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「ものづくり礼賛」が阻んだ半導体産業復活の道
電子立国は、なぜ凋落したか(5)

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2014/8/29 7:00
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■ルネサスは2012年に経営危機

 ルネサス エレクトロニクスは2012年には経営危機に陥り、大規模なリストラを行う。同年12月に、産業革新機構が約1400億円、トヨタ自動車、日産自動車、キヤノン、パナソニックなど8社が約100億円を出資する計画が決まった。産業革新機構は、政府が大部分を出資している投資ファンドである。

 また2013年2月、富士通とパナソニックはシステLSI(大規模集積回路)事業を統合、自社工場を持たないファブレスの新会社を設立すると発表した。さらにパナソニックは同年12月、同社の半導体3拠点をイスラエルのタワーセミコンダクターとの合弁会社に移管すると発表した。

 パナソニックは合弁会社に49%出資し、合弁会社をファウンドリとして運営するという。実現すれば、日本企業が運営に参加するファウンドリ(半導体製造サービスに特化する企業)が、国内で活動することになる。

■2000年代後半には日本企業もファブレスへ傾斜

 離合集散を繰り返しながら、NECエレクトロニクス、ルネサス、それに富士通やパナソニックも、2000年代の半ばごろからは、製造部門を縮小・売却し、ファウンドリへの依存を進める。

 設計と製造の統合にこだわって業績を悪化させ、経営が立ち行かなくなった段階で、製造を切り捨て、「ファウンドリ依存」に走る。もう間に合わず、設計部門も縮小せざるを得ない。2013年には、大量の半導体技術者が転職を余儀なくされている。

 なお大手の離合集散とは別に、以前からファブレスの半導体事業を進めてきたベンチャー企業は、日本にも存在する。例えばメガチップス(1990年設立)、ザインエレクトロニクス(1991年設立)などである。

■ファウンドリになろうとはしなかった

 上記の半導体事業の切り離しにおいて、設計と製造を分けることは、ほとんど行われていない。別の言い方をすると、ファウンドリとして名乗りを上げるところはなかった。日本の半導体メーカーは自他共に、設計は苦手でも製造には強いと言っていた。それなのにファウンドリになろうとするところがない。これが私には不思議である。

 日本では「ものづくり」の礼賛が神話的、信仰的だ。「日本経済を発展させるためには『ものづくり』の力を強化しなければならない」。相変わらず産学官挙げて、こう合唱している。それほど「ものづくり」が好きで得意なら、なぜ日本企業はファウンドリを選ばず、ファブレスへ走るのか。日本企業の言動には整合性がない。

 日本の半導体メーカーが半導体事業の切り離しを模索し始めたのは、1990年代後半である。ファブレスとファウンドリによる設計と製造の分業は、業界内ではビジネスモデルとして既に確立している。各社の製造部門を切り出して統合、大きなファウンドリを立ち上げる。設計部門は社内に残す。こういう選択肢があったはずである(前記のパナソニックの例は、これに近い)。

■日本企業は設計と製造の統合に固執

 「日立製作所と三菱電機が事業統合に合意した2002年の時点で、関係者の間ではファブ(工場)は切り離すという合意があった」。統合交渉に深く関わった政府関係者の証言だという(2014年1月12日付けの日本経済新聞朝刊)。日立と三菱の統合企業はファブレスになり、切り離したファブはファウンドリになる。そして他社からも半導体製造を受託する。そういう構想だった。

 ところが、会社設立の時期になると、新会社の経営陣は方針を転換する。「生産現場を持っていないと『ものづくり』の強さを維持できない」。経営陣はファブの切り離しを見送る。

 経済産業省と業界の一部には、「日の丸ファウンドリ」を立ち上げようとする構想があった。「分業には合理性がある」と早くから主張してきたてまえ、私自身もこの構想に少し関与した。しかし、企業はファウンドリ構想を拒否する。

 製造業経営者にとって工場は「城」だという。城がなくては「一国一城のあるじ」にはなれない。しかしそれなら、工場という「城」を持ち続けながらファウンドリになれば、「一国一城のあるじ」になれたではないか。

 手近なところに使いやすいファウンドリがあれば、安心して半導体ファブレス・ベンチャーを起業できる。ファウンドリは半導体ベンチャーにとって、大切なインフラストラクチャなのだ。日本には、このインフラストラクチャもできなかった。

 日本企業は、設計と製造を統合したまま、半導体事業全体を切り離す。そしてひたすら衰退した。

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ルネサス エレクトロニクス、三菱電機、NECエレクトロニクス、トヨタ自動車、富士通、ファブレス、ルネサス テクノロジ、半導体、日立製作所、パナソニック、NEC

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