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この、やっ、はっ。
俺は手に持っている木の杖を叩き付ける。
相手は、野ウサギ。
最弱モンスターの一種だ。
その野ウサギに透明な個体が張り付いている。
こいつは最弱モンスターの一種でスライムで俺の相棒だ。
名はリン。
俺とリンで今野ウサギ1匹を攻撃している。
攻撃を始めて5分くらいするがなかなか死なない。
お、やっと死んだ。
ドロップアイテムは、と。
毛皮か、ノーマルドロップだな。
まあいいや、何も落とさないよりましだし。
いきなり、戦闘シーンで済まなかった。
今俺はVRMMORPGの「Frontier Online」通称FOをやっている。
このゲームは自由度が大きく、様々なプレーをして楽しむことが出来る。
例えば、戦うファーマーだったり、鍛冶をする戦士だったり、医者を目指す盗賊だったりと。
因みこのゲームは今日公開オープンしたばかりだがβテスト時代からそれなりに人気があり、オープン早々参加した者の人数は1万人を超えていた。
それほど人気があるのはやはり、様々な職業があり自由度が高いというのがあるのだろう。
因みに俺が選んだ職業はサモナー。
似たような職業でテイマーと言うのがあったが、迷った末にサモナーを選んだ。
サモナーとテイマーの違いは主に2つ。
1つは召喚型と常時型。
サモナーは召喚によってモンスターを呼び出して扱うのだが、テイマーは常に傍にいる。
そのためテイマーはモンスターに餌を与えないといけないが、サモナーは与えずとも好い。
もう1つは数の制限。
サモナーは仲間にできる数、召喚できる数に制限が掛かっている(レベルが上がればどちらも増えるが)。テイマーには好きなだけモンスターを仲間にできる。ただし仲間モンスターもパーティーの数に入るため、どれを連れていくかはその人次第だが。
テイマーはパーティーの数が限界の場合はモンスターを仲間にできないので新しく仲間にしたい場合は仲間を牧場に預ける必要が出る。それと仲間モンスターの入れ替えは牧場に行かなければならない。
対しサモナーは仲間にできる限界に至っていなければ召喚出来る数が限界であっても仲間にすることが出来るが、出来るだけであって、召喚出来る数が増えるわけでは無い。そして、戦闘時以外好きな時に召喚魔法で入れ替えが出来る。
これも大きな違いかもしれない。
仲間にするときはサモナーの場合コントラクトで、テイマーはテイムと言う違いがあるが差はそれ程違いはない。
開始するとサモナーとテイマーはランダムで初期モンスターを与えられる。
と言っても、最弱モンスターと言われている野ウサギ、スライム、バットの3種類のどれかだが。
で、俺が与えられたモンスターがスライムだったわけだ。
そうそう俺のステータスは次の通りだ
種族 人間 性別 男 Lv1
職業 サモナー J.Lv1
筋力 15
耐久 14
敏捷 14
器用 15
知力 21
精神 20
スキルポイント 10
スキル
杖 1 召喚魔法 1 火魔法 1 錬金術 1 鑑定 1
所持アイテム
ロッド 1 ローブ 1 靴 1 ウサギの毛皮(小) 1 鞄(アイテムボックス) 1
で、リンのステータス
種族 スライム リン Lv1
筋力 5
耐久 10
敏捷 6
器用 5
知力 3
精神 4
スキル
体術 1
正直言って弱い。
まあ、仕方がない。なんせ最弱モンスターだからな。
今はこのスライムのリンと俺だけでレベル上げをしているわけだが、他のプレイヤーを見るとソロで活動している人を見かけない。
少なくとも2人、多いと6人でプレイしている。
パーティー人数は最大6人。
つまり6人で行動しているのは最大人数でパーティーを組んでいることになる。
多分βテスト時代からやっていた連中か、リアル友達で組んでいるかだな。
それともう1つ気になるのが、サモナーもしくはテイマーらしき人物が見当たらない。
なんでだろうな。
掲示板でも覗いてみるか。
……成程な。
サモナーやテイマー職は魔法使い職に当たるが、魔法使いとしては他の魔法使いより弱く、戦士職としても見込めない。
しかも仲間モンスターによって、パーティー枠が減り仲間同士では嫌がられている。
駄目押しが、βテストの時、あるテイマーがどう言う方法なのかわからないが、モンスターを50匹以上連れていた者もいたらしい。そいつが狩場を荒らしたために嫌われたそうだ。、サモナーもそれに近いことをしたそうだ。
それと、初期に仲間にできるモンスターは弱すぎる事も上げられているみたいだ。
確かに、リンは弱いな。
で、サモナーとテイマーではテイマーの方がいいらしい。
理由はサモナーは序盤1匹しか仲間モンスターがいないが、テイマーは序盤でも複数の仲間モンスターを持つことが出来るからだ。
……もしかして俺、地雷職の中でも更に地雷職を選んでしまったのか?
