り組みによる経済成長の成果を、雇用機会の拡大や賃金上昇、設備投資や配当の増加等を通じて経済全般に還元することにより、経済の好循環をさらに強固なものとすべきである。このため、以下の施策を実施する。」ということで、次のページになりますが、コーポレートガバナンス・コードの策定等という記載があります。また、「コーポレートガバナンスは、」ということで若干説明が記載されております。「コーポレートガバナンスは、企業が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みである。」ちょっとその下に飛びまして、これをコードの形で取りまとめることは、「持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、投資家、ひいては経済全体にも寄与する。」その下でございますが、こうした観点から、コーポレートガバナンス・コードを策定するとございまして、「東京証券取引所のコーポレートガバナンスに関する既存のルール・ガイダンス等や『OECDコーポレートガバナンス原則』を踏まえ、我が国企業の実情等にも沿い、国際的にも評価が得られるものとする。」その後は、ご挨拶等でもご紹介のあったとおりの記載がされております。
次のページ、5ページをおめくりいただきますと、今ご説明申し上げました閣議決定がこの会議の直接の設立の根拠でございまして、政府としての意思決定であるわけでございますが、それに先立ちまして、5月に与党の自由民主党から経済再生本部の日本再生ビジョンという経済政策の提言がなされておりますので、こちらもご紹介させていただきます。これはちょうど中ほど、第2パラグラフのところですが、「わが国においても同様に、」というところでございます。「独立取締役設置、取締役など幹部の人事における指名手続き・報酬決定等の透明性確保、経営における監督機能と執行機能の分離、幹部研修のあり方など、日本の上場企業のあるべき企業統治の具体的姿を示し、」というふうな記載がございます。さらに、アンダーラインを引いている部分は、ちょうど政府の閣議決定とほぼ同趣旨のことや、手続が記載されてございまして、その下の最後のパラグラフになりますが、「その際、現行の会社法上に規定のない執行役員の地位、及びその忠実義務を明確化するとともに、取締役には経験や独立性、知識といった各観点からのバランスを求め、それぞれの企業統治に係る取り組みの開示と経営陣による説明を求めることで、企業統治の実効性を高める。また、社外取締役と監査役による合議体を内部通報窓口にするなど、内部通報制度の充実やその活用に向けた制度の構築が必要である。」というふうな提言がなされてございます。
次のページ、6ページ以下でございますが、ここには上記のコーポレートガバナンス・コードに、「例えば下記のような記載をすることが考えられる」ということで、例示的な記載ということではございますが、ここにございますように、(1)独立社外取締役、(2)株主のボイス、それから次のページをめくっていただきますと、7ページになりますが、(3)株式持ち合い、こういった記載が自民党の政策提言のほうには記載があるということでご紹介をさせていただきます。
次に1ページおめくりいただきまして8ページでございます。これはOECDコーポレートガバナンス原則でございます。お手元に、委員の方々にはカラーの冊子の形でお配りしております。それ以外の方にはコピーでお配りしておりますけれども、日本語版と英語版のOECD原則を配布させていただいております。この翻訳はOECDと外務省でなされているものでございまして、英語版、日本語版のほかにフランス語、ドイツ語、ロシア語、イタリア語等の、各国語にOECDが翻訳して配布をしているものでございます。この具体的な中身の説明につきましては、次回、OECDのマッツ・イサクソン様にお越しいただいてプレゼンテーションをお願いするということになっておりますので、本日は目次だけここの資料に記載させていただいております。この資料には書きませんでしたけれども、この前には前文といいますか序文がございまして、6つの章で構成されております。この6つの章のうちここに記載しておりますのは5つの章だけでございまして、第1章部分は記載しておりません。これは第1章はガバナンスの枠組みという表題になっておりまして、当局の責任分担とか、あるいは当局のリソースを充実すべきであるとか、そういった政府向けの記載になっておりますので、今回のコードの議論にはちょっと関係ないということで、こちら、第1章を省いて残りの5項目を掲げさせていただいております。
次のページをおめくりいただきたいと思います。9ページ、ここから各国のガバナンス・コードについて、かいつまんでご説明をさせていただきます。9ページに記載しておりますのは、主要国のガバナンス規範、規律の体系でございます。
一番端の米国を見ていただきますと、アメリカはコーポレートガバナンスに関しましては基本的にはルールベースの規律で対応しております。サーベンス・オクスレー法でありますとかSECのレギュレーション、取引所規則で直接義務づけをするというようなスタイルが主流になってございます。
これに対しまして英、独、仏では、プリンシプル・ベースかつComply or Explain型のコーポレートガバナンス・コードと俗に称されるものが存在するということであります。それぞれ、Comply or Explainを何で担保しているかということでございますが、イギリスは取引所規則で、ドイツは、これは株式法と書いてありますが、株式会社法という趣旨の法律でございます。それからフランスは商法典にComply or Explainを担保する記述がございます。
その下にスチュワードシップ・コードを作成している国を記してございまして、上記の主要国のほかに、少なくともこの右に記載した国々ではプリンシプル・ベースかつComply or Explainのガバナンス・コードが導入されている。なお、ここに記載している国以外にもほかにもトルコとかまだ例はあるというふうに承知しております。
