子供の貧困:予防接種率低く 貧困世帯は1/3〜1/7

毎日新聞 2014年08月29日 15時00分

 自己負担を伴う水ぼうそうなどの予防接種について、貧困世帯の子供の接種率が低いとみられることが、武内一・佛教大社会福祉学部教授ら小児科医チームの調査で分かった。接種率は水ぼうそう12%、おたふく風邪6%で、貧困ではない世帯の子の7分の1〜3分の1にとどまっていた。30日から大阪市内で開かれる日本外来小児科学会年次集会で報告される。

 国民の所得の中央値の半分未満で暮らす「相対的貧困」状態にある世帯(貧困世帯)の子の接種率などを把握するため、全国10病院で中学生以下の子供が入院する際に調べている。今年4月から1年かけ調査する予定で、今回は3カ月分、計142人分を中間集計した。

 予防接種の自己負担は水ぼうそう約7000円、おたふく風邪約4000円。助成制度を設ける自治体もある。集計では水ぼうそうの接種率は貧困世帯12%で、その他世帯45%の3分の1以下。おたふく風邪も貧困世帯は6%と、その他45%の7分の1以下だった。

 調査対象142人のうち貧困世帯の子は33人で23・2%。6カ月未満の乳児が目立ち、貧困世帯では入院児全体の15%を占め、その他世帯の1%より高かった。調査チームは親の育児への不慣れや頼れる家族らの不在など育児環境が整っていないことが背景にあるのではと分析している。

 また、家族の喫煙状況は「母親が喫煙」は貧困世帯23%、その他世帯7%▽「両親が喫煙」は貧困世帯13%、その他世帯6%−−だった。生活面のストレスが影響しているとみられる。

 耳原総合病院(堺市)の小児科医でもある武内教授は「医療分野で『子供の貧困』の視点の調査はほとんど無かった。社会全体で対策を進める基礎資料にしたい」と話す。1000例以上のケースを集め、来年中に最終報告をまとめる予定だ。【福田隆】

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