挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
旧・サモナーは最弱?いいえ、チートです 作者:佐藤辰也

0005

 宿に戻ろうとしたら、途中で女性が絡まれいるのを発見した。
「嫌!やめてください」
「いいじゃねぇかよ。俺達と付き合えよ」
「そうだぜ。俺達と楽しい事しようぜ」
 PC同士のいざこざかと思い、GMコールする準備をしながら鑑定を行なう。
 表示された文字は緑色だった。
 つまりNPC同士のいざこざだった。
 こんな事あるんだな〜と見ていた。
 すると絡まれている女性に見覚えがあった。
 其れは、俺が泊まっている宿で働いている少女だった。
 絡まれているだけあって、かなりの美少女で、年の頃は15・6歳と言った所。
 このまま放っておくのは不味いよな。
 そんな事を思っているとインフォメーションが鳴った。

 《緊急クエスト!絡まれている少女を助けよう。クエストを受けますか?Yes/No》

 ここは助けるべきだな。Yes、と。
 さあ、助けるぞ。
「おい!嫌がっているだろ。やめろ!」
 俺は、男性2人と少女の間に割って入った。
「なんだ、てめえは?関係ねぇ奴は引っ込んでろ!」
「そうだぜ。じゃないと痛い目に合うぜ」
 そう言うと指をポキポキ鳴らした。
 威嚇のつもりなのだろうが、全然怖く無かった。
 理由としては2つ上げられる。
 1つ目は、これがゲームの世界だという事。
 じゃなければモンスターなんかと戦えるわけがない。
 もう1つは、彼らが俺より弱い、格下だという事だ。
 彼等の鑑定の結果はレベルが1の盗賊だった。
 俺は今レベル3なわけだから1対1ならば負ける事は無いはずだ。
 そんな彼等は俺に対し威嚇行動を取ったが、それ以上の事はしてこなかった。
 これはチャンスだ。何をするにつれても先手必勝だからだ。
 手にしていたロッドを一瞬で構え、指を鳴らしていた男の鳩尾に切っ先を突き刺した。
 ロッドは深く刺さり、男は「ぐえ」と鳴いて崩れ落ちた。
「な、何しやがる。てめぇ!」
 手にしているロッドをもう1人の男に向けた。
「見ての通り攻撃したんだよ。言っても聞きそうにないからな。お前も同じ目に合うか?」
 そう言うと、男は怯んだ。
「ク、クソ。今日の所は引いてやる。けどな、今度はこうはいかねえぞ!」
 男は、崩れ落ちた仲間を抱き抱えてその場を去っていた。
「完全に負け犬の遠吠えだな。さてっと、大丈夫だった?」
 俺は少女に向き合い尋ねた。
「は、はい。大丈夫です。助かりました」
「そう、ならよかった」
 少女の無事を確認できてよかった。

