北朝鮮国営の朝鮮中央通信が「右翼保守系の売文紙らしい盲動ー産経新聞の慰安婦報道」という論評で「捏造と独断で、最も反人倫的な日本軍慰安婦強制連行蛮行を否定した」と非難した。
国家権力が特定のメディアを攻撃するなど論外だが、同紙がそのような言論干渉に自ら口実を与えていることも否定できない。
http://www.kcna.co.jp/calendar/2007/04/04-19/2007-0418-016.html
河野談話を否定し、「従軍慰安婦は戦時売春婦」と被害者を冒涜する“加害者の論理”の発信源が、産経新聞であることは衆知のことである。それが安倍首相にまで影響を与えるなど暴走したことが、たまたま米議会の従軍慰安婦決議案をきっかけに、国際的な審判を仰ぐことになった。
日本国内でも、「慰安婦問題」に真摯に向き合う人々は少なくない。一部メディアの加害者の側に立った、資金力にあかせたプロパガンダにかき消されつつあった“日本人の良心”が、改めて世界のメディアの注目を集めていることは、不幸中の幸いというべきであろう。
http://www.janjan.jp/government/0704/0704170945/1.php
産経グループのプロパガンダには、「嘘も百回つけば真実に成る」式の、学問的裏付のない特定の“似非事実”をたらい回ししながら既成事実化し、社会に拡散させていく特定のパターンがある。
それを端的に示すのが、古森義久・産経新聞ワシントン駐在編集特別委員が産経新聞(4/13)に寄稿した「慰安婦決議案 報告書に『吉田証言』 米下院『根拠』は虚構」との記事である。要旨は以下の通り。
米国議会調査局の報告書に「日本軍による女性の強制徴用」の有力根拠として「吉田清治証言」が明記されていたことが12日、判明した。
「慰安婦システムの説明」という部分で「強制」の根拠をあげ、「詳細の暴露は『私の戦争犯罪・朝鮮人強制連行』という本を書いた元日本軍憲兵の吉田清治氏によってなされた。吉田氏は同書で日本軍への性のサービスを提供する『慰安婦』として韓国内で合計1000人以上を強制徴用することに自ら加わったことを描写している」と明記している。
この「吉田証言」はその後、歴史家の秦郁彦氏らの調査などで虚構だったことが立証された。改訂版の慰安婦問題報告書では削除されているが、議員たちはみなこの「吉田証言」を中心にすえた報告書を参考資料として使ってきたことになる。
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/070413/usa070413007.htm
古森氏は、「『吉田証言』は歴史家の秦郁彦氏らの調査などで虚構だったことが立証された」とするが、真っ赤な嘘である。
韓国語も理解できない秦氏の「現地調査」は学術的調査とは程遠いもので、一個人の独断の域を出るものではない。
従軍慰安婦の存在を証明する資料は少なくないが、その中でも、吉田証言が旧日本軍人として従軍慰安婦について明らかにした貴重な資料であることは現在も変わらない。
吉田氏は、「太平洋戦争当時、国民総動員令を執行する労務報国会の山口県動員部長として朝鮮人6000人を強制連行し、その中には慰安婦の女性も多かった」、「昭和18年に軍の命令で、済州島で女性200人以上を挺身隊として強制連行し、慰安婦にした」などと1983年に出した著書「私の戦争犯罪・朝鮮人連行強制記録」などで体験談を語った。
日本のメディアも吉田証言を「昭和十八・十九の二年間で千人以上」(赤旗1992年1月26日)「吉田さんらが連行した女性は少なくみても九百五十人」(朝日新聞1992年1月23日夕刊)と報じ、従軍慰安婦の存在が世に知られるところとなった。
それは日本政府を動かし、1993年8月、河野洋平官房長官は、1年8ヶ月の調査を経て「慰安所の設置は軍当局の要請によるものであり、募集は軍の要請を受けた業者が主に行なったが、甘言・強圧による事例が多く、更には官憲等が直接これに加担したこともあった」として、公式に謝罪を表明した。
そうした動きに反発したのが、産経新聞などの右派メディアであった。
産経新聞などの常連寄稿家である秦郁彦氏は、河野談話が出される前の1992年3月29日に済州島に渡り、吉田証言を「実地検証」をしたという。
しかし、その内容たるや、康大元なる「海女研究家」を通訳に立て、「城山浦の老人クラブ、貝ボタン工場の元組合員など五人の老人と話し合って、吉田証言が虚構らしいことを確認」という程度のことでしかない。
「実地検証」と言うにはあまりにお粗末な代物だが、敵意や憎悪を煽って矛先を変えるプロパガンダの要諦だけは心得ているようだ。
済州新聞(1989年8月14日)に「(吉田証言の)慰安婦狩りの話を裏ずづけ証言する人はほとんどいない」と書いた許栄善記者を利用することを思いつく。そうして、「『なんでこんな作り話を書くのでしょうか』と、今は『済州新聞』の文化部長に移っている許栄善女史から聞かれ、私も答えに窮したが、『有名な南京虐殺事件でも、この種の詐欺師が何人か現れました。彼らは土下座してザンゲするくせがあります』と答えるのが精一杯だった」と、自著「昭和史の謎を追う」、「慰安婦と戦場の性」などで臆面もなく披瀝している。
ろくな調査もせず、人の話をだしにしながら吉田氏を「詐欺師」扱いする傲慢無礼な論法は、学者らしからぬ。曲学阿世の輩、というべきであろう。
