元カコフォニー、そして元メガデスのギタリストとして世界で知られているマーティー・フリードマン。メガデス脱退後、2004年に日本へ移住し、相川七瀬、鈴木亜美、THE ALFEEの高見沢俊彦など、J-POP界隈のアーティストと共演してきた。近年では音楽ユニットSound HorizonやアイドルグループのももいろクローバーZの楽曲でギターとして参加し、幅広く活動をしている。
そんな彼が5月21日に4年ぶりのオリジナルソロアルバム「Inferno」を発売する。「メタル完全回帰」の今作は、これまでの彼のキャリアの中でも最も激しく、そしてもっとプログレッシブな作品に仕上がっている。ロドリーゴ・イ・ガブリエーラ、ダンコ・ジョーンズ、チルドレン・オブ・ボドムのアレキシ・ライホ、元カコフォニーのジェイソン・ベッカーなど、豪華ゲストとのコラボレーションも今回の聞き所だ。
4月27日、幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」で演奏した直後のマーティーが新作や現在のJ-POPシーンについて、独学で学んだ流暢な日本語で熱く語ってくれた。
まず新しいアルバムについてお聞きしたいです。4年ぶりのオリジナルアルバムということで、若干久々ですよね?
まあ4年ぶりと言っても、間に2枚カバーアルバムを作りましたから。そのカバーアルバムはあまりにも強烈に曲を破壊したので、勝手にオリジナルアルバムだと僕は思っています。それよりも久しぶりに全世界同時発売ということが大事ですね。
海外の人達にとってはもっと久々ですよね?
そうですね。僕の前のアルバムは海外でリイシューとして結局は発売されたんですけど、日本での発売の6ヶ月後とか一年後とかでした。しかも最低限のプロモーションしかやらなかったので、マニアの海外ファンのためだけに出すって感じでしたね。
今回レーベルのProsthetic Recordsが日本のアルバムのリイシューをアメリカでされるとのことですが、その流れで新しいアルバムの発売の話になったんですか?
そうですね。まず前のアルバムを発売して、その後全世界のために凄い印象的なオリジナルアルバムを作りましょうということでした。
プレスリリースでInfernoは「昔からのファンが求めていたアルバム」と書いてありましたが、やはり以前の活動やそのファンの人たちからは少し距離感を置きたかった時期はあったんでしょうか?
距離は欲しくなかったんですけど、あまりにも自分の日本での活動にはまりすぎちゃって。ちゃんと他の国を耕す時間がまず無かったですね。どのテリトリーでも耕さないと最終的に人は聴いてくれないから。それはわかってるので、今回こそ世界ツアーをやり、プロモーションをやりつつ、全世界を考えながらもっと長いスパンで、もっと大きなコミットメントをすることですよね
今回は昔のファンを意識した作品になっているんですよね?
とても良い言い方ですね。昔のファンを喜ばせながら全く新しい挑戦と全く新しい、やったことないことをやってますね。
誤解されて欲しくないのは、振り向いて昔のようにしようとは全く思ってないです。その中にはチャレンジがありますよね。皆何を欲しがっているか、僕はしっかり知ってます。向こうは僕は激しく攻撃的に、マーティーなりに弾きまくってほしいって。それは全然良いんですけど、新しい挑戦がないと僕はそれには興味ないから。それを両方達成しなくてはいけないっていう目的ですね。
そう思うようになったきっかけは何かあるんですか?
Prosthetic Recordsの人が駄目元で「アメリカでアルバム出さない?」って言ってきたんですよ。彼はものすごい熱狂的で。
僕はアメリカの音楽シーンとかヘビメタシーンとか全然フォローしてないんですけど、彼は今流行っているギタリストとかミュージシャンで僕の名前を影響として取材とかであげている人を集めてリストを作ってくれたんです。そのリストを見て感動しました。こんなに僕のプレイを大事にしている人がいるなんて。本当に感動しました。熱狂的なレコード会社の人間とかあまり観ないですから(笑)それがきっかけでした。
最近活躍しているチルドレン・オブ・ボドムのアレキシ・ライホやロドリーゴ・イ・ガブリエーラの方々も参加されていますよね。彼らの音楽を聴いてみた印象はどんな感じでした?