 《緊急クエストをクリアしました。ボーナス報酬スキルポイントを2つ手に入れました》

 お、緊急クエストをクリアするとスキルポイントが手に入るのか。これは良い情報だ。
「君はこの後どこに行くところだったんだ?」
「はい、この後は家に帰るところだったんです。あ、家は宿屋を経営しているんです。『宿り木』と言う名の」
「へえ、という事は君は『宿り木』の娘さん?」
「はい、そうです。どこかでお会いしましたか?」
「あー、覚えてないか。ま、それもそのはずか。碌に顔も合わせたこともないもんな。俺はそこに泊まってるんだよ」
 笑って答えると、少女は慌てた。
「お、お客様だったんですか!?すみません、気が付かなくって」
「いいって、いいって」
 慌ててお辞儀をする少女を止めた。
「助けて貰ったばかりか、お客様の御顔を覚えていないなんて……。働く者として失格です」
 少女は落ち込んでしまったようだ。
「あー、先も言ったように、俺の事を覚えていなくても仕方がないよ。なんせ、俺とちゃんと向き合ったのは、これが初めてなんだから」
「そう、なんですか?」
「そうなんだよ。だから落ち込む必要はないよ」
「慰めてくださって、ありがとうございます。優しいんですね」
「そんなことは無いよ」
 照れくさくて思わずそっぽを向いてしまった。
 そんな様子が可笑しかったのか、少女はクスッと笑った。
 その笑顔は思わず見とれてしまうほど可愛らしかった。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、なんでもない」
 慌てて、正気を取り戻す。
「ところでお客様、この後どこへ行かれる予定ですか?」
「ああ、宿へ戻るところだったんだよ。その途中で君が絡まれてたわけだ」
「その御蔭で、私は助かりましたけど。目的地が同じなら、一緒に行きませんか?」
「いいよ」
 少女を連れて宿へ向かう。
「失礼ですが、お客様のお名前は?」
「リョウだ。新米サモナーのリョウ」
「サモナーだったんですね。スライムを連れているから、サモナーかテイマーだとは分かっていたんですが。あ、私はアリーと言います。宜しくお願いします」
「アリーか、よろしくな」
「はい!」
 アリーはにっこりと笑った。
 それを見て、思わずドキッとした。
 NPCだと分かっているが、こんな美少女に微笑まれると胸に来るものがあるな。
 しかし、今まで感じていたけどNPCのAIは凄まじいな。
 リアルの人間と話しているのと殆んど変わらないぞ。
 暫らく歩いていると目的地の宿屋「宿り木」辿り着いた。
「ありがとうございました。おかげで助かりました」
「どう致しまして。また同じようなことがあったら助けるよ」
「はい、その時はお願いします。ところで昼食はどうなさいますか?時間には少し早いですが召し上がりますか?」
 時間を確認するとまだ12時になっていない。11時36分だった。
 ステータスをチェックし、満腹度がまだ50%を切っていなかった。
 まだ、ペナルティが付くほどではないが、後で改めて食事を取るのも面倒だ。
 今、済ませれるなら済ましておくか。
「じゃあ、悪いけど、昼飯貰えるかな?」
「はい、大丈夫です。任せてください。料理が出来るまで席に座って待っていてください」
 アリーは厨房の中へと消えていった。
 俺は食堂の席に適当に座り、料理が出来るのを待った。
 ただ待つのももったいないので、取得可能なスキル一覧を見て時間を潰すことにした。
 今現在はスキルポイントは2しかない。
 これで取れるスキルは殆ど無い。有っても屑スキルと言われそうな物ばかりだった。
 しかし、こうやってじっくりとスキルを見るのは良い事だな。
 有用そうなスキルを改めて発見する事が出来る。
 例えばだが、生産スキルの鍛冶や採掘などは取って置いてもいいだろう。他にもメイン武器の杖を作成できる木工もそうだ。
 武器スキルは今の所取る予定が無いから飛ばしているが、魔法スキルもチェックしておく。
 魔法スキルは全部で8種類ある。
 既に取ってある火魔法と付与魔法を抜くと、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、回復魔法だ。