かと言って作り直すのも嫌だな。
取り敢えず限界を感じるまでやって、ダメそうだったら作り直そう。
気持ちを切り替えてレベル上げに専念しますか。
辺りを見渡す。
近くにいるのは野ウサギとスライムか。
もう1回野ウサギに挑戦だ。
野ウサギに近付き鑑定を使う。
野ウサギ Lv1
Lv1か。大丈夫だな。さっきのも1だったし。
杖を構えて、ゆっくりと野ウサギに近付く。
野ウサギもこちらを見ている。
さらに近付くと野ウサギが跳びかかってきた。
それに合わせて杖を振り下ろす。
ゴン、と言う音を立てて野ウサギは地面に突っ伏す。
野ウサギのHPバーは状態異常を示す黄色に変化した。
どうやら気絶したみたいだ。
そこにリンが跳びかかる。
リンは野ウサギの頭にへばり付き徐々に顔に移動している。
それを見ながら俺は杖を何度も振り下ろす。
野ウサギのHPバーは徐々に減って赤くなっていく。
そしてついにはHPバーがすべて赤くなった。
これはHPが無くなったことを示す。
つまり野ウサギは死んだという事だ。
野ウサギは消えてその場にはリンしか残らなかった。
どうやらアイテムを落とさなかったみたいだ。
ちっ、ついてない。
まあいい、次だ次。
俺の近くにいるのはスライム。
ただし3匹いる。
うーん、どうするか。戦うにはちょっと厳しいか?
1匹を魔法でやっつければ何とかなるか?
試してみるか。
まずは鑑定、と。
スライム Lv1 スライム Lv1 スライム Lv2
Lv2がいる。
よし、そいつを魔法でやっつけよう。
距離はあるが、何とかなるかな。
火魔法を唱える。
「ファイヤーボール」
10㎝位の火の玉が飛び出しLv2のスライムに命中。
HPバーが半分ほど減った。
よし、もう1回だ。
しかしスライムもただではやられない。
3匹のスライムがこちらに向かってきた。
スライムがこちらに辿り着く前に何とかディレイ時間が無くなったので再び魔法を放つ。
「ファイヤーボール」
火の玉は再びLv2のスライムに命中。
スライムのHPバーは真っ赤になり死んだ。
よし、いける!
「リン、左のスライムを任せた」
リンに指示を出し右にいるスライムに杖を振り下ろす。
スライムに命中するが感触がふにゃっと柔らかい感じがした。
HPバーを見るが大して減っておらず少し赤くなっているだけだった。
野ウサギよりHPあるな。
それとも防御力があるのか?もしくはその両方?
野ウサギに一撃を与えた時のHPバーの減った量からの判断だ。
杖を手元に引くと、スライムが襲いかかってきた。
それを躱し、地面に着地したところを狙って杖を振り下ろす。
そして杖を戻すとスライムが襲ってくる。
それを何度も繰り返しやっとスライムを倒した。
一息付く間もなく、リンに相手にさせたスライムを確認する。
するとリンとスライムがぶつかり合っていた。
リンとスライムが同時に跳びかかり、そしてぶつかると両者とも弾かれる。
そんなことを繰り返しているようだ。
リンとスライムのHPバーを確認すると両者とも残り4割とほぼ同じくらいだった。
このままだと相打ちになるな。
そうさせないために弾かれたところを狙ってスライムに杖を振り下ろす。
スライムはそれを躱すことが出来ず、杖が命中する。
これによって均衡は崩れた。
杖を戻したところを狙ってリンが跳びかかる。
それによって弾かれたスライムを俺が狙う、と言う事を繰り返した。
そしてしばらくするとスライムのHPは無くなり倒すことが出来た。
《取得可能スキルに回避が追加されました》
お、新しいスキルか。
どうするかな。
回避は付けておいても損はしなそうだな。
よし付けよう。
必要スキルポイントは2。
これで残りのスキルポイントは8だ。
スライムを倒した所を調べてみると2つ何かが落ちていた。
手に取り鑑定してみる。
スライムの欠片 品質F 質量1
スライムの欠片、特に使い道は無い。
なんだよ、使い道がねぇのかよ!
