0006
ログインする。時刻は6時58分。
まずは朝食を取ろう。
部屋を出て、食堂に行く。
「おはようございます、リョウさん」
食堂に入るとアリーが声をかけてきた。
「おはよう、アリー」
早い時間のためか食堂には俺とアリー以外誰もいなかった。
「お食事ですか?」
「ああ、お願いする」
「では席についてお待ちください」
アリーは厨房の中へ入っていった。
席は適当に座り待つ。
時間にして5分くらいすると、アリーが料理を持ってきた。
「おまたせしました」
「ありがとう」
料理はスクランブルエッグにコーンポタージュにパン。
それをゆっくりと食べた。
「今日はどうなさるんですか?」
「今日か?今日は、ポーション作成のクエストがまだ残ってるからそれをやるな」
それを伝えるとアリーは驚いていた。
「ポーションを作れるんですか!?」
「ああ、作れるけど。それが何か?」
「ポーションが作れる人って、この町だと少ないんですよ。だから、珍しいな~って」
「そうなのか?けど、冒険者ギルドだとクエストがあったからそれなりにいるんじゃないか?」
「確かに、最近冒険者が増えたみたいだから、その中には作れる人はいるかもしれないけど、それでもやっぱり作れる人は少ないと思う」
会話をしながら、掲示板の中から不遇スキルと言うのがあったので、それをチェックすると調合がその中の1つに入っていた。
「まあ、確かに、わざわざポーションを作ろうってやつは少ないかもな。作るくらいなら、買った方が早いしな。そのせいか、調合は不遇スキルに入っているみたいだ」
「でしょ?だから作り手になろうという人は少ないの」
「調合を持っている俺から言わせてもらうと、そこまで不遇スキルだとは思えないんだが」
クエストのポーション作成を受ければ結構いい稼ぎになるからな。
「リョウさんは普通の人と感覚が違うのかも」
俺を物珍しそうな目付きで見てきた。
「その言い方だと俺は変人に聞こえるぞ」
そう言うと、アリーは慌てた。
「ごめんなさい。そういうつもりで言ったわけじゃないんです」
「分かってるさ。だた、気を付けた方がいいぞ。人によってはそう聞こえるからな」
「はい。気を付けます」
アリーはしょんぼりと項垂れてしまった。
「分かってくれればそれでいいさ」
反省しているようなのでこれ以上言うつもりは無くなった。
「……あの~、ポーションを作るんですね?」
「ああ、そうだ」
「見学してもいいですか?」
「別に構わないが、たいして面白くないぞ?」
「良いんです。リョウさんがどんなことをしてるのか知りたいだけなので」
「それなら手の空いた時に俺の部屋においで、多分昼過ぎまでは掛かると思うから」
そう言うと、アリーは嬉しそうだった。
「はい、後で伺います!」
そこへ食堂に新たなお客が来た。
アリーはそのお客の所へ接客しに行った。
暫くして飯を食べ終わったので、部屋に戻りポーション作成に取り掛かった。
ポーション作成をしてどれくらいたっただろう、ドアがノックされた。
「誰?」
「私です。アリーです」
「ちょっと待っててくれ」
ポーションを作っている最中だったため手が離せなかったのだ。
2・3分してポーションが出来たのでドアを開ける。
「ごめん、待たせた」
「いえ、平気です」
「で、何の用?」
「手が空いたので、ポーションを作っている所を見学させてもらおうかなって」
「ああ、食堂で話した奴か。良いよ、入って」
ドアの前から体を退けて、アリーが中に入れるようにした。
「お邪魔しま~す」
アリーは、恐る恐ると言った感じで部屋の中に入ってきた。
「あ、これですね。作ったポーションは?」
アリーは俺が先程作ったポーションを手にした。
