ウクライナ情勢:親露派 港湾都市マリウポリ「ほぼ包囲」

毎日新聞 2014年08月29日 20時41分

 【モスクワ真野森作】ウクライナ東部の親露派武装勢力と政府軍との戦闘で、ドネツク州南部の戦況が急変している。6月下旬以降、政府軍が支配してきた地域で、親露派勢力の攻勢で複数の町が陥落。侵入したロシア軍部隊と一体とみられる親露派は29日、要衝の港湾都市マリウポリを「ほぼ包囲した」と発表した。政府軍は防衛戦の準備を進めており、事実上、ウクライナとロシアの両軍による本格戦闘に発展する可能性がある。

 マリウポリは人口約45万人で、ポロシェンコ政権は6月下旬に「暫定州都」に定めた。タス通信によると、親露派勢力は29日、マウリポリの西に位置する複数の町を「支配下に置いた」と発表。東側のノボアゾフスクは28日に占拠しており、「近く包囲が完成する」と宣言した。今後、政府側支配下の都市の奪還を続ける方針という。

 一方、マリウポリの政府軍は戦車による侵攻に備えて地雷埋設を実施した。ロシア国境から数十キロと近いドネツク州イロワイスク、ルガンスク州の州都ルガンスクなどでも戦闘が激化している模様だ。

 29日、プーチン露大統領が親露派へ「包囲されたウクライナ軍兵士を脱出させるための人道回廊の開設」を声明で求めたのに対し、親露派指導者のザハルチェンコ氏は「武装解除を条件に応じる用意がある」と表明。ウクライナ国家安全保障・国防会議は「露政府がテロリストを指揮していることの証明だ」と一蹴した。同会議は28日の緊急会合で、今秋の徴兵実施など安保強化策を決定している。

 北大西洋条約機構(NATO)司令部は、ウクライナ領で少なくともロシア兵1000人が最新鋭の兵器を用いて展開しているとみており、ウクライナの親露派勢力も「我々の義勇兵にはロシアの現役軍人もいる」と認めている。

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