まあ、こんなんでも売れるからいいか。
スライムの欠片を鞄に仕舞う。
この鞄、アイテムボックスになっていて、Lv×Lv×10の質量が入る。
つまり今の俺だと10しか持てないことになる。
今鞄に入れてあるのがウサギの毛皮(小)1個とスライムの欠片2個。
ウサギの毛皮(小)は鑑定結果は次の通り。
ウサギの毛皮(小) 品質F+ 質量1
小さいウサギの毛皮。服などの防具品として使われている。ただし、これ1つではできない。
つまり、ウサギの皮(小)とスライムの欠片だと合計10個持てることになる。
レベルが上がって2になれば40個持てるだが、まだレベルは上がりそうもないな。
レベルが上がるか、アイテムがいっぱいになるまで戦うか。
近くにいる野ウサギ、またはスライム相手に戦いを挑んだ。
倒しても必ずアイテムを落とすわけではないのでアイテムボックスはなかなかいっぱいにならない。
そして、何度目か分からないが、スライムを倒した時、その時が来た。
《杖のレベルが上がりました!》
《召喚魔法のレベルが上がりました!》
《召喚モンスター『リン』のレベルが上がりました!》
《任意のステータスを2つ上げてください》
《『リン』の体術のレベルが上がりました!》
おお!リンがレベルアップしたか。
さてさて、何を上げるかな。
よし、決めた。筋力と耐久を上げよう。
種族 スライム リン Lv2 (+1)
筋力 6 (+1)
耐久 11 (+1)
敏捷 6
器用 5
知力 3
精神 4
これで少しは強くなったから、戦いは楽になるはず。
それと、召喚魔法が2になったか。
確かレベルの数だけモンスターを仲間にできたはず。
ヘルプで確認してみよう。
ふんふん、おし、間違いない。
じゃあ、何を仲間にするかな。
スライムはいるから他のがいいな。
となると野ウサギか、後は空を飛んでるバットだな。
どっちがいいかな。
空を飛んでるやつと戦う術がないから空を飛べる奴がいいか。
となるとバットだな。
野ウサギは次の時だな。
さて、バットはどこにいるかな?
辺りを見渡すと近くの木にぶら下がっていた。
丁度いい、こいつを仲間にしよう。
その木にゆっくりと近づく。
そして、その木に着きバットの真下まで移動した。
よし、じゃあやってみるか。
「コントラクト!」
《対象を選んでください》
対象を選ぶのか。
バットを選んで、と。
《バットに使います。よろしいですか?》
YesとNoが頭に浮かぶ。
Yes、と。
《コントラクトに成功しました。名前を付けてください》
よっしゃー!成功!!
名前か。なんて付けるか。
よし、決めた。無月、無月にしよう。
無月、と。
さて無月のステータスは?
種族 バット 無月 Lv1
筋力 5
耐久 5
敏捷 6
器用 6
知力 5
精神 6
スキル
体術 1 音波 1
ふむ、平均的だな。
スキルに音波か。使えるのか?
《召喚できる数を超えています。送還させます》
送還?
あ、無月が消えた。
成程ね。召喚できる数を超えていると自動的に送還されるのか。便利だな。
さて、次は俺のレベルが上がるのが早いか。それともアイテムがいっぱいになるのが早いか、どっちだ。
鞄にはすでに7つ入っている。
後3つで満タンになってしまうわけだが、レベルが上がれば余裕が出来る。
早くレベルが上がってくれ。
さらに戦闘を繰り返すこと4回。ついにその時が来た。
《レベルが上がりました!》
《任意のステータスを1つ上げてください》
《スキルポイントが2つ入りました!》
よし、ギリギリだった。
鞄、後1つでいっぱいだったよ。
さてステータスはどれを上げるか。
前衛もこなしているから、筋力か耐久辺りでも上げとくか。
どっちがいいか。うーん、よし、決めた。
筋力にしよう。
種族 人間 性別 男 Lv2 (+1)
職業 サモナー J.Lv1
筋力 16 (+1)
耐久 14
敏捷 14
器用 15
知力 21
精神 20
これで良し。
さて、アイテムは、と。
スライムの欠片か。
おっと、鑑定鑑定、と。
スライムの欠片 品質F 質量1
スライムの欠片。特に使い道は無い。
《鑑定のレベルが上がりました!》
お、鑑定のレベルが上がったよ。
ふむ、スキルは使えばレベルが上がるのか。
となると、火魔法を上げるには使わないといけないのか。
じゃあ、次の戦闘、最初に魔法を使ってから戦うか。
よし、鞄に余裕が出来たからもう少し戦うか。
リンはどうするかな。
無月のレベルも上げておきたいし、交代するか。
召喚魔法のリターンモンスターでリンを戻す。
そして、サモンモンスターで無月を呼ぶ。
無月は俺の肩に留まる。
「よし、無月暫くは頼んだぞ」
無月を連れて、狩りを始める事にした。
種族 人間 性別 男 Lv2 (+1)
職業 サモナー J.Lv1
筋力 16 (+1)
耐久 14
敏捷 14
器用 15
知力 21
精神 20
スキルポイント 10
スキル
杖 2 (+1) 回避 (NEW)
召喚魔法 2 (+1) 火魔法 1
錬金術 1 鑑定 2 (+1)
種族 スライム リン Lv2 (+1)
筋力 6 (+1)
耐久 11 (+1)
敏捷 6
器用 5
知力 3
精神 4
スキル
体術 2 (+1)
種族 バット 無月 Lv1 (NEW)
筋力 5
耐久 5
敏捷 6
器用 6
知力 5
精神 6
スキル
体術 1 音波 1
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