案の定、秦氏は学会などで「秦氏の乱暴な引用の仕方が史実を歪曲している」としばしば批判されている。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/rekiken/archives/ebara_2002.html
「現地調査」とは名ばかりの粗悪品が「立証」などともてはやされるのは、右派保守陣営のニーズに合致したからで、実際、秦氏は復古主義者のデマゴーグとしての役割を担ってきた。
日本の歪んだ歴史認識が韓国、中国、さらに米国でも問題化している発端は、中学校の教科書から慰安婦の記述を削除させようと作られた例の「新しい歴史教科書を作る会」にあるが、そのアナクロニズム運動の仕掛人が他ならぬ秦氏であった。
「作る会」中心人物の藤岡信勝氏は、「1995年6月の南京事件についてのパネルディスカッションで秦氏から『次の企画として従軍慰安婦問題をとりあげることをサジェストされ、その後も秦氏からは折にふれて慰安婦問題の情報をいただいていた」(『教育科学』96年11月号)で明らかにしている。
http://www32.ocn.ne.jp/~modernh/paper44.htm
秦氏らのデマゴーグとしての本性を端的に示すのは、当初は慰安婦の存在を無視し、そのうちに慰安婦らが勇気を奮って名乗り出ると、今度は「戦時売春婦だ」と言い換え、詭弁を弄したことである。
「軍は戦地での強姦事件を防ぐために、公娼業者に開業させていた。業者の指名、戦地への移動、営業状態の監督などはしたが、直接的な強制はしていない。当時は公娼制度は合法であった」が秦氏らのロジックだが、それによると、「ナチスの蛮行も合法であった」ということになる。
秦氏らの詭弁は、「従軍慰安婦は朝日新聞の造語だ」と言葉の問題にすり替え、その存在を否定していることにも現れている。
厩の王子を聖徳太子とするなど過去の現象を後世の言葉で表現することは歴史ではしばしば用いられることで、実体が問題であることは言うまでもない。
吉田氏のような良心に基づく内部告発者を「詐欺師」と罵倒し、被害者である従軍慰安婦の声をことさら無視するのは、その姿勢が、加害者である旧日本軍の側に偏っているからではないか。
それをうかがわせるのが、産経新聞というメディア集団の本音がうかがえる名物コラム『産経沙』だ。3月29日付コラムに、「千葉県在住のK」という82歳の人物(元軍人か)からの手紙が、「慰安所は軍ではなく、業者によって運営されていた」と紹介されていた。
「慰安婦」はただの「売春婦」だったと言いたいらしいが、匿名なのは良心の欠片らしきものが残っているということか。
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秦郁彦は愚かであるばかりか、国を貶める売国奴だと思う。
2007/4/21(土) 午後 0:01 [ ウォッチャー ]
「嘘も百回つけば真実に成る」・・・・君の事だよ。
2007/4/21(土) 午後 6:00
加害者の側か、被害者の側か、という良心の選択だと思う。立証はその後の話でしょう。
2007/4/21(土) 午後 6:29 [ 一読者 ]
この説は、一方的な宣伝臭ばかりだ。客観性がないばかりか論理性に欠ける。毛沢東の時代の洗脳教育テキストのようだ。心ある人は参照をお勧めします。http://hassin.sejp.net/room.html
2007/4/22(日) 午前 0:06 [ mistynippon ]
秦郁彦氏の現地調査はやはりルーズです。韓国語を勉強してから、もう一度調査をするべきでしょう。産経はちょっと、あるある的ですね。
2007/4/22(日) 午前 8:00 [ リピーター ]
mistynippon さん、加瀬英明氏にどうして朴某という韓国人に偽装して、「醜い韓国人」を共著などと捏造したのか聞いてくれませんか。それこそ客観性と論理性に欠けると思いますがね。
2007/4/22(日) 午前 8:18 [ リピーター ]
まだ吉田証言なんか信じてますか・・
頭悪いですね・・
2007/5/22(火) 午後 9:17 [ yamato ]
ちなみに吉田証言を擁護する人は、当時の済州島には緘口令が出されていたという根拠不明な説を出してきています。詐欺師を助けるためにまた嘘をつきますか。証拠出せ証拠。
2007/5/22(火) 午後 9:22 [ yamatoi ]
秦郁彦のいい加減な検証では吉田証言を否定する根拠にはならない。
韓国語も知らないで無謀にも現地調査に行った秦は、通訳にだまされたのかもしれない。
2007/5/22(火) 午後 11:39 [ fur*h*us*66 ]
河先生、はじめまして。
秦郁彦氏の「済州島調査」には非情に大きな疑義を抱かざるを得ません。先生の記事を私のブログのエントリーで紹介、引用させていただきました。
私のエントリーでは、コメントをくださる方と共同で、いままでに、
・『済州島新聞』記事にたいする秦氏の翻訳の決定的な間違い。
・新聞記事は金学順さんが韓国人元慰安婦として初めて勇気ある名乗りをされた以前のものであること。
などを見出しており、なお研究中です。
2007/8/4(土) 午後 11:37 [ Stiffmuscle ]
>しかし、その内容たるや、康大元なる「海女研究家」を通訳に立て、「城山浦の老人クラブ、貝ボタン工場の元組合員など五人の老人と話し合って、吉田証言が虚構らしいことを確認」という程度のことでしかない。
これは本当でしょうか?