「そうだけど、矢鱈滅多に触れないでくれ」
「ご、ごめんなさい」
アリーは謝るとポーションを元の場所に戻した。
そのポーションを手に取り、鞄の中に仕舞い込んだ。
「見る分には問題ないけど、触ったりするのはやめてほしい」
ここはキチンと釘を刺す。
じゃないと触れられたせいで品質を落としたり、物が駄目になる恐れがある。
それにポーションを入れている容器はガラスだ。割って怪我をされたら責任が取れない。
「はい、ごめんなさい」
アリーは怒られたと思ったのかしょんぼりしている。
「怒ってるわけじゃない。下手に触って怪我をするかもしれないから言ったんだ。触らない事を約束してくれれば、好きなだけ見て行っていいから」
「はい、触りません。見てるだけにします」
「じゃあ、その椅子にでも座って見てて」
備え付けてある椅子を指し示した。
「はい」
アリーは、その椅子に座った。
一方の俺は床に広げてある器材の所で座り込んだ。
そこから俺はポーションを作り始めた。
それをアリーは黙って見ている。
そして、ポーションを1つ作り終わった。
「これが俺のポーションの作り方だ」
出来上がったポーションを見せつけて言った。
「へえー、ポーションってそうやって作るんですね」
「勘違いしないで欲しい。これは俺のオリジナルの作り方だ。だから、他の人とは若干違うと思う」
「どう、違うんですか?」
首を傾げて尋ねてきた。
其の様子は大変可愛らしかった。
「あー、俺が教わった作り方だと、薬草を手で千切って、すり潰す時には水を入れないで、最後に水を入れて掻き混ぜる、という方法だな」
「じゃあ、さっきの作り方は秘伝なんですね?」
「秘伝って程じゃないけど、あまり人には教えたくないな。苦労して見つけた作り方だから」
「分かりました。誰にも言いません」
アリーは両手で口を塞いだ。
それを見て、子供だな、と思った。
「ああ、そうして貰えると助かる」
「じゃあ、2人だけの秘密ですね」
そう言うと、アリーはにっこりと笑う。
「ああ、そうだな」
アリーは立ち上がった。
「ポーションの作り方は見せてもらいましたから、ここで失礼しますね。あまり長いするとお邪魔ですから」
「たいして面白くなかっただろ?」
「いいえ、そんなことはありません。大変面白かったですよ」
アリーは部屋から出てドアに手をかけた。
「まだ、作業は続くんですよね?頑張ってください」
「ああ」
俺が返事をするとドアを閉められた。
「さて、もう一踏ん張りしますか」
気合を入れてポーション作成を再開した。
ポーション作成は昼になっても終わらず、一旦昼食を取ってから再び作業を開始した。
全部作り終わった時には14時を少し回っていた。
出来上がった品の品質はE-が15個、Eが65個であった。
ポーションが全部出来上がったので冒険者ギルドに向かい、ポーションを受け渡した。
その報酬は、3850Gになった。
これで合計金額は8000Gを超えた。
このお金で少しは良い装備が買えるはず。
そう思い武器屋に向かった。
武器屋に入ると色々な武器が置いてある。
昨日はミスリルナイフを買ったが、今日は杖を買う。
杖の所を見ると3種類あった。
ルーンスタッフ、スペルワンダー、ミスリルロッドの3種類だ。
鑑定する
ルーンスタッフ 品質 E- 重量 5 種類 杖
魔力の籠った杖。ATK+9。M.ATK+13+11%。
スペルワンダー 品質 F+ 重量 5 種類 杖
呪文が刻まれた杖。ATK+14。M.ATK+19+19%。
ミスリルロッド 品質 E- 重量 6 種類 杖
魔法金属で出来ている杖。ATK+21。M.ATK+28+28%。
ミスリルロッドが一番強いな。
値段は、15500G!?
