0013
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いつもと違う天井。
あれ?ここ何処だ?
起き上がり、周りを見渡して、漸くどこにいるのか認識した。
そう言えば、昨日お店を借りたんだった。
で、そこに寝泊まりすることになったんだった。
さて、飯を食いに宿り木まで向かうか。
店を出ると鍵をしっかりと閉めて、宿り木に向かった。
まあ、盗まれて困る物は置いてないけど。
重要な荷物は鞄の中に入れてある。
そして、肌身離さず持っているので、この鞄を取られない限り困ることは無い。
宿に着き食堂に入る。
「あ、リョウさん。来てくれたんですね」
「そういう約束だろ」
「確かに約束しましたけど、来てくれるか分からなかったので」
「まあ、絶対に来れるとは言えないな。けど、なるべく来るようにはするよ」
「はい、分かりました。では、ちょっと待って下さい」
暫く待って、料理が来るのを待った。
運ばれてきた料理は相変わらず美味しそうだった。
そして、それは間違っていない。
ここの料理を食べてから、リアルで食べてる料理が物足りなく感じるようになった。
「ごちそう様。相変わらず美味しかったよ」
「ふふ、そう言われると嬉しいです」
食事が済んだので料金を払う。
「じゃあ。次は昼か夜に来るよ」
「はい。あの、リョウさん、ちょっといいですか?」
「ん、何?」
「後で、リョウさんのお店に行ってもいいですか?」
「別にいいけど、確実に居るとは言えないぞ」
「その時は、また後で行きます」
「分かった。待ってるよ」
宿を出たが、店には戻らなかった。
なぜなら、ある目的があったからだ。
それは、木工店で看板を作って貰おうと思っていた。
木工店は大通り沿いに沿った先にあった。
時刻は8時半を少し回った所だったが、木工店はやっていた。
木工店に入ると2つの看板を頼んだ。
1つはお店正面に取り付ける看板。
もう一つは立て看板だ。
看板に書いてもらうのはお店の名前だ。
お店の名前は寝る時考えて3つ候補があった。
1つ目は、ヴァルハラ。意味は神々の庭園だったかな?
2つ目は、ラグナロク。世界の終末、と言う意味だったと思う。
3つ目は、ユグドラシル。世界樹、の別の言い方だったはず。
うろ覚えだから間違っているかもしれない。
この3つの名前からどれにするか、さんざん迷った挙句、選んだのはこれだ。
ユグドラシル。
選んだ理由は、俺がお店で売る商品は薬がメインになるだろう。
世界樹の葉は、あらゆる病気を治し、死者さえも復活するという逸話がある。
つまり、世界樹の葉は万病の薬になる。
薬を売る俺にはいいんじゃないか、と思った。
それでユグドラシルと言う名前にした。
お店に取り付ける看板を選びそれに名前を書いてもらう。
立て看板も同様。
両方出来上がったのは30分程だった。
それとは別に小さな札板に、表に営業中、裏には休業中と書いてもらった。
出来上がった看板を手に(鞄には入らないため)店に戻った。
まずはお店正面用の看板を取り付けるため、店の中から椅子を持ち出してきた。
その椅子ののぼり、看板を取り付けた。
取り付け方は簡単だった。
看板を載せれるようにできており、そこにはめ込んだだけだ。
そして、立て看板を置き、準備は整った。
後は商品を揃えるだけだが、まだ、マナポーションが出来ていない。
ポーションだけで開店してもいいが、マナポーションもあってからのが良いだろう。
入り口ドアの外側に休業中の向きにして、札を張り付けた。
店の中に入り、2階に上がった。
2階に上がり居住部屋で器材を広げると、マナポーションの作成に取り掛かった。
まずは品質の悪いF-で作成してみる。
ポーションを作る工程でやる。
魔力草を切り刻み、乳鉢に入れて水を加えてからすり潰す。
このすり潰しをしている時、いつもと様子が違った。
薬草の場合は緑色に、魔力草の場合は青色になるのが常だったのに、なぜかこの時は黒色になってしまった。
おかしいとは思ったが、最後まで遣り通した。
そして、容器に入れて鑑定した。
失敗薬 品質 ― 重量 1
失敗した薬。使うとダメージを負う。
げっ、なんだこれは。
こんな物、初めて出来たぞ。
こんなのが出来た原因は、品質が悪いせいか?それとも俺の腕が足りないのか?もしくはその両方か。
以前マナポーションを作ったのはE-の魔力草だったな。
そのE-の魔力草で出来たマナポーションは品質が1つ落ちたF+だった。
F-のこれはそれより3ランク下だ。
E-でF+の品という事は、F-ではもっと下、失敗という事になったんだろう。
という事はF-で作ると失敗って事か?
いや、絶対に失敗とは限らないはず。
残りのF-でやってみよう。
残っていた17個のF-でマナポーションを作り続けた。
結果、マナポーションが出来たのはわずか3個。しかも品質はF-と言う品質最低の品だった。
後は全部失敗薬となった。
くう、これは俺の腕がもっと良ければもっと成功していたはず!
