へっぽこぺけぴの冒険の書

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ぺけぴーが約束の地へと辿り着いた時、既に他の面々は勢揃いしていた

「遅かったじゃないの白虎　既にもう始めさせてもらっているぜ」

「羅刹…久しいな　ん？お前は…玄武、か？」

「白虎、生きていたか…天紅の戦以来だな」


マスターベストを担当する事となったぺけぴー
既にイコプ、サワッチの手によって二度の錬金を終えている
イコプ＜玄武＞と、サワッチ＜羅刹＞　ぺけぴーと同じくオリジナル・シックスの一角を担うこの二人
押しも押されもせぬ超級錬金術師二人の力がエンチャントされたこのマスターベストを
これまたオリジナル・シックスが一人、風桜＜麒麟＞より受託する

「受け取って、白虎　私たちのバトン…託したわよ…未来を───！」

「任されよ麒麟、この白虎が皆の未来、プランの夢　繋げようぞ…！」


錬金術に於いて最も肝要となるのは錬金効果の選定である　言い換えれば、何を目的として捉えるか
長所を伸ばすか？短所を補うか？或いは全く別の何かに特化させるのか？

本来であれば依頼者の真意を探るところから始めるのだが、
その依頼者であるプランは我らオリジナル・シックスの力を信じて疑わない様子
なればその期待に一切の淀みなく応える事こそが務めであり、オリジナル・シックスが一角としての矜持
手元にたまたま素材があったということで、防御力強化の能力を付与することに決めた

そしてぺけぴーは手元からツボを取り出す　鈍色の光沢を放つ鉄製のツボ───名を『アトモス』
白金製やオリハルコン製のより高レベルなツボの製法が確立された現世で、あえての鉄ツボ
弘法は筆を選ばない
200Gで買ったこのアトモスは、ぺけぴーの手に依れば超錬金ツボをも凌駕するのだ

「むう…これは…」


その練達のぺけぴーでさえ思わず顔を顰めるこの配置
底冷えするような笑みを浮かべ、大鎌を担ぎながら、死神が頭上を旋回しているかの如き錯覚を覚える

「流石はイコプ、そしてサワッチと言った所か」

本来、ぺけぴーの力を持ってすれば失敗エリアは多く見積もっても全体の2％程度にしかならないが道理
だがこれは如何した事か　2/3もの範囲が失敗エリアと化している
理由は明白　先に錬金を施したイコプ、サワッチ両名
その二人の余りにも強大な力が、ぺけぴーの力と溶融することを強くオブジェクションしているのだ
まさに水と油　過ぎたる力は時としてこのような弊害を生む　しかし───

「面白い」

ぺけぴーもまた同等の力をその身に内包させる、常識の埒外に身を置く男
この芳しくない状況にして尚その傲然たる雰囲気は失われることなく　永劫不倒の巨木をも想起させる
其方が水で此方が油であるならば、其方もまた油に変えてやろう　正しく錬金術師のロジックである

時空を超越し集った比肩する者なき超人たちの協奏曲＜コンチェルト＞は、いよいよ以って終わりを迎える
最後のタクトを握りしはぺけぴー　偉大なるコンダクターはその身に万雷の喝采を浴びるか


ズコーッ

水は水、油は油　錬金術の深淵に辿り着いたつもりであったが、尚も深きか…！


斯くして非常に味わい深い一品に仕上がったマスターベスト
時同じくして、スラックスやシューズもまた他のオリジナル・シックスの面々によって錬金が完了した様子


我らオリジナル・シックスが心血を注ぎ、魂を削って生み出したる渾身のアーティファクトは
そのどれもが究極を体現していた　
今再び依頼者であるプランの元へと返っていく

「我が友プランよ、受け取れッ！而して御身に纏うがいいッ！」

「うおおおおおおおおーーッ！！！」

プランが袖を通した刹那、光が爆ぜる───
マスター装備に圧し留められていた錬金術師達の気（オド）が、プランを包み込む
今、プランは所有者として相応しいかどうか、試されているのだ
万が一不相応なれば
マスター装備から放たれる無慈悲な力の本流は容赦なくプランの精神を焼き払い、
彼はそのまま廃人と化してしまうだろう
こればかりは我々にも如何とも出来ず、ただプランの力量を信じる他ない

永遠にも刹那にも似た時間が流れ、そして───

「適合、した…」

眩いばかりの光はプランの中へと収斂されてゆく
それはマスター装備がプランを己の所有者であると認めた何よりの証左
張り詰めていた空気は弛緩し、やがてそれば歓喜となる

「ありがとう、みんな、ありがとう…ううっ」　ｸﾗｯ


マスター装備のエネルギーに当てられ、喘鳴を漏らしながらよろめくプランをぺけぴーは優しく抱き止める
気付けばぺけぴーは頭上にケーキを携えていた　不器用な彼なりに精一杯のプランへの祝辞だった

「ふふ、げに美しきは友情かな…さて、我々も帰ろうかね」

「そうね…久しぶりにみんなと戦えて、楽しかったわ」

そして錬金術師達はそれぞれがそれぞれの帰るべき場所へと戻っていく
いずれまた再び逢う日もこようさ…確信にも似た予感を感じながら、ぺけぴーもまた約束の地を後にした

錬金術師の最終戦争＜アルマゲドン＞　～Fin～

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おまけ。

「結局ｗｗｗｗｗ俺以外ｗｗｗｗｗみんな失敗してんじゃんｗｗｗｗｗﾌﾟｷﾞｬｰｗｗｗｗｗ」


「ウッ」

※チョークスリーパー … ぺけぴー＜白虎＞が最も得意とする錬金術の一つ

おわり。