た、高い。
今の手持ちじゃ買えない。どうするか。
今の所持金は8500Gを少し超えたところだ。
ミスリルロッドを買うなら後7000G近く必要だ。
スペルワンダーの値段は7500Gだから、こっちなら買えるな。
因みにルーンスタッフは1250Gだ。
さて、どうするか。
お金を貯めてミスリルロッドを買うか、それともすぐに買えるスペルワンダーにするか。
迷うな。
スペルワンダーを買うと、ミスリルロッドを買うのが遠のく。
かと言ってミスリルロッドを買うまで現在の装備だと貧弱すぎるし。
現在だと討伐クエストを受けるより、ポーション作成の方が稼げるんだよな。
そう考えると、スペルワンダーを買っても上の討伐クエストを受けられるわけじゃないから、それほど影響はないか。
ならば、ポーション作成で金を稼いで、それからミスリルロッドを買った方がいいか。
うん、そうしよう。
そうと決まったら、ポーション作成のクエストを受けるか。
……なんか冒険者らしい生活してないな。
まあ、いいや。
冒険者ギルドに行き、ポーション作成80個を受けた。
そして宿に戻り、ポーション作成に入った。
《短剣のレベルが上がりました!》
《付与魔法のレベルが上がりました!》
《調合のレベルが上がりました!》
《鑑定のレベルが上がりました!》
ポーションを80個作り終わるまでにこの4つのインフォメーションが鳴った。
付与魔法のレベルが上がっても補正数値は変わらなかったが、調合スキルが上がったためE-の数が減り、E+が極稀に出来る様になった。
出来上がった品質は、E-が8個、Eが69個、E+が3個だった。
E+の鑑定結果はこれだ。
ポーション 品質 E+ 重量 1
回復薬。HPが12%回復する。
E品質と比べて2%も回復量が多い。
E品質から下は、1段階に1%しか違いが無かったのに、これは結構の差だ。
80個のポーションが出来上がったのは23時を過ぎていた。
ログアウトしたいところだったが、早くお金が欲しいので冒険者ギルドに向かった。
カウンターで受付嬢にクエストカードとポーションを渡し、報酬を得る。
その金額はなんと4010Gだった。
あれ?どういう計算になったんだ?
えーと、今までの報酬からいくとE-は40Gで、Eは50G。
これで、3770Gになるわけだ。
今回の報酬の4010Gから3770Gを引くと、240G。
それを3で割ると、E+は1個80Gになるのか。
いきなり結構上がったな。
この様子だとD-になったら100G超えるな。
今は取り敢えずE+を目指してポーションを作ろう。
ミスリルロッドを買うにはあと3000Gほど必要か。
E品質のポーションだと後60個あれば足りるな。
けど、それだとギリギリになりそうだからやっぱり80個を受けるか。
ポーション作成80個を受けた。
そして、部屋に戻るとベッドに横たわりログアウトした。
翌日、ログインすると朝食を取ってからポーション作成を始めた。
1個当たりの作成時間が少しだけ短くなり5分ほどで出来る様になった。
けど、さすがに昼までにはできず昼食休憩を取り、それから再開した。
全部が出来たのは14時を少し過ぎたところで出来上がった。
出来上がった品質は、E-が4個、Eが71個、E+が5個出来た。
それを早速冒険者ギルドに持っていき報酬を得る。
報酬金額は、4110Gになった。
これでミスリルロッドを買うことが出来る。
そのまま武器屋により、ミスリルロッドを購入した。
そして今まで使っていたロッドを売り払う。
さて、ミスリルロッドにした効果を見てみるか。
リンを連れて町の外に出る。
まずはスライムを相手にしよう。
スライムを探す。
近くにいたが、スライムは2匹いた。
鑑定した結果どちらもレベル1だった。
少し離れた場所まで来ると、まずは火魔法のファイヤーボールを放ってみる事にした。
狙いを定めて、外さないようにする。
「ファイヤーボール」
そう唱えると20㎝くらいの火の玉が飛んで行った。
あれ?少し大きくなった?