話をした人数が少ないようで、調査内容としては一見乏しいという見方が出来なくも無いですが
逆にこうは考えられませんか?
たったこれだけの少人数に話を聞いただけで吉田証言は虚構であると見破られるほどお粗末なものだったと。
しかも、その吉田さん自身が作り話であることを既に認めてますが、その点はスルーですか?(笑)
2007/8/6(月) 午後 8:44 [ momo ]
翻訳の決定的な間違いですか?興味ありますね。
ただし、あくまで肝心なのは、それが日本軍の慰安婦に関する強制連行であるかどうかですから。
「ただ翻訳に間違いがあっただけで、結局証拠には繋がらなかった。」ようなことを「慰安婦強制連行の証拠だ!」
などと短絡的に結論付けて世論を煽らないでないでくださいね。
一応忠告しときます(笑)
2007/8/6(月) 午後 8:55 [ momo ]
Stiffmuscle さん、コメントを有難うございます。
秦郁彦氏の「済州島調査」は、極めて粗雑なものです。
韓国語を解さない資質上の問題、慰安婦が白眼視された社会状況無視、さらに、先に結論ありきの論理構成など学術的な調査とは程遠いものです。
その後の彼の、特定の保守系紙と結びついたデマゴーグ的立場は偶然ではないでしょう。
吉田証言は、貴重な内部告発として再評価に値すると思います。
2007/8/6(月) 午後 9:07
>秦郁彦氏の「済州島調査」は、極めて粗雑なものです。
ああそうですか。
>吉田証言は、貴重な内部告発として再評価に値すると思います。
じゃあなんで矛盾を突付かれた挙句、作り話だなんて白状するんでしょうね(笑)
2007/8/6(月) 午後 9:47 [ momo ]
河先生、コメントありがとうございます。お返事が遅くなって申し訳ありません。
>慰安婦が白眼視された社会状況無視、
わたしもここはもっと理解されてしかるべきだと思います。いや、慰安婦問題に関心をもつ日本人は必ず理解しなければなりません。
あわせて、この「済州新聞」は金学順さんが勇気ある名乗りをされる以前のものであること、日本人元慰安婦が名乗りでない理由をそこに重ねて見出すこと、なども当然欠いてはいけない視点だと思います。
>吉田証言は、貴重な内部告発として再評価に値すると思います。
わたしも同感です。吉田がわざと場所や時期などをずらしたこと、最後まで重荷を背負って謝罪を行動で表し続けたこと、このことが持つ意味が理解できない人は愚かです。
新しい記事をトラックバックさせていただきました。ご覧いただけると光栄です。
2007/8/21(火) 午後 6:04 [ Stiffmuscle ]
>momoさんへ
強制連行の証拠は、元慰安婦の方々の勇気ある証言です。公表されている証言は信憑性が極めて高いと認められたものばかりです。
ただの翻訳と申されますが、秦先生のものは決定的な誤訳です。事実に基づかない論争などに意味はありません。
2007/8/21(火) 午後 6:13 [ Stiffmuscle ]
「慰安婦」は商行為か?
---「慰安婦」問題の真実---
上杉 聰
(日本の戦争責任資料センター事務局長)
Nov 14,1996発信
http://space.geocities.jp/japanwarres/center/library/uesugi01.htm
2007/8/21(火) 午後 6:13 [ goldenkibi ]