次のページ、10ページをごらんいただきたいと思います。こちらがその英、独、仏のガバナンス・コードのアウトラインだけでございます。それぞれ策定年が記載してございますが、策定主体というところです。イギリスのコードにつきましては、これは所管変えが過去いろいろございましたが、現在の所管はFRC(財務報告評議会)ということで、これは半官半民と申しましょうか、独立した自主規制機関、そういう組織でございます。それから、現在のコードの直接のもとになる提言をしたのはハンペル委員会というふうなことになっております。ドイツでは、法務省が所管するような形になっておりまして、クロンメ委員会というところが原案を策定している。フランスにつきましては、それぞれ民間企業の団体2つが合同いたしまして作業部会を設けて、コードを作成し、それにフランスの商法でComply or Explainをかけている、そういうことであります。
11ページ以降でございます。ここから各国コードの制定に至りました経緯だけ簡単にご紹介させていただきます。
まずイギリスでございますが、最も有名なキャドバリー報告書というのが92年にまとめられております。これは91年に、先ほど申し上げましたFRCや取引所、公認会計士団体が企業の会計報告書やアカウンタビリティーということを議論していただくという趣旨で、「コーポレートガバナンスの財務的側面に関する委員会」という名称の委員会を設置しております。これの座長がエイドリアン・キャドバリー卿でございまして、委員会は92年に報告書を取りまとめております。ただ、設置が決まりました後、イギリスでは銀行のBCCIの破綻ですとか、ロバート・マックスウェル事件、メディア・コングロマリットのスキャンダルと破綻ということでございますが、そういう大手企業のガバナンスが問われるような事件が発生したということもあり、最終的にまとまった報告書の中には、取締役会の実効性であるとか、そういった部分がかなり記載されているということでございます。
その後、95年になりましてグリーンベリー報告というのがまとめられております。これは一部の民営化公営企業で高額報酬への批判が高まったということもありまして、英国産業連盟(CBI)というところだそうでございますが、ここが取締役報酬の研究グループを設立しております。リチャード・グリーンベリー卿が座長となりまして、ここで95年に、報酬委員会の設立ですとか報酬の情報開示について勧告をしています。
イギリスだけは2枚にわたってしまいます。12ページをごらんいただきたいと思います。イギリスではその後、98年にハンペル報告書というのが取りまとまっております。もともとキャドバリー委員会が後継委員会の設置を求めていたということでございますが、ここは98年に報告書をまとめておりまして、取締役会、外部会計監査人、機関投資家など、ガバナンス全般について幅広く原則を策定したということでございます。
その直後になりますが、統合規範と呼ばれていたものでございます。ハンペル委員会の意向を受けてということですが、取引所のほうでキャドバリー報告書、グリーンベリー報告書、ハンペル報告書の3つの報告書が示した規範や原則を統合して、これをもって統合規範という名前がついたようでありますが、英国のガバナンスに関するベストプラクティスコードを策定しております。これが取引所の上場規則集に添付されたということでございます。その後、2010年になりまして、この統合規範が、機関投資家を名宛人とする部分についてはスチュワードシップ・コードに、それから会社側の規律についてはコーポレートガバナンス・コードという名前で、これを分離・再編するという形がとられたということでございます。
13ページは、今度はドイツの経緯のご説明になります。ドイツのほうは少し遅れまして2001年にバウムス報告書と呼ばれるものが取りまとまったということでございます。2000年に、時のシュレーダー首相がガバナンスや会社法の現代化等に関する政府委員会の設置を命じたということで、フランクフルト大学のバウムス教授を座長とする委員会が報告書を取りまとめまして、この中でコーポレートガバナンス・コードの策定などを勧告したと。これを受けまして、2002年にガバナンス・コードが取りまとまっております。具体的には、2001年、法務省がガバナンス・コードを策定するための政府委員会を設置したということで、この委員会がクロンメ氏を座長とするクロンメ委員会と呼ばれたということでございます。でき上がったものは、KODEX、ドイツ語でコードのことだと思いますが、KODEXと呼ばれているということで、これはOECD原則を反映するような幅広いスタイルの包括的なコードになっているようであります。
次にフランスでありますが、14ページです。フランスは、対応自体は95年ということで比較的早かったようでございますけれども、まず第1次ヴィエノ報告書というものがまとまっておりまして、ここでは取締役会に焦点を絞りまして、取締役会の機能や運営などについて勧告がここに絞って行われたということです。その後、第2次ヴィエノ報告書というのが99年でございまして、ここに至りまして、例えば役員報酬の開示ですとか、幾つかの追加の勧告がなされております。その後、下のほうになりますが、2002年にブトン報告書というのがまとまっております。こちらのほうは取締役会に関するヴィエノ報告書の勧告を厳しくするとともに、新たに会計監査人の独立性でありますとか、財務情報といったディスクロージャー等について勧告を付加しております。これらを受けまして、2008年にコードの形でこれらが統合されております。2008年、これらの報告書の作成にかかわってきました2つの民間団体が3つの報告書の勧告を統合してコードを策定しております。
それで、次が15ページであります。これは各国のコードの目次部分だけを対比して表にしてみたものでございます。ちなみに、この英、独、仏のコードにつきましては、今日はもうご紹介はいたしませんけれども、お手元に英語版と、それから私どものほうで暫定的に翻訳しました仮訳をそれぞれつけさせていただいております。独・仏版はそれぞれ、英語版が公表されておりますので、基本的には英語版をもとに翻訳したわけでございますが、このアプローチが正しかったかどうか、ちょっとあれなんですけれども、いずれにせよ、翻訳は随時改善してまいりたいと思います。現時点での翻訳をつけさせていただいております。今日はこちらはご紹介いたしませんが、その目次をここに並べております。
