(2014年8月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
アジアの貧困者数は実際何人なのか?(写真はフィリピン・マニラのスラム街)〔AFPBB News〕
1日1.25ドルで暮らさなければならないとしたら、貧しいと感じるだろうか? 1.50ドルならどうだろう? その違いは、気にする価値がほとんどないように見えるかもしれない。本コラムを読んでいる人たちの多くは、朝のカプチーノに1.50ドル以上費やしている。
だが、どの数字を選ぶかによって、極度の貧困の中で生活していると分類される人たちの数は大きく変動する。
アジア開発銀行(ADB)は今月、高まる一方の要求に加勢する形で、貧困の新たな定義を求めた。ADBは報告書の中で、アジアでは、1.25ドルではもう暮らせないと主張している。人は、適切なカロリー摂取量を確保し、ADBが「貧困を避けるために必要な最低限ぎりぎりの生活水準」と呼ぶものに達するためには、1日1.25ドルより多くのカネが必要だという。だが、あとどれくらい必要なのだろうか?
アジアの貧困層、従来の想定より10億人も多かった?
ADBは、1.51ドルという疑わしいほど正確に聞こえる数字を導き出した。1.25ドルという数字は、アフリカに大きく偏り、アジアを代表する国がタジキスタンとネパールの2カ国にとどまる15カ国のサンプルに基づいているとADBは言う。さらに、過去10年間、食品価格が一般的な物価上昇を上回ってきたという事実にもっと重きが置かれる必要があると主張する。
最後に、ADBは、一律の数字は、ADBが「脆弱層(near-poor)」と呼ぶ人たち――最近の本紙(英フィナンシャル・タイムズ)の連載では「脆弱な中間層」と分類した人々――がいかに簡単に極端な貧困に逆戻りしかねないかを無視していると言う。ある月は1日3ドルだが、別の月は1日40セントで生活する人は、ひもじい思いをするかもしれない。
同様に、住居が洪水でなくなったり、労働災害で腕が引きちぎられたりした場合も、生活水準の壊滅的な低下という結果を招くことがある。
ADBはより現実的な前提を使い、2010年に貧困の中で生活していたアジア人が17億5000万人いたと推定している。これは、これまで想定されていたより丸々10億人多い。その結果、貧しいアジア人の割合は心配の種となる2割から警戒を要する5割に上昇する。
これらの新しい数字は、一部の人に衝撃を与えている。有力ビジネススクールのIMD(経営開発国際研究所)のジャン・ピエール・レマン名誉教授は、貧困の水準を計算するうえでの「このような重大な誤り」は信じがたいと腹立たしげに書いていた。新しい数字は、いわゆるアジアの台頭や、貧困を減らすグローバル化の恩恵とされてきたものに疑問を投げかけている、とレマン氏は言う。