【スピーカー】
特定非営利活動法人 まちづくり地域フォーラム・かごしま探検の会
代表理事 東川隆太郎 氏
事務局長 東川美和 氏
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yutaro and Miwa Higashikawa/TEDxKagoshima
職業はまち歩き
東川隆太郎氏(以下、隆太郎):履歴書を書く時に職業欄があります。そこに私、何て書こうかなんていつも考えるんですけど、「まち歩き」って書くようにしてます。
東川美和氏(以下、美和):お仕事だったんだ。
隆太郎:その通りです。今日も実は歩いて来たんだよね。
美和:そうなの。午前中は、この鹿児島大学の中を歩く「まち歩き」ってのを企画して、歩いて来ました。
隆太郎:そうなんですよ。この辺り、面白いものが結構あったよね。
美和:結構面白かった。池もあるし、神様もいたりして。森もあったりしたよね。
隆太郎:馬がいた。
美和:芝生の中に「馬、ペット、犬、芝生の中に入ってていけません」って看板もあったりとかして。馬を禁止してるところって、なかなか無いよね。
隆太郎:こんな住宅地でだからね。まち歩きをすると、本当にいろんなものが見つかります。ということで、私、こんなのを毎日しているんですね。さて、まちを歩くと色んなものが見つかります。例えばこんなもの。
隆太郎:これ、なんだと思う、美和ちゃん。
美和:砂場?
隆太郎:ブー。これ実はですね、菅原道真公の腰掛け石なんですよ。学問の神様なんです。
美和:どこに座ったの?
隆太郎:あそこにちょっと見えてるじゃん。
美和:めっちゃお尻小さくないと座れない。
隆太郎:そうそう。その、「え? まじ?」っていう、そこが面白いんだよね。こんなものも出会えます。
隆太郎:皆さん、事務所をもし借りたいという時に、こういうところがいいよね。
美和:エスカレーターが付いてるんだね。
隆太郎:そうそう。結構文明的だし。
美和:でも入り口が無いよね。
隆太郎:こういういろんなものがありますからね。こんなものもあります。
美和:危険を予告してる看板だね。
隆太郎:でもマムシってこんな動物だったっけ?
(会場笑)
隆太郎:これ明らかにコブラだよね。大隅半島にコブラがいたっていう。僕も初めて知りましたよ。
美和:私も初めて知った。
隆太郎:錦江ではこういう認識なんだろうね。素晴らしい。これもあります。
美和:私これ大好き。
隆太郎:階段なんてどこにでもあるけど、見てください。道路拡張によって階段がこんな感じになったんですよ。
美和:ピューってしてるところが可愛いよね。
隆太郎:まるでオブジェのような階段。
美和:昇っても最後出れないってところがいいよね。
隆太郎:でも私が地元のメディアで紹介した時に、この地域の人たちが大きな勘違いをしまして、こんな素晴らしいものがあるってことで、壊す予定だったらしいんですけど、保存が決定したそうです。
(会場笑)
美和:すっかり騙されてるよね。
隆太郎:騙されてる、騙されてる。ありがとうございます。これどこだかわかる?
大好きな便所コーナー
美和:ここはね、行ってお参りする時に、蓋をかぶって行くと、願いが叶う「窯蓋神社」っていうすごい神社なの。
隆太郎:南九州のパワースポットだよね。
美和:近年グングン伸びてるパワースポット。
隆太郎:これはパワースポットなんだけど、僕が好きなものはもうひとつあります。
美和:小さいお婆ちゃんがいっぱい集まってるね。
隆太郎:居心地が良さそうだよね。私はこれを「ババアスポット」と呼んでいます。ここもいろんなパワーを感じるよね。
美和:確かに一番居心地がいいところを知ってらっしゃる。
隆太郎:これまた、よく馴染んじゃうからね。こういうの大好きですね。いよいよ私が大好きな便所のコーナーがやって参りました。
美和:待ってない。
隆太郎:待ってない? 僕待ってたけどね。いつくるかなと思ってたんですけど。これいいですよね、便所なんですよ。普通でしたら、便器がありますよね。
便器ってのは内側に付けるべきなのに、外側の、これ神社の便器なんですけど、外側に結構開放的なんですよ。ここで男性が用を足そうと思うと、いろんなものが見えてしまうというね。素晴らしいですね。だから、あれ、オブジェかもしれないね。
美和:そうだね。実用的じゃないのかもしれないね。
隆太郎:昔、デュシャンっていう人が、こういうオブジェを作ったことがあるけど、まさにそんな感じかもしれないね。
どこにでもある「世間遺産」
隆太郎:これはすごいね。
美和:また便所?