まず、OECD原則が、先ほど少し申し上げましたが、序文がありまして、第1章があって、それぞれ2、3、4、5、6と。色づけをしておりますのが、第2章、第3章は基本的には株主の権利に係る部分で、緑色の部分はステークホルダー、赤い部分はディスクロージャーに関連するもの、それからブルーのところは取締役会についての記載でございます。イギリス、ドイツと見ていただきますと、それぞれ違いはありますけれども、こういった幅広いスタイルの焦点を対象にしてコードが書かれているという状況でございます。フランスはちょっと違っているような感じがいたしまして、まず、章立てそのものが25章になっておりまして、あまり章を分けずにべたっと書いてあるというふうな印象を受けました。こちらは先ほどご説明しましたけれども、もともとは95年に、すなわちOECD原則ができるよりも前にヴィエノ報告書がまず取りまとまりまして、それをもとにこれを書きかえて足していくようなアプローチがとられたわけですが、もともと95年のこのヴィエノ報告書の正式な名称は「フランスの取締役会」という名称になっておりまして、いわばボードルーム・ガイド、もしくはディレクターズ・ガイドブックみたいな、取締役だけに焦点を絞ったものが一番最初であったということで、おそらくそういう経緯から、この青い色が多いのではないかというふうに推察しております。ただ、いずれにしましても、ディスクロージャーの関係とかステークホルダーの関係、こういったものもその後追加される形で現在は記載がされているということでございます。
それから右端は、この後ご紹介いたしますが、東証のほうで2004年に作られましたガバナンス原則の記載でございます。これはOECDのコーポレートガバナンス規則のフレームワークにのっとって記載がございますので、ほぼ同様な対応関係になっております。
あと、各コードの分量についてだけ申し上げますが、それぞれ英語版で見る限り、添付文書などを除いて本文だけを見ますと、イギリス版は全部で25ページ、ドイツ版はちょっと短くて15ページ、フランス版が長くて33ページという分量になっております。
それで、16ページをごらんいただきたいと思います。ここから先はご紹介という形にとどめさせていただきたいと思いますが、2004年に最初策定されまして2009年に一度改訂が行われております「東証上場会社コーポレートガバナンス原則」の概要、非常にアウトラインだけでございますが、ここに記載させていただいております。OECD原則のフレームワークに対応するような形で第1章から第5章までそれぞれ記載があるということでございます。ただ、この原則につきましては、Comply or Explainという規律がかかっていないということでございます。
そして17ページ、最後になりますけれども、ここもご紹介だけにとどめさせていただきます。スチュワードシップ・コードについてでございますが、これは経緯というところにありますように、1年前の最初の成長戦略で策定が決定されまして、有識者会議で検討いただいて策定に至ったものでございます。枠組みというところにございますけれども、機関投資家が各自の置かれた状況に応じて対応できるような枠組みになっているということで、初回の受け入れ機関投資家リストの公表を6月に行いましたけれども、127の受け入れがあったということです。その下にちょっとバーを引くような形で書いておりますが、これもガバナンス・コードと類似する性格のものになっておりまして、機関投資家がとるべき行動について詳細に規定するのではなくて、基本的な原則を提示する“principles−based”アプローチがとられている。それから、法令のように一律な義務づけではなくて、“comply or explain”アプローチがとられているということであります。コードの具体的な7つの原則はここの黄色に記載しております。ご紹介はいたしませんけれども、お手元にもそれぞれこの東証の「上場会社コーポレートガバナンス原則」、それからスチュワードシップ・コードの冊子を配付させていただいております。
私からのご説明は以上であります。
どうもありがとうございました。
それでは、これから皆様からご質問、ご意見をお伺いする自由討議とさせていただきたいと思いますが、今回は初回の立ち上げということもありますので、特にテーマを定めて議論するというわけではなくて、コーポレートガバナンス全般に関するお考えとか、それから、当有識者会議の進め方に関するご意見とか、それらの点についてご自由にご発言いただければというふうに思います。それから、今ご説明いただいた事務局資料に関してのご質問等も結構ですので、ありましたらご発言いただきたいと思います。
それではどなたからでも結構です。じゃあ堀江メンバー。
そうそうたるメンバーの方がいらっしゃるもので、時間がなくなりますので、最初に発言させていただきたいと思います。
私は、ここにいらっしゃる小口さんと、大場さんと同じようにスチュワードシップ・コードの取りまとめで参加しました。機関投資家を代表するという意味で発言するわけではありませんが、スチュワードシップ・コードが導入された後、運用会社の方と、私が関係しているGPIFを含むアセットオーナーから、どういうふうに進めたらいいのかということについていろいろ混乱があるように感じています。混乱を解決する意味で、事業会社の方への非常に初歩的なお願いが、2点あります。1点目は、情報開示に関することです。情報開示に関するお願いは非常にシンプルで、この会議の趣旨が企業価値を中長期的に向上していくことであると考えると、企業とのエンゲージメントを行うに当たり、情報開示の点で不十分であると思います。例えば、資本生産性に関する目標がないとか、資本生産性を上げるための手段をどう整えていくのかといった観点についての情報開示が非常に乏しいということを機関投資家の方からよく耳にします。エンゲージメントは何をしたら良いかという点について、私は企業価値を上げるための議論であるべきだと考えています。ぜひそのような議論が円滑にできるように、企業価値に関連する、特に資本生産性に関する情報について、このガイドラインの中で開示をぜひ進めていただきたいというのが1点です。
