日本でも米国でも欧州でも、低かった長期金利がここにきてさらに下がる傾向にある。

 今回の起点は欧州だ。14日に発表された4~6月期の経済成長率はユーロ圏全体でゼロ。最大の経済規模を持つドイツは5四半期ぶりのマイナス成長で、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は「必要なあらゆる手段をとる」と述べた。

 すでにマイナス金利を導入しているECBがさらに利下げをするか、大量の国債を買う量的緩和に踏み切るのではないか。そんな見方から、欧州の市場では国債が買われ、国債価格が上昇して長期金利は低下。指標である10年物国債の利回りがドイツでは初めて1%を割った。

 日米にも波及し、10年物国債の利回りが米国では2・3%程度と1年2カ月ぶり、日本では0・5%程度と1年4カ月ぶりの低水準だ。

 長期金利が下がれば、住宅ローンの金利や、企業の資金調達コストが下がる。国の借金の利払い負担も減る。しかし、喜んでばかりもいられない。今の市場はひずみが大きいからだ。

 長期金利は理屈のうえでは、今後の物価上昇率や経済成長率の見通し、財政悪化のリスクなどを反映して決まる。経済が成長して物価が上がれば金利は上がりやすいし、財政悪化も金利上昇の要因となる。現在の日本では、財政要因を除いても、長期金利は1%以上あるのが自然だという見方が強い。

 それが0・5%程度にとどまっているのは、日銀が「異次元」の金融緩和で抑え込んでいるからだ。財務省が年間に発行する国債の7割に相当する分を日銀が買っており、国債市場では国債が不足して価格は上昇、利回りは下がりがちだ。日銀がもつ国債の残高は3月末で201兆円。国債全体の2割を超え、保険会社を抜いて最大の保有者になっている。

 長期金利の水準が経済の実体とかけ離れ続ければ、適正な水準に戻そうとするマグマが市場にたまる。一方で、日銀の存在があまりに巨大で、政策を変えようとすれば国債暴落など極端な動きを招きかねない。

 日銀は、2%の物価上昇率という目標に届いておらず、異次元緩和の「出口」を語るのは時期尚早という立場だ。しかし、沈黙を続ければ市場のマグマはたまる一方だ。慎重を期すことは当然の前提としても、日銀は、異次元緩和をどう終えるつもりなのか、先々の考え方について、市場との対話をそろそろ始めてはどうだろう。

 沈黙にもリスクは伴う。