JAXA:「はやぶさ」データで誤り、論文撤回を申し入れ
毎日新聞 2014年08月29日 20時06分(最終更新 08月29日 20時27分)
◇米科学誌サイエンスに発表論文
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は29日、小惑星探査機「はやぶさ」が観測したデータの解析方法に誤りがあったとして、米科学誌サイエンスに発表した論文1本の撤回を同誌に申し入れたと発表した。JAXAは「反省している。故意ではなく研究不正にあたらない」と説明した。
論文は、JAXAの岡田達明准教授(46)が主著者で、2006年6月に掲載された。はやぶさに搭載した分析装置を使い、小惑星「イトカワ」の組成を探り、地球に多く飛来する隕石(いんせき)と同じ組成だと推定していた。
しかし、根拠としたデータの計算方法に誤りがあった上、観測条件が悪く装置の誤差でも同様の結果になりうることが分かった。同種類の観測機器の不具合を受け、12年末にJAXAの諮問委員会からデータの再評価が求められ、発覚した。
論文掲載後、JAXAは、はやぶさがイトカワから持ち帰った試料を分析し、この論文と同様の隕石の組成だったことを確認している。このため、論文を撤回しても事実関係に影響はしない。
JAXAの藤本正樹研究主幹は「事前に期待されたデータと同傾向だったため、思い込みがあった。新しい世界を探査するのに目が曇ると意味がない。ただ、はやぶさの成果が全て失われたわけではない」と述べた。
はやぶさをめぐっては、これまでにサイエンスの14本を含む129本の論文が掲載されている。【千葉紀和】