もう1点は、議決権を行使する条件が整っていないという点です。スチュワードシップ・コードの委員会の中でも指摘させていただきましたが、今日の日経新聞の経済教室で田中先生もご指摘されていた通り、例えば、基準日と決算日が同一であることにより非常に株主総会の集中が起こり、機関投資家として議決権を行使したいが、非常に限られた時間の中で多くの議案を審議することが実質的にできないという問題点が1つ。もう1つは、議案の中での取締役の選任と、それ以外の決算数値が決まらないと決定できない配当政策等について、時期を分けて開示していただけないかと。取締役選任は、決算数値が決まらなくても、選任案はあらかじめ決まっているはずであり、取締役選任案はもう少し前倒しで機関投資家に情報開示をしていた手だてをとっていただきたいと思います。機関投資家がエンゲージメントを円滑にするための条件をできれば事業会社の方にもぜひとっていただきたい。非常に初歩的なお願いで恐縮ですけれども、この2点、お願いさせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
では冨山さん。
コーポレートガバナンス一般の議論として、私はいろいろな意味でカネボウ事件とかかわってきているので、その体験的なところも含めてちょっと最初に申し上げておきたいと思います。さっき静常務から実情というのがあったんですが、実情というのはいろいろな実情があって、今、経産省の稼ぐ力の研究会というのをやっていたりとか、ちょっと前に伊藤レポートというのが経産省から出ていて、過去20年から30年に係る日本企業の現実というのは、はっきり言って負けてきた現実なんですよね、これ。要は、売り上げシェアを失っているわ、これはたしかFortune 500でいうと、95年に141社あったのが今62社しかなくなっているわけで、売り上げは失うわ、それからあと伊藤レポートでいうと利益水準も、ROEが低いというけど、これは実はROEが低いというよりは売上高利益率が低いんですよね、これは要は競争負けしているということなんですよ。実はあんまりレバレッジは関係ないんですね、日本のROEの低さというのは。ですから、別に資本政策で株主におもねったから負けているんじゃなくて、要は本業で負けているからこれは負けてきたわけです。だから利益は失っているわ、売り上げは失っているわ、それから、ご存じのように雇用統計とか見ると、大企業の雇用の割合というのは減っているんですよね。ですから要は、よく言われる売上高、長期的な成長と雇用を重視するから利益率が低いんだと言いわけをすぐ経営者はする、私も経営者なので自分で自分につばきしているんですけれども、あれははっきり言って大宗を読めってうそなんですよ、これ。だって、30年にわたってこうなんだから。実際データを取っているとわかるんですけれども、30年間そうということは、もうはっきり言って、これは経営がだめなんですよ、日本の会社は。結論から言うと。おおむね大宗ですよ、もちろんすばらしい会社はありますよ。セブンさんとかコマツさんとかすばらしい会社はありますけれども、大体いつも出てくるいい会社は名前が決まっていて、出てこない会社がほとんどなわけで、やはり残念ながらそういう状態があります。
一方で、現場力であるとか技術力はやっぱり日本の会社はすごいんですよ。世界的にも、これは伊藤レポートでも出ていますけれども、大変高く評価されています。これは私も間違いなくそうだと思っていて、だから下部構造、基礎構造がこれだけしっかりしているのに何でこうなっちゃうかといったら、それは残念ながら上部構造がだめだということなんですよ。それが1つの実情なんですね。
だから、これはやっぱり謙虚に、私なんかも経済同友会の副代表幹事やっていますので、経済人、企業人の一人ではありますが、これは謙虚にやっぱり経済界の側もいいかげんこの事実は受けとめるべきで、その上でどうすべきかというのが、多分このコーポレートガバナンス・コードの議論の私は根本だと思います。
変な話、政府に稼ぐ力を取り戻せと言われる筋合いは本来ないわけで、実は1年ちょっと前、ちょうど私が『稼ぐ力を取り戻せ!』という本を書いていたのですが、それは別に政府にそういうふうに言ってくれと書いたわけじゃなくて、これは本来、企業自身がちゃんと稼いで、ちゃんと雇用をつくって、税金を払うのが企業の責任ですから、そう思ったので書いているので、まずそれが1つの実情として前提として押さえるべきであると。
それからもう1つには、グローバル競争の現実というのは、はっきり言ってもうグローバルの中でトップ1、2、3の中に入らなかったやつは滅びていくんですよ、今のグローバル競争というのは残念ながら。そうすると、何を目指すかといったら、やっぱりこれは常時ワールドカップをやっている世界ですから、企業競争というのは。その中でメダルを取れということなんですね。で、メダルを取るためには、当たり前なんですが、自分自身非常に高い規律というか高い目標を設定すべきでありまして、そういう意味で言うと、今回のコーポレートガバナンスの射程として、私は、経営者自身にとって厳しければ厳しいほど内容としてはいいと思います。ですから、現状がこうだからということで、だめな現状に全然おもねる必要はない、合わせる必要はない。で、多分基本的考え方はComply or Explainですよね。そのコード通りにやりたくなかったら、合わない理由を正々堂々と説明すればいいんですよ、これは。例えばどうしても自分の会社が独立取締役を置きたくないんだったら、なぜ置かないほうが企業価値が高くなるか堂々と説明すればいいし、自分の会社が何で全くレバレッジをきかさないでフルエクイティーでやっているのか、堂々と言えばいいんです。私が役員をやっているオムロンは、ちなみに無借金会社です。だけど、ROICは10%を超えてROEも10%を超えています。たしかROICも個別開示していますよね、あの会社。今の資本生産性で言うと、セグメント別の情報まで開示しています。それでちゃんと10%を超えていて、で、オムロンは別にブラックではありません。とってもホワイトな会社です。人を大切にすることで最も有名な会社のうちの1つですから、あとCSRでも最も有名な会社の1つですから、別にそんなものは全然トレードオフになりません。
だから、そういう意味で言うと、ここでやっぱり基本を考えなきゃいけないのは、いろいろなよその国のいろいろな比較がこの後出てくると思いますが、やっぱりここで目指すべきは、どの国よりも経営者に厳しいコーポレートガバナンスを我々は目指すべきで、それが多分基本的なスタンスだと思います。くどいようですが、だめな実情に合わせる必要は、少なくともこのComply or Explainという枠組みで議論する限りにおいては全く必要ないと思います。日本の企業の底力はすごいですから、要するに厳しいディシプリン、厳しい規律を課せば課すほど、日本の会社は間違いなくこの後もう一回成長するし、収益力を高めます。これはもう私自身がものすごくたくさんの会社の経営にかかわってきましたが、もうその実感として、多分経験上のN値、Nの数は私は多分日本で一番多いはずなので、日本航空含めて、ですので、それはもう確信を持っているので、ぜひそういう基本スタンス、基本プリンシプルを持ってこの有識者会議をやっていただければうれしいなと思います。
