「エボラ」から生還して
7月19日、シエラレオネの若い父親アルハッサン・ケモカイさんは自分の母をみとり、その顔をなでた。マラリアで死んだと思っていた。ところが10日後、自身に発熱やのどの痛み、下痢の症状が出始める。妻子に「絶対近寄るな」と言って部屋を移って3日後、エボラ出血熱感染を確信し、病院へ向かった。
「3マイル(約4・8キロ)の道のりを歩いて行く私を人々はじっと見つめ、とても悲しかった。何度も便意が襲うため、やぶの小道を選び、決して人と接触しないようにした」。英紙ガーディアン電子版のビデオインタビューに、ケモカイさんは語る。「看護師が天使に見えた」という隔離棟に入院。他の患者が次々と死ぬ中、12日後、奇跡的に治癒した。
「元気そうでも亡くなったり、重症でも助かったりする」と看護師の一人。ケモカイさんは全快しただけでなく、エボラウイルスに対する抗体も獲得しているそうだ。母親を看病した彼のきょうだいも同様という。感染者の致死率は60~90%。「遺伝的要素も研究する必要がある」と専門家は指摘する。 (井手)
=2014/08/29付 西日本新聞夕刊=