来年度の国の予算編成で省庁の概算要求が出そろった。

 総額が初めて100兆円を超えた。今後、今年度の補正予算が検討される可能性をにらんで最大限要求しておく。そんな姿勢がありありだ。

 政権が重視するテーマに各省庁が殺到するのも相変わらず。今回は「地方創生」で顕著だ。

 街の中心部に施設を集めるコンパクトシティーの推進や、都市間・拠点間を結ぶ道路などのネットワーク整備(国土交通省)。中心都市と近隣市町村、集落間の連携促進や地域密着型企業の立ち上げ支援(総務省)。中心市街地の再興を核とするコンパクトシティー事業や地域発ベンチャー企業の創出(経済産業省)……。

 「看板の掛け替え」を含め、似たような施策が乱立する。

 少子高齢化が加速し、東京など大都市圏への人口集中も止まらない中で、地方の街をどう維持し、活性化していくかは大きな課題だ。しかし、国主導で予算をばらまいても効果は乏しく、財政を悪化させるだけだ。

 発想を根本的に転換することが必要ではないか。

 例えば、コンパクトシティーの整備と言っても、①住まいの移転と集約②地場産業の再編・振興③医療や福祉、教育施設の再配置④道路や上下水道などのインフラの更新・縮小と、あらゆる分野にまたがる。自治体が住民と徹底的に議論し、納得を得ながら進めていくしかない、息の長い取り組みである。

 国が補助金・交付金のメニューをてんこ盛りに並べ、そこから自治体が選ぶ仕組みでは、「お金をたくさんもらえる施策」へと傾き、短期志向になるのも無理はない。支給には省庁が細かい条件をつけており、自治体が求める支援とズレが生じがちでもある。

 国と地方が財政の厳しさを共有し、「ハード(施設)よりもソフト対策」の基本を確認したうえで、まずは各自治体が対策を突き詰める。国は、自由に使える予算でそれを後押しする。そんな仕組みに切り替えていくべきではないか。

 国にも「縦割り」への反省はあるようだ。自治体などに公募して全国から地域活性化への取り組みを30余り選び、省庁横断のチームで支援を始めた。

 せっかくの試みが、補助金申請手続きのわずらわしさを減らすのにとどまっては意味がない。国と地方の関係を見直す機会にできるかどうか。

 「地方創生」は国のあり方も問うことを自覚し、予算編成や制度改正を進めてほしい。