以上です。
どうもありがとうございました。
では小口さん。
ありがとうございます。先ほどご説明が事務局のほうからありましたが、普通はコーポレートガバナンス・コードがあって、そこから派生してスチュワードシップ・コードという流れだと思うのですが、日本の場合はそれが逆行したということで、これは別にコーポレートガバナンス・コードが要らないからということではなくて、現実としてコーポレートガバナンス・コードに対するベスト・プラクティスに関し合意形成がなされていなかった、いろいろな意見があって、それについて合意ができなかったということかと思います。今回は政府の方針の中でベスト・プラクティスの合意を得るチャンスができたので、ぜひこの機会を何とか生かしていきたいなと考えています。ただ、繰り返しになりますが、コーポレートガバナンス・コードについては、細かいところで言うといろいろなモデルがあり、いろいろなお考えがあります。その中で、私自身は1つのベースになる考え方としてあるのかなと思っていますのが、先ほどお話がありましたスチュワードシップ・コード、私はそちらのほうの有識者会議にも参加させていただいていたのですが、その中の前文の「本コードの目的」の5で、企業と機関投資家の責務は車の両輪と位置づけた上で、車の両輪の一つである「企業の側において、経営の基本方針や業務執行に関する意思決定を行う取締役会が、経営陣による執行を適切に監督しつつ、適切なガバナンス機能を発揮することにより、企業価値の向上を図る責務を有している」という考え方です。もちろんここに書いてあるからそうだと決めつけるつもりはないのですけれども、いろいろな要素が入っている概念だと思うので、例えばこれをベースに、じゃあ具体的に適切な監督とは何なのかとか、適切なガバナンスは何なのかとか、そういったところを詰めることによって、一本筋の通った、枝葉末節にとらわれないガバナンスの考え方というのができるのではないかなというふうに考えております。
それから2つ目ですが、冨山メンバーからもお話がありました伊藤レポートが昨日公表されまして、その中の一節に、これは著名な経営者の方のお言葉なので、ご存じの方も多いかと思うのですけれども、「製品には通常、何らかのギャランティーが付されていて、製品に何らかの欠陥とか不備があったら、一定の保証期間無償で修理ないしは新品と交換するのが普通の商品。ところが、株式というのはそういった保証は全くない。」という表現がされていて、そういったものを投資家に売っている。ある意味すごくひどい商品を売っているな。」ということをおっしゃっているのですけれども、ただ、でもそれを買うのはなぜかというと、やはりリスクはあっても、将来に対する期待があるから買う、そういうことだと思うのです。その視点で今回のこのコーポレートガバナンス・コードを考えたときに、そういった株式の本質はあるけれども、何らかのクオリティーの保証とは言いませんが、こういうコードがあってこういうことを守っているんだというふうな、日本市場の上場株式のジャパンブランドみたいなものを、海外に売るという意味合いが大変大きいと思います。どこまで厳しくするかというのはいろいろ意見があるとは思いますけれども、ただ、コードをつくって海外に発信するということによって、保証のない日本株という商品を、3割の投資家が海外、フローではもっとですが、事業会社で考えてみると3割が輸出ということですよね。その輸出先の方々に安心して、そして期待して買っていただけるようなものということを、やはり念頭に置いて考える必要があるんじゃないかなと思います。
それに関連して、これもスチュワードシップ・コードの検討のときにお願いしたのですが、先ほど冒頭で、公開という申し合わせの話がありましたが、事務局の方の負荷はよくわかるのですが、公開という意味でいきますと、可能な範囲で結構なので、例えば議事録であるとか資料なども適宜英語版にしていただいて、途中の時点で海外の方とのコミュニケーションを図っていただくと、最終的にはパブコメになるのかもしれませんけれども、その前に、海外も含めてまさに対話みたいなものができたらよりよいものができるんじゃないかと思います。
それから最後ですが、おそらく議論の中心になるのは取締役会の役割・機能になるとは思うのですが、先ほどの各国の事例でもありましたように、少数株主の保護という視点もぜひこの議論の中で入れていただきたいなと思います。具体的に言いますと、例えば買収防衛策の問題とか、あるいは持ち合い株の問題、ある意味日本の制度では、今、よくも悪くも株主至上主義で、多数の株主の賛同が得られればそれでいいという、そういう制度になっていると思うのですが、やはり取締役会というのは株主にかわって経営の監督をする役割にあるので、そこの人たちがきっちりやることによって、少数株主がきちんと保護される。先程来の平等性とか透明性、開示もそうかもしれませんけれども、そういった要素を入れて少数株主の保護を図るというのが、実際の経営にとっても大変重要なことだと思いますので、ぜひ検討の中に入れていただけたらなと思います。
以上です。
どうぞ。
ありがとうございます。コーポレートガバナンスにつきましては、私は現場でいろいろ見る立場にありました。多くの日本企業は、ある意味では非常に倫理観も高くて、技術力も高く、よい会社だということは言えると思いますが、ただ、投資家に対する説明責任、アカウンタビリティーといいますけれども、そういった視点がややそのほかの機能に比べて弱いという印象を持っています。
先ほど委員の発言についで、スチュワードシップ・コードに関連して機関投資家の方がどのような対応をしていいのかわからないというような意味合いで私は受け取ったんですけれどもやはりコーポレートガバナンス、企業の規律がしっかりしていないとスチュワードシップは発揮ができないんじゃないかということだと思います。具体的には、企業の説明責任や情報開示の充実が必要だろうということです。その情報には信頼性や比較可能性などが必要となりますので、こういったところをベスト・プラクティスとして入れていくべきではないかと考えています。