 召喚魔法はサモナー限定魔法で他の職業では手に入れることが出来ない。
 手に入れることが出来たら、サモナー職の意味を成さなくなってしまう。
 そういえば、持っているスキルの錬金術、一切使っていないな。
 どんな効果があるんだ?
 何々、錬金術で出来る事は現段階では「合成」「短縮」「精錬」の3つか。
 3つの効果は次の通り。
 合成は、素材アイテムを合わせて上位の素材アイテムにする効果がある。
 短縮は、一度行った生産スキルの工程を短縮することが出来る。但し、品質は落ちる。
 精錬は、素材アイテムに含まれている混じり物を取り除き品質を上げることが出来る。混じり物がない物だと効果が無い。
 この3つの中で役に立ちそうなものは合成と精錬か?
 そう思案している所に料理が運ばれた。
「お待ちどう様」
 運ばれた料理は鶏の唐揚げとサラダに黒パンだった。
 ただし、唐揚げの量が多かった。
 普通なら5・6個が良い所なのに何故か10個以上も盛り付けてある。
「……唐揚げ、多くないか?」
「えへへ、サービスだよ。助けて貰ったお礼を含めたサービス」
「サービスは嬉しいが、こんなに食えるか分からないぞ」
「その時は残してくれて構わないよ。夜も期待しててね。じゃあ、ごゆっくりどうぞ」
 アリーが下がり、あるのは山盛りになった唐揚げ。
 このまま見ていても無くならないので、フォークを手にして唐揚げを食べた。
 ここの料理は不味くない。と言うか、美味しい方だ。
 リアルではコンビニ弁当三昧なので、こんなに美味い料理を食べると舌が肥えてしまいそうになる。
 これで僅か30Gだから安い物だ。
 20分掛けて料理を食べ切った。満腹度は100%になっていた。
 そこへ女将さんがやってきた。
「娘から聞いたよ。危ない所を助けてくれたんだってね。ありがとうよ」
 まさか、女将さんの耳に入るとは。
「ここの娘さんだったなんて知らなかったんですよ」
「それでも助けてくれたことには変わりはないだろう?」
「まあ、そうですね」
「娘に代わってお礼を言うよ」
「止めて下さい。お礼を言われたくてやった事じゃないんですから」
 頭を下げた女将を慌てて止める。
「そうだね。言葉でいくら感謝の弁を述べても意味は無いね。そうだね。お客さんには宿代を半分、と言いたいところだけど、さすがにそれは出来ないから2割引きでいいよ」
「そんな、悪いですよ」
「いいんだよ。娘を傷物にされるのを考えれば、これでも安い物だよ。これから先ずっと、お客さんには2割引きにしておくよ。そういえば10日分貰っていたね。どうする200G返すかい?それともさらに宿泊数を伸ばすかい?」
「それじゃあ、延長をお願いします」
「延長だね。それだと2日分の延長と40Gの返却だね」
 そう言うと、女将は一旦下がり、再び現れた時には40G持っていた。
「はい、40G」
「確かに」
「ところでお客さん。良い人はいるのかい?」
「良い人ですか?特にいませんけど?」
「それは良い事を聞いた。それならアリーと仲良くしても問題ないね」
「ええ、問題ありませんよ」
「これから先、アリーと仲良くしてやってくれよ」
「出来る範囲でいいなら、いいですよ」
「それで構わない。じゃあ、また後でね」
 そう言って女将は下がっていった。
 NPCとはいえ、あれだけの美少女と仲良くなれるのは単純に嬉しいな。
 まあ、友達限定だろうけどな。
 そう、決めつけ、部屋に戻る。
 12時を過ぎたので一旦ログアウトしてリアルでの食事を済ます。
 ログインできたのは20分過ぎたあたりだった。
 さて、ポーションでも作りますか。
 ポーションを作る前に、覚えた付与魔法を使おうとした。
 今現在使える付与魔法は全部で6種類。
 パワー、タフネス、スピード、テクニック、マジック、メンタルの6種類だ。
 付与魔法はステータスに補正効果があり、パワーは筋力、タフネスは耐久、スピードは敏捷、テクニックは器用、マジックは知力、メンタルは精神に効果がある。
 ポーション作成には器用が関係していると思われるので付与魔法のテクニックを使おうと思っている。
付与エンチャントテクニック」
 付与魔法を使うと体が薄い光に包まれた。
 ステータスを見てみる。

