トップ > インプレッション >スバルWRX S4(4WD/CVT)/WRX STI(4WD/6MT)【短評】 (2014.8.26)
「WRX」シリーズの最上級モデルとなる「WRX STI Type S」。
「WRX STI」は「EJ20」型2リッターターボを搭載。基本的には従来モデルと同じエンジンだが、制御の見直しにより加速レスポンスが大幅に高められている。
「WRX STI」のトランスミッションは6段MTのみ。シフトノブの手前には走行モードの切り替え機構である「SIドライブ」や「DCCD」のコントローラーが備わっている。
「WRX STI Type S」に標準装備されるBBSの鍛造ホイール。「WRX STI」の鋳造ホイールに対し、1本あたり1kgほど重量が軽い。
「WRX STI」

いちマニアとして拍手を贈りたい

STIもまた海外モデルとは異なる日本専用仕様で、海外の2.5リッターに対して、日本仕様はこれまでのSTI同様の2リッター。エンジンチューンも先代とぴたりと同じ。
新しいSTIは早い話が、新型WRXの車体に、旧STIのパワートレイン(変速機やデフのギヤ比まで同じ)とクイックレシオのステアリングシステム(S4が電動パワステなのに対して、STIのそれは油圧式)や手動パーキングブレーキを、そのまま移植したクルマと考えていい。「SIドライブ」やパーキングブレーキの操作系も、STIだけが旧来タイプのままセンターコンソールに残っている。

車両重量も先代とほとんど変わらない新型STIが「史上最強の加速性能」とうたわれるのは、(とくにリアサスの)横剛性が格段に進化した新しいシャシーに合わせて、スロットル特性をこれまでにない「はや開け」のセッティングにできたことを指す。
富士の本コースで試乗したSTIは、なるほど、そういう能書きを着実に体感できた。エンジン本体は変わっていないのだが、とにかく「後ろ足の蹴り」が先代の比ではないほど鋭い。いやホント、スロットル以外イジッていないとは、にわかに信じがたいほどのロケット脱出である。自慢の横剛性で、エンジンパワーをあますところなくトラクション(=推進力)に変換できているのだろう。
リアのキック力だけでなく、トータルでの方向安定性のレベルアップも顕著。これまでだと路面ミューやコーナー曲率によって「DCCD=ドライバーズ・コントロール・センター・ディファレンシャル」をプラス(=ロック)方向にイジると、体感的なフロントけん引力が増して、私のようなアマチュアは安心感が得られたが、少なくとも今回はDCCDをイジる必要性をまるで感じなかった。
それにしても、まさか環境や燃費などまるでシカト(?)して、「低速スカスカ、高速で大爆発」というEJ20のキャラクターに、最近では異例なほどズシリと重いパワステ……と古典的な味わいを、この最新スポーツセダンにそのまま残してくれた開発陣には、マニアのひとりとして素直に拍手したい。

STIにもビルシュタインの有無で2グレードがある。絶対的な減衰力に明確な差はないそうだが、標準モデルがターンインなどで、時折「カクン」という神経質な動きを見せるのに対して、ビルシュタインは微小域からしっかりとダンピングが立ち上がって、サーキットでの操縦性から、ピットロードでの乗り心地まで、すべてでより好印象だった。S4もSTIも、高価なビルシュタインの美点をレヴォーグ以上に正確に引き出せているのは、自慢の車体剛性によるところが大きいのだろう。

(文=佐野弘宗/写真=高橋信宏)

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