日本の食品が世界各地で非常に売れているわけですね。北海道の農産物などは、シンガポールの百貨店で特産展を開くと、あっという間に売れてしまうらしいんですね。それはなぜかというと、やはり日本というブランドが安心、安全、信頼、こういったものを既に持っているからだろうと思います。ですから、グローバルの資本市場の中で、日本のマーケットは安心、安全、信頼、これがナンバーワンになれるような、そういうコーポレートガバナンス・コードをつくっていくことが必要じゃないかと考えていますので、よろしくお願いします。
ありがとうございました。
それでは大場さん。
1つは質問で、1つは意見であります。
質問は、東証が既に2004年にコーポレートガバナンス原則を策定されて、2009年に改訂されている、こういうことでありまして、いろいろ取り組みが行われているということではないかと思うのですが、今一体この現状で何が足りないという理解をされているのかということであります。油布さんのほうからは、Comply or Explainの規律はこの原則には盛り込まれていない、こういうご説明がありましたけれども、これが一番の課題なのか。冨山さんからの意見もございましたように、2004年、2009年、そして今2014年ですよね。この期間において全く企業価値の創造にトータルとしては、個々の会社としては立派な会社もたくさんございますが、多くの企業が価値創造にあまり成功しているとは言いがたいということがあると思います。この5章には会社の価値の最大化に向けた経営者の動機づけが既に原則として示されている。にもかかわらず、それが実現できていない。今は一体何が足りていないという理解をされているのかというのが質問であります。
で、私の意見ということでありますが、先ほどからの皆さん方のご意見にも出ておりますが、私は、コーポレートガバナンス・コード策定の基本的な精神というのはやはり2つではないかと思います。1つは、皆さんからご意見が出ておりましたように、透明性の確保、どの程度の透明性を持って開示をしていくかということがまず基本精神になくてはならないのだと思います。これは今話題になっております社外取締役の導入に絡めて、社外取締役にいかに活躍をしていただくかということのポイントは、一に透明性、二に透明性、三、四がなくて五に透明性だと、このように言われておりますけれども、透明性を確保するかということを提示できるかということが重要だと言われておりますので、まずこの透明性の確保が第一の基本精神の原則ではないかと思います。
第2点は、受託者責任といいますか、企業の経営のほうも投資家のほうも職業的プロフェッションとして責任を負っているという自覚がどの程度あるかということではないかと思います。アメリカでの事例ですが、1933年大恐慌のさなかにルーズベルト大統領がディスクロージャーズ法、つまり証券法の制定を議会に要請した際に述べた言葉を紹介したいと思います。ルーズベルトは、『他人のお金、国民のお金を扱ったり利用したりする立場にある人は、基本的に他人のために行動しているトラスティーの立場にあるということを自覚する必要がある、これが古来からの真理だ。この原点に立ち戻って証券法の制定の審議をお願いしたい』ということを述べたという有名なエピソードがあります。つまり、コーポレートガバナンスということについて考えますと、企業経営者がどれだけ国民のお金を活用して、職業的なプロフェッションとして企業価値の創造に邁進するかということではないかと思いますし、投資家のほうは、委託者の意向を受けて職業的なプロフェッションとしていかにリターンを委託者の期待に応えるようにお返しできるかということではないかと思いますので、そういう意味で言いますと、基本精神の第2のポイントは受託者責任ではないかと思いますので、ぜひ基本的な精神としてその2つを盛り込んでいただければありがたいと思います。
以上であります。
どうもありがとうございました。
最初のほうのご質問は、誰かに答えていただくということではなくて、我々自身が確認し、何か自覚しなければいけないような話だというふうに思いますが、まあでも、とりあえず事務局サイドで何らかの問題意識があるようでしたら、では。
今、池尾座長が言われたとおりかと思います。一応お尋ねの点について、事務局を代表して思うところを述べさせていただきますけれども、冒頭のご挨拶でも申し上げたように、政府あるいは取引所でもこのコーポレートガバナンスの強化ということはいろいろ取り組みをしてきたわけですけれども、今ご指摘があったように、なかなか十分な結果が出ていないじゃないかというご指摘を諸先生からいただいたところだと思います。今、大場委員が言われたように、このコーポレートガバナンスの問題というのは、やはり王道は、企業がおっしゃるような受託者責任の中で物を考え、投資家も受託者責任の中で物を考え、そして両者が直接に建設的な対話をし、その中で解を見出していただくというのが王道なのではないかと私は従来考えてきました。ただ、これまでのところ、必ずしも双方からなかなかそこの対話がうまくいかないと、投資家の方からは、企業に言ってもなかなか何も説明が聞けないと。企業の方からは、投資家というのは説明しても何も理解しようとしないと。そういう声が私どもとか取引所に寄せられてということだったと思います。本来、そういう対話は役所とか取引所を経由して対話をするのではなくて、やはり直接対話をしていただくことが最も建設的だと思います。
そういう意味で、そのコーポレートガバナンス・コードをこれから考えていくときも、あるいは現在の東証の原則を見たときに、そういう対話をやはり促進するような形でポイントが押さえられているかどうかというのが、例えば今の東証の原則を見ても、原則的なことはしっかり押さえられていると思うのですけれども、ほんとうに原則的なところだけに書かれているので、例えば、株主が議決権を的確に行使し得る環境の整備ということは掲げられていますけれども、それでさらに対話ができるのかどうか、そういうときにどういったことが例えばポイントになるのか。それはどうあるべきかは、多分これはComply or Explainの世界なので、あまりルールベースの問題ではないと思うのですけれども、どういったところがその対話のポイントになるのかということをやはりある程度押さえていくことによって、両者の対話が進んでいくということにしていかないといけないのかなと思っております。具体的にどうやっていくかは、諸先生方からいろいろご意見をいただきながら、私どもも一緒に考えていきたいと思います。どうかよろしくお願いします。
