コラム「透視図」

山上憶良「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに

2014年3月20日

 ▼山上憶良「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも」。あるいは、藤原兼輔「人の親の心はやみにあらねども子を思ふ道に惑ひぬるかな」。いにしえの世の人が歌にそう詠めば、今の世の人もこう詠んでいる。河野裕子「子がわれかわれが子なのかわからぬまで子を抱き湯に入り子を抱き眠る」。あるいは、小島ゆかり「授かりて胸に抱けばみどりごは憧れよりもしるき匂ひす」。
 ▼いにしえの人も今の人も子を育てる心、子を慈しむ心、子を全てとする心…は変わらない。虐待のニュースが報じられるたびに、そのことをかみしめてきた。反する振る舞いに胸を痛めてきたが、こんな事件まで起きるとは言葉もない。わが子をベビーシッターに預けると、わが子は遺体となって発見された―。埼玉県富士見市での事件である。「朝起きたら、亡くなっていた」。ベビーシッターはそう語り、死体遺棄容疑で逮捕となった。事実がどういうものであるにせよ、痛ましい。
 ▼この事件のベビーシッター依頼は、インターネットを通じてのものだった。ネットには偽りが混じる闇がある。不安を抱きつつもネットのそれを頼みにせざるを得ないとは、何という世の状況か。そもそもこのこともがひとすぎる。木下利玄「待ち居たる九月の末は未だこず早くわが子は死にて世になし」。子を失った悲しみを詠んだ歌だが、そういう悲しみはなくていい。子は社会の財産なのに、国は子を守りきってない。社会を支えていく子を支えていかねば、日本はどうなろう?

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