 種族 人間 性別 男 Lv3
 職業 サモナー J.Lv2

 筋力 16
 耐久 14
 敏捷 14
 器用 16 (+1)
 知力 22
 精神 20

 器用が+1になっている。約14%増加だ。
 厳密に言うともう少し少ないけど、そこは問題じゃない。
 他も同じかどうか確認してみよう。
 全ての付与魔法を使ってみる。

 種族 人間 性別 男 Lv3
 職業 サモナー J.Lv2

 筋力 17 (+1)
 耐久 15 (+1)
 敏捷 15 (+1)
 器用 16 (+1)
 知力 23 (+1)
 精神 21 (+1)

 ふむ、どうやら全部+1のようだ。
 それとも他の計算式で+1になったのか。よくわからん。
 付与魔法のレベルが上がれば効果が上がるのかな?
 上がってくれるものと信じて使って行こう。
 では、ポーション作りだ。
 まずは薬草を細切れにして、と。
 取り出した薬草を買ったばかりのミスリルナイフで切り刻む。
 女将から借りたブロンズナイフと比べると力をあまり入れずともすんなりと切れる。
 余りにも切れるので、切り刻むのが楽しい。指を切らないよう気を付けないとな。
 ポーションを作る工程は全部で4工程ある。
 ①薬草を細かく切り刻む。
 ②十分に切り刻んだら、乳鉢に入れてよくすり潰す。
 ③潰し終わったら、水を入れて掻き混ぜる。
 ④十分に混ざったら容器に入れて完成。
 それを鑑定で品質をチェック。
 おっと、E-だ。
 付与魔法の効果か、それともミスリルナイフか、もしくはその両方か?
 それともただ運が良かっただけ、と言うのも考えられるな。
 後2・3個作ってみれば分かるか。
 その後3個作ってみた。結果、全部E-になっていた。
 これで運と言う線は消えたな。
 後は作り方をちょっと変えてみるか。
 ②の工程のすり潰す時少しづつ水を加えてやってみる。
 実験なので入れる水の量をメスシリンダーでチェックしながらにした。
 まずは半分の45CCから始めた。
 すり潰す時に45CCを入れてすり潰す。
 む、水が邪魔して上手くすり潰せない。
 結局すり潰せたのは倍の時間の12分掛かった。
 しかも品質はFと踏んだり蹴ったりの結果。
 45CCは駄目だな。もう少し少なくするか。
 今度は30CCでやってみる。
 結果は45CCより良かったものの、10分掛かり品質はF+だった。
 次は20CCで8分で済み、品質はE-、と何も手に加えない方がいい結果が。
 最後に10CCでやってみる。
 すり潰す時間は6分で済んだ。
 後は品質が良ければ手を加える効果があるんだが。
 恐る恐る、鑑定をしてみる。
 その結果は、なんと、Eだった。
 待て、落ち着け、喜ぶのはまだ早い。
 偶々の結果かもしれない。
 後何回か試してみて、それでEの品質が多ければ確定だ。
 その後、4回、5回と繰り返した。
 その結果、E-が1個、Eが4個となった。
 これはもう確定だろう。
 その後のポーション作りはこの方法で作った。
 途中でトイレに行ったり、夕食を食べに抜けた物の21時ごろにはすべて作り終わった。
 勿論途中でインフォメーションが鳴った。

 《調合のレベルが上がりました!》

 調合のレベルはこれで3。あまり実感はないが、少しは品質が良くなっているのかも。
 もっと上がれば実感できるかな?
 出来上がったポーションはFが1個、F+が1個、E-が21個、Eが57個になった。
 報酬が期待できるな。
 じゃあ、冒険者ギルドに向かうか。
 部屋を出て受付を通る。
「おや、お出かけかい?」
「ええ、冒険者ギルドまで」
「遅くならないうちに帰ってくるようにね」
「分かりました」
 宿を出て、冒険者ギルドに向かった。
 冒険者ギルドに付くと、早速カウンターに行き受付嬢にクエストカードとポーションを出す。
「少々、お待ちください」
 受付嬢は、ポーション1つ1つ鑑定して品定めをした。
「鑑定が済みました。報酬は全部で、3740Gになります」
 今までで一番の報酬となった。
 これ、討伐するよりもお金が稼げるんじゃね?
 もう一度受けよう。そんでそのお金で装備を整えよう。
 ポーション作成80個のクエストを受け、宿に戻った。
 時間的にもう少し作れるので後2時間ほど作った。
 出来た数は20個ほどで、E-が3個、Eが17個だった。
 そこで22時を回ったので、ベッドに横たわりログアウトした。
 リョウ
 種族 人間 性別 男 Lv3
 職業 サモナー J.Lv2 

 筋力 16
 耐久 14
 敏捷 14
 器用 15
 知力 21
 精神 20

 スキルポイント 2

 スキル
 杖 3 短剣 1 回避 2
 召喚魔法 3 火魔法 3 付与魔法 1
 錬金術 1 採取 1 調合 3 (+1) 解体 3 鑑定 4 
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