隆太郎:いや、便所っていうか、今ちょっと珍しくなった電話ボックス。今結構なくなりましたよね。うわ、電話ボックスがこんなところにあるんだと思って、誰が電話掛けるんだ、行ってみてパッと開けたら便器があったという。「なるほどね」と思ったよ。電話ボックスもこういう使い方をする。
美和:しかもちょっと透けてるよね。
隆太郎:透けてるだけじゃなくて、緑色を塗ってあるんだよ。これがカッコいいよね。周りの保護色みたいなの。景観に配慮してる便所。なかなか無いよ。これもすごい。
隆太郎:大好きだね、これもね。
美和:室外機の奥に、また便器があるね。
隆太郎:でもこれって鹿屋のほう何ですけど、信号待ちしててパッと横を見たら便器が見えたんですよ。
美和:車で偶然行って、赤信号で止まり、パッて見たら見られるかもしれない。
隆太郎:ということは、信号待ちをしている人たちから、いろんなものが見られるというね。
美和:よそ見はダメだけど。
隆太郎:こんなものって、どこにでもあるんですけど、ついついこういうものを見つけてしまいます。でも、見つけるだけじゃなくて、こういうものをいろんな人たちに知って欲しいという、世界遺産ならぬ「世間遺産」という形でこういうものを認定させていただいたおります。
これをいろんなところにご紹介していると。どうもありがとうございます。美和ちゃんも拍手してくれたね。ありがとうございます。でも、遺産っていう名前をつけるだけあって、やはりこれにはある程度の価値基準が必要だなと思いました。ということで私は3つの基準を設けております。
世間遺産を決める3つの判断基準
隆太郎:ただ便所があるわけじゃない。ただ電話ボックスがあるわけじゃない。調べてみるとあら、そんなストーリーがあったんだ、地域の人たちがそういう関わりを持ってたんだっていう、そういう奥深さがあるものを私は認定しております。
それからもうひとつが、どこか懐かしい。便所にしてもそうです。婆スポットにしてもそうです。特別なものじゃないんですよ、どこでもあるんですよ。皆さんどこでも誰でも繋がれる。そういうところが私大事だと思いますね。
だからといって、皆がみんな知ってるよっていうもの、例えば西郷さんの銅像とか、あれは世間遺産です。でも、皆知ってるじゃんってことになりますよね。「え? そんなものがあったっけ?」っていう密かな部分。どこか奥深く、どこか懐かしく、どこかな? っていう、こういうのを私は大事だなと思っております。
美和:そうだったんだ。「ド・ド・ドで3D」だねって言ってくれた人がいたよ。
隆太郎:カッコいいね! いろんな認識があるからね。でも、僕「どこか」っていう、曖昧なところを残してるんです。ここ実は大事なんですね。隙間って大事だと。いろんなものがそこに入り込んでくる。いろんな人たちがある意味でそこに関わってくる。そういう場面をたくさん作りたいなと思っております。
美和:隆太郎さん、でもこれだけじゃなくて、隆太郎さんが見つけてきてくれるものって、こういう面もあるんじゃないかなと今回分析してきました。
隆太郎:あら。ありがとうございます。
美和:ひとつはね、隆太郎さんは「知って欲しい」って思うんです。強い思いを持ってると思うの。
隆太郎:パッションね。
美和:お腹もパッション。
隆太郎:ここは関係ない(笑)。
美和:例えばねこんなのも好きでしょ。
何の変哲もないところから読み解くストーリー
隆太郎:すごいですよね、これ。これは屋久島に行った時です。屋久島の北部の吉田という集落なんですけど、周りが石に囲まれてる集落なんですよ。でも地元の人たち、これが当たり前だと思ってたんですね。最初私が行った時、この石はめずらしいですね、ここだけじゃないんですよ、いろんなところにあるんですよ。
美和:岩の上に畑作ってたりする。
隆太郎:地元の方に聞いたら「皆さん方の地域には石はないんですか?」って聞かれたんです。
(会場笑)
美和:無いよ。
隆太郎:あるわけないよね。
美和:でもそこが素晴らしい。
隆太郎:そう。だから知ってもらいたいと思ったの。
隆太郎:ああ、いいねぇ。母の日バージョンってことですよね。よくわからないけどさ、ウルトラの母みたいな。
美和:艶かしい感じなのに、石膏で作ったっていうコチコチな感じが出てる。
隆太郎:これ枕崎なんですけど、鰹の町なのに人魚かよっていうね。その辺りが素晴らしいですよね。
美和:あともうひとつね、こういった特徴があると思うの。隆太郎さんは「どうにかして人が見残したものを見てやるぞ」っていうね、使命感を持てる。
隆太郎:なるほど。ミッションね。それあるかもしれないね。
隆太郎:これ変哲も無いような給水塔なんですけど、これカナヤってところになります。鹿屋の高須っていう港に行きました。戦前のころに大きな防石場があったみたいで、その防石工場で使われてた給水塔らしいんですよ。