火の玉はスライムに命中すると、スライムのHPを全て削り取った。
スライムを1撃で葬ったのだ。
残ったスライムがこちらに向かってきた。
すぐ近くまで来たが、リンが迎撃した。
リンとスライムが近すぎたためファイヤーボールを放つことが出来ない。
仕方なく、ミスリルロッドを構えてスライムを打つ。
すると、今までは1撃では1割もHPを減らす事が出来なかったのに、今の1撃で2割近くまで減らすことが出来た。
そのままリンと交互に攻撃して俺の4撃目でスライムを倒すことが出来た。
おお、今までと比べて大分短縮できたな。
この様子だと他のモンスターも同じかな。
スライム跡には運よくアイテムを残していた。それも2匹ともだ。
スライムの欠片を2個手にしてあることを思い出した。
そういえば、錬金術の合成で素材アイテムを使って上位の素材アイテムにできるとあったな。
スライムの欠片は素材アイテムじゃないが出来るかな?
物は試しだ。やってみよう。
スライムの欠片2個を手に持ち、錬金術の合成と念じた。
すると、スライムの欠片が光り1つになった。
そして、光りが治まると丸い塊が出来た。
鑑定してみる。
スライムの核 品質 F+ 重量 1
スライムの核。特に使い道は無い。
これも使い道が無いのかよ!
まあいい、まあいいさ。
錬金術の合成がスライムの欠片に使えた、という事が重要だ。
これで買い取りは少しは良くなるか?
他のドロップアイテムでも試してみよう。
その後、野ウサギ、バットと戦った。
戦ってみるとどちらもファイヤーボールの1撃で倒せた。
ミスリルロッドの効果はかなりの物だという事が分かった。
ドロップアイテムの合成した結果は、ウサギの毛皮と蝙蝠の牙には効果があった。
ウサギの毛皮(小)はウサギの毛皮(大)に、蝙蝠の牙は蝙蝠の大牙になった。
蝙蝠の翼には合成が失敗したのか、消滅してしまった。
その後も何度も繰り返すが全部消滅してしまう。
続けて5回消滅した時、蝙蝠の翼は無理なんだと思った。
蝙蝠の翼10個を無駄にしてしまった。
まあ、これくらいならそれほど気にならないからいいけど。
一旦町に戻り、冒険者ギルドでアイテムを買い取ってもらった。
スライムの核を2個、ウサギの毛皮(大)が1個、蝙蝠の大牙が4個だ。
合計金額は154G。
内訳はスライムの核が12G、ウサギの毛皮(大)が30G、蝙蝠の大牙が25Gだった。
スライムと野ウサギ、バットの討伐クエストを受けた。
討伐数はそれぞれ最大の30にした。
戦闘が楽になったから討伐も簡単に終わるはず。
そう思って、街の外に出てモンスターを狩った。
結果から言うと、以前ほど苦労することは無かった。
しかし、各30匹づつ討伐するのにはかなりの時間が掛かってしまい、終わった時には20時を過ぎ来ていた。
町に戻り、冒険者ギルドでクエストカードを出して、報酬を貰った。
報酬金額は1170G。そこにアイテムを買い取ってもらう。
スライムの欠片が8個、ウサギの毛皮(大)が7個、ウサギの肉が3個、蝙蝠の大牙が9個、蝙蝠の翼が21個。
買い取り金額は849Gになった。
合わせると2019G。
やはり、ポーション作成の方が稼げるな。
次はもう少し上位のモンスターの討伐でも受けてみるか。
その日はこれでお終いにするため宿に戻ってベッドに横たわりログアウトした。
リョウ
種族 人間 性別 男 Lv3
職業 サモナー J.Lv2
筋力 16
耐久 14
敏捷 14
器用 15
知力 21
精神 20
スキルポイント 2
スキル
杖 3 短剣 2 (+1) 回避 2
召喚魔法 3 火魔法 3 付与魔法 2 (+1)
錬金術 1 採取 1 調合 4 (+1) 解体 3 鑑定 5 (+1)
+注意+
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