スキルのレベルをもっと上げないと。
後はFの品質だ。
予想だとF-の品質のマナポーションになるはず。
マナポーションを作ってみる。
魔力草を切り刻み乳鉢に入れる。
水を加えてすり潰す。
すり潰すが、色は黒くならず水色のまま。
その後は水を入れて掻き混ぜる。
出来上がった物を容器に入れて完成。
鑑定結果はF-。
予想通りの品になった。これで一安心だ。
残りの魔力草を使ってマナポーション作成に入る。
《生産の心得のレベルが上がりました!》
《精密操作のレベルが上がりました!》
これで少しは良くなるかな?
全ての魔力草を使いマナポーションが出来上がった。
出来上がったマナポーションはF-の25個でFが3個。
F-の魔力草も成功していれば、後15個商品にできたのだが、失敗してしまった物は仕方がない。
出来上がった品物は鞄の中に入れた。
その時ある事をするのを忘れ、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに着くとティアの元に向かった。
「ティアさん、ちょっと聞きたいことがあるんですが」
「あら、リョウさん。なんでしょう?」
「昨日、あの後お店を借りることが出来たのですが」
「そうなんですか?おめでとうございます」
「ありがとうございます。で、従業員を雇いたいんですが、何処で募集を掛ければいいですか?」
「それでしたら、ここで出来ますよ」
「え?ここで?」
「はい、そうです。ここは一般の肩に職業案内をしています。ですので従業員募集の広告なら任せてください」
「それじゃあ、お願いします」
「どんな方を募集したんですか?」
「そうですね。月給5000ほどで勤務日数はほぼ毎日働ける方ですね」
「休日は無しですか?」
「そこは相談次第で」
「成程。月給5000Gで勤務に数は毎日。休日は相談次第ですね」
「はい、そうです」
「では、この内容で求人募集を行います」
「お願いします」
その後は冒険者ギルドを出て店に向かう。
すると、店の前にアリーがいた。
「よう、アリー」
「あ、リョウさん」
「待ってたのかい?」
「いえ、そうじゃなくって、今来たところなんです」
「じゃあ、よかった。出掛けてた所だから、2度足を踏ませるところだったよ」
店の鍵を開けてドアに掛けてある板を営業中にしてを開ける。
「どうぞ、狭い店だけどね」
「お邪魔しま~す」
アリーは店の中に入ると、中をキョロキョロと見ていた。
「狭いだろ?」
「いえ、そんなことは……」
「良いんだよ、正直に言ってくれて。俺だって狭いと思っているんだから」
「そうなんですか?確かにちょっと狭いかな?って感じますけど」
「狭いけど、これくらいで十分さ。商品だってそんなに揃えられないんだから」
「商品は何したんですか?」
「ポーションとマナポーションだ」
「お値段はいくらですか?」
「ポーションは95Gと150Gと300Gで、マナポーションは200Gと350Gだ」
「同じ品で値段が違うのは何でですか?」
「品質の違いだよ。良い品の方が高めにつけてあるんだ」
「成程。売れるといいですね」
「まあな」
「お仕事がありますのでこれで帰りますね」
「ああ、分かった。買わなくてもいいからいつでも来ていいからな」
「はい、また伺いますね」
アリーが出ていき時刻を見ると13時を少し過ぎていた。
俺がどっかで飯を食べてきたと勘違いしたかな?
鞄の中にあった最後の弁当を取り出し、昼食を済ませる。
そのまま、客が来るのを待つが一向に来ない。
17時半になり、これはもう来ないかな。
そう思ってカウンターから離れようとした時、ドアが開いた。
カランカランと言う音と共に1人の男性が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
男性は店の中を見回す。
そして見終わると俺の方を向いた。
「へえ、プレイヤーがやってるだ。ここって、何の店?」
「一応、薬屋ですね」
「薬屋?どんな薬を扱ってるの?」
「今あるのはポーションとマナポーションの2種類ですね」
「見せてもらってもいい?」
「はい、勿論です」
鞄に仕舞い込んであるポーション3個とマナポーション2個を取り出す。
「それだけ?」
「言えまだありますが、取り敢えずこの5個を」
「ふーん」
男性はポーションを1つ手にするとじっと見ていた。
男性が手にしたポーションはE品質の品だ。
「NPCの店で売っているポーションと変わらないね。これいくら?」
「そのポーションでしたら95Gです」
「このポーションだったらって、他のは違うのか?」
「お客様は鑑定のスキルはお持ちですか?」
「勿論持っているよ」
「でしたら、鑑定してみていただければ分かるかと」
「なら、鑑定してみるか」
残りのポーションを持ってじっと見ている。
「品質E+で12%回復か。良い品だな。もう1つは……、えっ!?D-!?14%も回復すんのか!!」
D-の品を見て驚いていた。
まあ、確かに驚くだろうな。
現段階でD-のポーションは出回っていない。E+の品が良い所だ。