でも今、地元の人もほとんど知らないです。こんな所に防石工場があった。でも給水塔は唯一防石工場があったってことを伝えてくれる。だから、これがあることによって、地域の産業史が見えてくる。だから見残したものなんだけど、でも伝えることによってなるほどなってなったりするんですよね。
美和:例えばこういうストーリーとか。
”ゆるい”天狗の伝説
隆太郎:これ素晴らしい。これも南九州市。行ってビックリしました。ここの集落、皆さんの地域にも天狗の伝説っていろんなところにあると思います。この天狗の伝説は「ゆるい」。
どうゆるいかと言うと、天狗がこの集落に飛んで来たそうです。ここの石の上に乗って、ここに窪みが出来てるわけです。左脚を乗せたと。ところが、ここに来た天狗はそこの集落を見渡して、良いところだから何も言うことは無いと、そのまま飛び去ったらしいんです。
すごいゆるいですよね。天狗が何かをしたんじゃなくて、滞在時間は多分5秒くらい(笑)。それなのに、ここの地域の人たちはこれをどうにか地域の街づくりに活かしたいと。何だそれはって。そこに僕は胸を打たれたんですね。これは紹介しないとと。
美和:あと、こういう看板の写真撮りまくってるよね。
隆太郎:飲み屋の看板とかね、大好きなんですよ。これは種子島に行った時の「エスパー」っていうカラオケ。僕もカラオケに行って、橋幸夫のメキシカンロックを歌ったけどね。
この看板が良いんだよね。確かに種子島だからサーファーがいるってことで。後ろにドナルドダックがいるのは訳がわからないよね。これ、版権やばいと思うよ、ディズニー。ドナルドダックなのかよくわかんない。オリジナルかも知れないよね。
美和:名前、エスパーだもんね。
隆太郎:エスパーから出てると思うんだよね。
美和:あと、一番すごいのが地域の人と一緒にこんなものを見つけて来たよっていってきてくれる、その時の話がすごく好き。例えばこういった感じの。
隆太郎:見つけてくる人、一緒に歩く人によって見えるものが変わってくるんですよ。これ徳之島に行った時です。私は徳之島の方に聞きました。徳之島は車を停める時にこんな停め方をするんですかって。当てて停めるってなかなか出来ないよね。
美和:でもこの日しか見られなかったよね。
隆太郎:これすごいなと思ったね。
美和:あとこういうのを見せた時、嬉しそうだった。
まち歩きで気付いた「多様な価値の共存」
隆太郎:これね、僕が気づいたんじゃなくて地元の観光ガイドの研修で行った時に、観光ガイドの人が僕に言いました。東川さんが好きそうなものがあるって。確かに大好きだった。この柄杓のリズム感。なかなか出来ないよね。偶然の産物。
美和:これもこの時しか、見れなかったものかもしれない。
隆太郎:まさにセッション。
美和:あとこれね。
隆太郎:これも良かったね。さっきもリズムだったけど、これもそうだよね。
美和:パッチワークみたいで可愛いよね。
隆太郎:奄美大島に行った時なんですよ。地元の方と一緒に歩いた時に、奄美の町でも一番大事な場所のひとつである、昔、協会があったその記念碑の横をパッと見たらこれだったんですよ。すごいよね。
美和:タオル、タオル、タオル、タオル……、
隆太郎:便座。
(会場笑)
隆太郎:素晴らしい。確かにこの日は乾いたと思うけどね。素晴らしいね。
美和:こういうのを見つけては「世間遺産です」って写真を撮る。私はその世間遺産の写真を撮ってる隆太郎さんを撮るのが好きだけど。何でこんなに毎日毎日写真を撮ってるの?
隆太郎:ちゃんと方向性があるんだよ。「多様な価値の共存」。自分は確かにおもしろがっております。でも、おもしろいものがどこの地域にもある。おもしろいものがたくさんある、こういう状況を作りたいなって。こういうのに気づいて欲しいなって。
いろんな価値があって、いろんなおもしろさがある。見方を変えると、これもある意味では地域の中ではいらないかもしれないし、ゴミかもしれない。しかし、いろんなストーリーを見てみると、実は価値がある。こんなおもしろさがあるんだって。そこに気づいて欲しい。これが僕の世間遺産を通してやりたかったことなんだよね。
美和:隆太郎さん、今日は良いことを言ったねぇ。
隆太郎:ありがとうございます。
美和:昨日までに残していたものも、もしかすると明日、皆さんがその価値に気づいたり、おもしろがることが出来るかも知れないということなんだね。
隆太郎:あれ? 今日のテーマのyesterday tomorrow、近いね! いいですね。本当にね、私が話をしたこと、これ、誰でも出来ます。どこでも出来ます。今すぐ出来ます。タダです。ということで、皆さん方も見つけてみませんか? ありがとうございました。