私も先ほどの原則をつくった本人として申し上げますと、本当はコーポレートガバナンス原則よりもうちょっと深い、それこそ局長から出ておりました対話の材料になるようなものを作りたかったわけでございますが、なかなかそうもいかないという現状があって、あのぐらいの表現に全部とどまっているということでございます。もとをただせば、先ほどから幾つか出ていますように、投資家と企業というのは同じ船に乗っているという運命にあるわけですけれども、そういう意識が全くないということでした。少なくとも、前は、会社は誰のものかという議論でいつも詰まって対話が進まないということがあったので、せめて両者が対話ができるように共通の言語というか、そういうものをつくりたいという思いで、最終的にできたのが今のガバナンス原則でございます。そういう意味で言うと、信仰している宗教が違う人の間で対話ができるような基礎だけができているというのが現実でございまして、そこから先が進んでいないというのはご指摘のとおりだと思います。どういうふうにすればいいのかというのは、もちろん対話も大事だと思いますけれども、まずは同じ船に乗った者同士として同じ方向に進んでいくんだという意識ができるような対話を促進していくということだと思いますが、具体的にそのためのどういうことが必要なのかは、皆さんと一緒に私も考えていきたいと思っております。
ありがとうございました。
それでは、はい、どうぞ。
この有識者会議は、要するに基本的な方針の考え方を整理する場であると理解をしております。この基本方針が定まれば、それを受けて実効的な施策の策定に着手していく、こういうスケジュール感だと理解しております。
それで、資料1にも書いてあるわけですけれども、座長は必要に応じ関係者の出席を求めることができるとありまして、次回の説明者のご案内は先ほどありましたけれども、こういう場での議論を有効に進めるために、どのような関係者が予定されているのか、いや、全く予定していないんだ、議論の進展によるんだということなのかとか、その辺はどういう進め方になるのかということに関心があります。
と申しますのは、私は日本監査役協会の会長という立場でこの場に出ております。したがって、多くの会員の監査役・監査委員さんを通じて、企業経営に関する監査役・監査委員としての悩みであるだとか、経営との対話の問題であるだとか、あるいは経営の効率性に関する問題だとか、そうした課題や現状に関して多々伺う機会がございます。協会として、今日ご列席の関係委員の方々にも幾度か講演、研修等々の講師を務めていただいた、そういう多くの機会もあるわけですけれども、日常的な企業経営に関し、監査役あるいは監査委員、監事、ひとしく経営者と一定の緊張感を持って対峙して関係を保っているのが現状かと思います。したがって、先ほど冨山委員のほうから上部構造がだめだと、例えばのお話だと思いますが、あるいはだめな実情におもねる必要はないというご指摘がありました。基本的にはそのとおりだろうと思いますが、むしろ、もしこの場で基本方針が定まり、実際的な施策に展開していく場合に、そのコードに即して現実的に回していく経営者、企業集団の関係者がその趣旨をよく理解し、受け入れていく、そういう基盤が整わないと、どのようなコードも上滑りしてしまわないかと実は懸念をしております。それはおもねるということで決して私は申し上げているわけではありません。企業経営の実情に関しての関係者の招致等々もむしろされたほうがいいのではないかと考えるものです。無論、そうしますと、じゃあ経営団体なのかという、こういう形になってしまうと思いますが、先ほどの事例が挙げられましたけれども、よい経営あるいはだめな経営の人に出てきてしゃべれというのはなかなか難しいと思いますが、もしそういう勇気のある方がおられて、反省の弁を述べられるような方がおられれば、いや、そういう実情もきちっとお聞きして、意味のある結論に結びつけていくということが必要ではないかと思いますので、関係者をお呼びしてここで参考意見を徴するということであれば、そういう機会もぜひ設けていただけたらよろしいのではないかと思います。
以上です。
これからの議論次第という面も非常に強いと思いますが、ただ、締め切りはあるわけで、いつまでも議論していていいというわけではないので、そうすると、終わりから逆算してどのくらいのペースで議論していかなきゃいけないかというのはある程度決まってくると思うのですけれども、その間にどれだけヒアリングのようなことができるかというのはなかなかタイトなスケジュールになるかとは思いますけれども。
もし今の段階で何か予定的なことで申し上げられることがあれば。
現時点では、ヒアリングのような機会を設けるかどうか、固まった考えを持っているものではないので、現時点において、しないとも、しようという予定を今持っているわけでもないので、今日のご意見も踏まえてどうするかは座長ともご相談しながら考えていきたいと思いますが、再興戦略のほうでは秋ごろまでに基本的考え方を取りまとめると明記されているので、まあ秋というのは多少幅があることを期待するんですけれども、事務局的にはかなりタイトである。ただその中で必要なことはしていかなければいけないと思います。
それから、昔コーポレートガバナンスの議論をやはり池尾座長に座長をお願いしてこの部屋でやったこともあるんですけれども、当時の経験では、企業の方にご説明やプレゼンをお願いしてもなかなかお引き受けをいただけなかった経験もあり、それは我々、いい経営の例として説明していただきたいということをお願いして、先方のお部屋にお邪魔するといろいろ教えてくださるのですけれども、この場所でプレゼンをお願いすると、丁重なお断りをいただくことがありまして、その辺も合わせて、太田委員のご指摘を踏まえてちょっと考えてみたいと思います。
じゃあ中村メンバー、お願いします。
今のお話にも関連するところでございますが、私は日本経団連から、この場に参加させていただく形になっておりまして、1つはそちらのコーポレートガバナンス部会というところで議論した内容をこの場でできるだけ発言させていただきたいと思っておりますので、資料を早目に頂戴して事前の議論ができるような形にしていただければ思っております。