「お値段はE+が150GでD-が300Gです。ただ、D-の品は、それ一点のみになっています」
「一点だけ!?もっとないのか?」
「残念ながら、偶々出来た品でして……。私の腕が上がればもっとできるとは思いますが」
「そっか。それなら仕方ない。このD-をくれ。あとE+も買う」
「ありがとうございます。E+はどれほどで?」
「いくつある?」
「全部で52個です」
「じゃあ、それ全部」
「ありがとうございます。……全部で8100Gになります」
「おっと、かなりすんな」
「かなりの量ですので」
「仕方なないか。他のプレイヤーだともっとするからな。ほらよ」
他のプレイヤーが売っているE+だと200Gだったり、それ以上の値段が付いている。
それと比べるとかなり安いだろう。
しかし、それでも十分に元は取れる。
「確かに8100G受け取りました」
53個のポーションを男性は仕舞い込んだ。
「あんた、名前はなんていうんだい?」
「私ですか?リョウと言います」
「俺はロキ。これからはここで買わせてもらうよ」
「そう言って貰えるとうれしいですね」
「それと、その口調、堅苦しいからやめてくれない?」
「しかし、お客様に対して失礼かと」
「良いんだよ。プレイヤー同士だろ?気楽に話そうぜ」
「分かった。これでいいか」
「おう。その調子で頼むぜ。また来るぜ」
「ちょっと待て」
「なんだ?」
「ポーションなどを入れている容器で空の奴あるか?」
「ああ、あれか。使い終わったら地面に叩きつけて無いぜ」
「次からは持って来い。1個に付き5Gで買い取るから」
「大した金額じゃねえな」
「金にならないよりはましだろ」
「確かに。他に何かあるか?」
「いや、ない」
「そっか。じゃあまたな」
ロキは店を出て行った。
まさか初日からこんなに売れるとは。
ポーションは後Eが5個しか残っていない。
後で薬草を採って来ないとな。
時刻は18時近く。
店を出て休業中の札にして宿り木に向かった。
「あ、リョウさん。いらっしゃい。ちょっと待っててくださいね」
料理が運ばれてくるの大人しく待つ。
「お待ちどうさま」
運ばれてきた料理を大人しく食す。
食事が済むとアリーが声を掛けてきた。
「どうだった、お店の方。お客さんは来た?」
「ああ、来たよ」
「何人来たの?」
「1人」
「そっか。まあ、初日だもんね。そんなもんか。で、商品は売れたの?」
「売れたよ」
「そっか―。良かったね」
「ああ、良かったよ」
「いくら売れたの?」
「8100G」
そう言うとアリーは固まった。
「……え?」
「だから、8100Gだって」
「ウソ!?なんでそんなに!?」
「大量に買っていったんだよ」
「大量にって、1人だけなんでしょ?なんでそんなに売れるの!?」
「品質が良い上に値段もお手頃だったからさ」
「それで、そんなに売れるの?」
「重要な事だよ。品質が良くっても値段が高ければ買って行かない。値段が安くても品質が悪ければ買って行かない。そんなものだよ」
「そういう法則だと、品質が良くって値段が安ければ売れるってこと?」
「そういう事。現に大量に売れたし」
「リョウさんって、商才がある?」
「自分で材料を仕入れて作っているから安く出来るのであって、どっかから買い付けてたらもっと高くなってたよ」
「成程」
「商品が品薄になったからこの後、材料を取って来ないといけないから。全部自分でやるのと買い付けるのとではどっちが良いんだか」
「でも、その御蔭で良い品を安く提供できるんでしょ?そのことが広まればもっとお客さんが入るよ」
「そん時は売る数を制限しないといけないかな。1人5個まで、とか」
「そうなったら大変そうだね」
「だな。さて、もう行かないとな」
「そうだね。また来てね」
「ああ」
お金を支払ったら、街の外に出た。
品薄になったポーションをどうにかするために薬草の採取をするためだ。
時刻はまだ19時になっていない。
22時半までにどれくらい取れるかな。
取れるだけ取ろう。
薬草を探し出しては慎重に採取する。
少しでも傷つければ、品質が悪くなるからだ。
それでも、何度も繰り返せばコツは掴む。
素早く、丁寧に薬草を手に入れる。
《採取のレベルが上がりました!》
おし、上がったか。でも1つ上がっただけじゃ効果は出ないだろうな。
モンスターと戦わずに薬草を採り続けた。
22時半までに手に入れた薬草の数は223個。
1つ当たりの重量は0.1なので22.3の重量にしかならない。
量的にはまだ入るが、ここまでにしよう。
店に戻り、布団を引いて横になってログアウトした。
リョウ
種族 人間 性別 男 Lv5 (+1)
職業 サモナー J.Lv4
筋力 18 (+1)
耐久 14
敏捷 14
器用 15
知力 24 (+1)
精神 20
スキルポイント 8
スキル
杖 5 短剣 3 回避 3
召喚魔法 5 火魔法 5 付与魔法 3
錬金術 3 採取 3 (+1) 調合 6 解体 3 鑑定 7 (+1)
生産の心得 4 (+1) 精密操作 4 (+1) MP回復 1
+注意+
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