愛知県は30日、南海トラフを震源域とするマグニチュード(M)9級の巨大地震が発生した場合の市町村別の被害予測を発表した。県全体の16%強に当たる38万棟が全壊・焼失し、死者数は2万3000人に上る。南知多町では7割の建物が被害を受け、人口の1割超が死亡すると推計した。県は今秋をメドに、市町村別の経済被害額や対応策をまとめる方針。
内閣府が昨年8月に公表した南海トラフ巨大地震の震度分布や津波高のうち、県の被害が最大になるケースをもとに分析した。
それによると、建物被害の内訳は、揺れによる全壊が23万6000棟、浸水・津波による全壊が2300棟、火災による焼失が11万6000棟。人的被害では、建物倒壊などによる死者が1万5000人、浸水・津波による死者が6000人、火災による死者が2400人と推計した。
市町村別の被害状況をみると、沿岸部で震源にも近い南知多町では、町全体の69%に当たる9000棟が全壊・焼失する。死者2300人のうち7割以上が浸水や津波によるもの。同町は「県の中では突出しており、大変厳しい数字」(防災安全課)と危機感を募らせる。
一部で震度7が想定される名古屋市では、6万7000棟が全壊・焼失し、4600人が死亡する。死者の内訳は、建物倒壊が2100人、浸水・津波が2300人、火災が200人。同じく震度7の豊橋市の建物被害は市全体の35%に相当する4万7000棟。津波などを合わせた死者は2800人に上る。
死者が1800人と推計された西尾市の担当者は「厳しい数字が出ることはある程度予測していた。住宅の耐震化やハザードマップの策定を着実に進める」と話す。
今回の被害予測は、県内住宅の家具転倒防止対策実施率が49%、津波がきても避難しない住民が3割いることなどを前提に試算している。県は「住宅の耐震性能や住民の意識向上が進めば、被害を大幅に抑えられる可能性が高い」(防災局)としている。
県は今年度から、住宅の室内に設けて震災時に身を守る「耐震シェルター」設置への補助金制度を創設した。また、発災時に住民が逃げ込む避難ビルを、現状の819カ所(2012年8月1日時点)から上積みすることも検討する。
県は今秋にも、市町村別の経済被害額やライフラインの被害状況をまとめる。防災・減災対策も盛り込む方針で、各自治体が防災計画を策定する際の指針として活用してもらうという。
結果を受け大村秀章知事は「大変衝撃的な数字。(試算を)率直に受け止め、ハード・ソフト両面の対策を進めたい」と話した。
大村秀章