ストーカー被害:避難支援 来年度、国が宿泊費負担

毎日新聞 2014年08月28日 22時42分(最終更新 08月28日 23時45分)

婦人相談所での一時保護の主な理由
婦人相談所での一時保護の主な理由

 警察庁は、ストーカー事案の被害者が一時的な避難先としてホテルなどの宿泊施設を使う場合の本人負担をなくす制度を来年度から導入する方針を固めた。一時的な避難先としては47都道府県ごとにある婦人相談所や民間シェルターなどが想定されていたが、従来の生活を続けたいという被害者のニーズと合わない例が多く、支援の在り方を見直した。被害の未然防止に向け、中高生を対象とした啓発にも初めて乗り出し、交際上の注意事項やリベンジポルノの怖さなどを伝えるDVDやパンフレットを作製して配布する。

 導入を目指す新たな被害者支援策は、一時避難先としてホテルなどに宿泊した際の費用を都道府県と国が半分ずつ負担する。警察庁はこの費用として約1億3340万円を来年度予算の概算要求に盛り込んだ。

 ストーカー被害者の一時避難先(支援施設)を巡っては、昨年10月施行の改正ストーカー規制法で、「婦人相談所その他適切な施設」と明記された。しかし、こうした施設は主に、DV(ドメスティックバイオレンス)被害者が同居の夫や交際相手らから逃れる緊急避難先として使われており、外部との連絡が取れないよう外出を制限したり、携帯電話の使用が禁じられたりする場合が多い。

 しかし、ストーカー被害者の場合、DV被害者と異なり、仕事や学校など自分の生活基盤がある場合が多く、警察から一時避難を勧められても「生活が遮断される」と施設に入らないケースが続出。2012年度に婦人相談所に一時保護された計6189人のうち、約84%は親族や交際相手からの暴力が主な原因で、ストーカー被害を理由に駆け込んだのは26人だけだった。

 今月上旬、新たなストーカー対策の在り方をまとめた警察庁の有識者検討会でも、一時避難先の利用実態が不十分だと指摘され、自由度が高いホテルなどを活用することとした。DV被害者も同様に、全額負担の対象とする。

 同庁によると、昨年11月時点で、山形▽千葉▽静岡▽富山▽福井▽三重▽滋賀▽大阪▽岡山▽山口▽愛媛−−の計11府県はストーカー・DV被害者の一時避難の際の宿泊費を既に公費負担しているといい、担当者は「新制度で被害者や家族が数日でも避難して身を隠してくれれば、警察として加害者の摘発を含めて対応できる」と期待する。

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