全般的なことにつきましては、私どもは受ける立場でございますので、ここであまり申し上げることは考えていないのですけれども、今回、ルールということではなくて、Comply or Explainということで、こうでなければいけないということではなく、なぜそうしないのかということをきちっと説明するという形でのルールづくりとなった、原則づくりとなったことは非常に喜ばしいことではないかなというふうに感じております。
私どもの会社では社外取締役を導入して、それはそれで意義あることだと思っておりますが、他方で監査役制度ということに関しても、これはこれで非常に有効な制度というふうに認識をしておりますので、そういったことをまた海外の方にうまく伝えていける、そこはなかなかまだ理解をいただけていない部分が多々あるかと思っておりますので、そういった形で企業のさまざまな選択によってこれがいいと思ってやっている部分を、いかに投資家の方、海外の方にもお伝えできるようになるのかということがこの議論の中で昇華されていくとよいなというふうに感じております。よろしくお願いいたします。
神田先生。
細かい点1点と、やや抽象的な点1点を意見として申し上げます。
細かい点はあまりに細か過ぎて申しわけないのですけれども、9ページかどこかで各国の表がありました。アメリカですけれども、例だとは思いますが、サーベンス・オクスレー法が挙がっているのですけれども、やはりこれを挙げるならドッド・フランク法も挙げていただきたい。金融危機の後に、より一般的なコーポレートガバナンスの議論がありまして、ドッド・フランク法の、例えばsay on payといっていますけれども、それを要求するというようなものは、いかなる意味においてもコーポレートガバナンスの分野に含まれると思いますので、含めていただけましたら幸いです。また、あわせて、金融危機後のコーポレートガバナンスの議論というのが諸外国ではあるわけですので、その辺も何かの際に加えていただけましたらと思います。もう既に日本では十分紹介されているかもしれませんけれども、諸外国を比較する際にポイントになると思います。
それから大きな話のほうですけれども、この分野はいろいろな場所でいろいろレベルの高い議論や取りまとめ、コードの類が既に存在していますけれども、と同時に、非常に日々動いているということがあるかと思います。先ほど、物づくりと違って株式という商品を売っているのだというご発言があって、名言だと思って伺っていたのですけれども、私は物づくりと違ってこういう世界が非常に日本人は苦手だというふうに思っておりまして、株式会社という仕組みをいわば売っているわけで、その株式会社という仕組みは欠点だらけの仕組みでありまして、その欠点にどう対応するかというのは、ある部分は金商法や会社法という法律で対応しているわけですけれども、やはり自主的なというのでしょうか、法律を超えた部分に委ねざるを得ない部分がある、そういういわば欠点だらけの仕組みを売っている、そういう競争を世界でしているということかと思います。ですから、そういう欠点にはこう解決しますよという約束を、先ほどエンゲージメントという言葉がありましたけれども、しなければいけないと。こういうのは物づくりと違って非常に日本人には苦手な分野だと思っています。
そこで、重要なことは、まあちょっと表現は悪いかもしれませんけれども、見た目というか見せ方、はったりということが結構大事な分野であり、いい意味で申し上げているつもりなのですけれども、したがって、コードというものを目指すのであれば、現在いろいろなところに存在しているものよりは、やはり一歩踏み込んだものを出すということをしないといけないのではないか、あるいはそうすることが望ましいと思います。その際、短い時間かもしれませんが、非常に動きが激しいグローバルな動向も十分に勘案していただきたいと思います。冒頭ご紹介がありましたOECDの状況は、次回以降お聞かせいただけると伺っていますけれども、OECDの原則は、今年改訂作業をしているというふうに伺っておりますので、なぜ、またどういう点を問題にしているのかということについてよく意見交換をした上で、それらも踏まえた上で、私どものコードを策定していただければと感じます。
以上です。
どうもありがとうございました。
武井さん、何か。
いや、私、今日は大丈夫です。
多少時間がまだありますので、2度目のご発言でも結構ですが、いかがでしょうか。
よろしいですか。それでは一通りご意見をいただいたということで、本日の自由討議は以上で終わらせていただきたいと思います。
それで、次回以降ですが、次回会合につきましては、先ほどもありましたが、閣議決定された日本再興戦略改訂版においても、OECDコーポレートガバナンス原則を踏まえるということが明記されておりますので、そのOECDのマッツ・イサクソン課長から、現在のOECDコーポレートガバナンス原則等について次回はお話を伺うと。それとともにより具体的な検討作業に入っていくということにさせていただきたいと考えております。
最後、事務局のほうからご連絡等がありましたらお願いします。
次回の日程でございますが、事務的にはいろいろ日程の打診をさせていただいております。ご都合を踏まえた上で、後日私どもからご案内をさせていただきたいと思っております。ただ、大変お忙しい方ばかりでございまして、本日も例えば決算発表の日だったりして、どうしても来られないという状況がございまして、やはり全員の方がおそろいになるというのはなかなか難しいだろうなと思っております。そういう意味で、ちょっとご都合の合わない方が出てしまうかもしれませんが、その場合、私のほうから、欠席されたときにどういうご議論があったかというのを事後的にご説明にご要望があれば伺いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
事務局からは以上でございます。
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして本日の会議は終了させていただきます。どうもありがとうございました。
以上
お問い合わせ先
金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3836、3671)