聴いてさらに感動しました。こんな素敵な方がこういうことを言ってくれるなんて。
もう一つ大事だったコラボのポイントなんですけど、日本に来る前に(UFO、スコーピオンズの)マイケル・シェンカーさんに一緒にプロジェクトやらないかって頼まれたことがあって。僕は彼のファンで、頼まれた時あまりにも光栄で信じられないほど頑張りました。結局そのプロジェクトは発売されなかったんですけど、僕のその頑張りたいと思う気持ちと同じ気持ちをリストアップされてた人たちに感じて欲しかったんですね。
今回特に注目されるコラボレーションがカコフォニーで一緒に活動していたジェイソン・ベッカーさんとのコラボだと思うのですが、コラボレーションのきっかけは何かあったんですか?
ジェイソンのドキュメンタリー映画があるんですけど、その映画の中で彼が曲作りをしているシーンがあるんですね。本当に作っている最中だから完成度はゼロなんですけど、素敵なアイディアでした。僕はジェイソンに「あの映画のメロディー今何かに作ってる?」って聞いたら、「使ってないよ」って言われて。「もしそれをくれたら僕はその周りに曲を作るから、コラボしましょうよ」って言ったら、「喜んであげるよ」って言われて。そのあと僕はアレンジャーとして色々やって、本当に昔と同じ課程でその曲でコラボをしました。
ジェイソンさんは筋萎縮性側索硬化症の闘病生活をしながら音楽活動をされてることで知られていますが、彼との作曲やコミュニケーションの取り方はどう行われてたんですか?根本的な音楽的な部分は20年前とあまり変わらなかったですか?
やっぱり彼の曲作りのプロセスがとても違うんですね。目でパソコンを動かしているから。でも最終的にはあまり変わっていないですね。当時は彼がアイディアがあって、僕もアイディアがあって、二人でデモを作って、そのデモを僕がアレンジしてました。当時僕はアレンジャーとプロデューサーもやっていたので、今とはあまり変わらないですね。残念ながら今回ジェイソンはギターは弾いてないですけど。
ジェイソンさんとのコラボをとても楽しみにしているファンの方は多いのでは?
それを凄く大事にしたんです。絶対がっかりさせたくないなって。意外とあの曲はかなり力んじゃったんですね。
今回のアルバムは他のアルバムと違って、4倍ぐらいの時間がかかりましたので。デモ段階の曲作りの段階で、いつもより全然細かく、厳しく聴いて曲を捨てたりしたから、意外と贅沢な作り方になりました。今回僕の中に一切妥協していない形になりました。
マーティーさんはJ-POPが大好きだというのはファンの方々はご存知だと思いますが、日本の音楽はここ10年間ぐらいすごく変わっていますよね。特にアイドルシーンやアニソンシーン、ボーカロイドとかもそうなんですけど、ご自身のももいろクローバーZやSound Horizonでの活動を通してその変化を肌で感じていますか?
どんどん僕のツボに入ってきてます。今競争が激しくて、クオリティーが高くなってて、どんどん日本的になってる。
結局80年代の邦楽は僕のイメージだと、洋楽のそんなに良くない真似をしているような雰囲気でした。90年代の中盤ぐらいで小室哲哉さん、つんく♂さん、織田哲郎さんとかが流行る頃から日本の音楽はとっても日本っぽくなりました。シカゴの真似とか、ビリー・ジョエル、カーペンターズの真似じゃなくて。とても東洋的ですし、日本的で、もっと歌謡曲の影響が強かったんですね。それが僕にとっての黄金時代の始まりで。その時代が終わったんじゃなくて、どんどん強まっていると思いますね。
今は売れてないアイドルでも結構曲のクオリティーが高いですね。だからオリコン観たら素敵な曲ばっかりでびっくりする。ももいろクローバーZの曲も最高に楽しかったです。
日本の音楽シーンはメインストリームとアンダーグランドがとても離れている印象なんですけど、おかしなことにポップミュージックにはすごい実験的な音や過激な音が普通に入ってきているじゃないですか。例えばブラストビートとかメタルギターソロとか変拍子とか。こういう現象は他の国では起こっていないですよね?
日本ほど発展していない気がしますよね。僕は他の国にいる時に敏感にその国の音楽シーンを聴くんですよ。それはワールドツアーの楽しみの一つで。僕の好みだと日本の方が余っ程良いんですけど、日本の方が何でもありって気持ちが強いと思います。思いません?
思います。それってなんででしょうね?不思議ですよね。
僕が思うのは、日本は他の国よりもメロディーが一番大事なんだと思います。メロディーさえあればどんな解釈でも許される。例えばアメリカだったら、メロディーよりもアーティストのアイデンティティとかパーソナリティーとか歌詞とかイメージとかが優先で、メロディーはそんなに優先されていないんです。日本はメロディーが最優先で、その後の解釈は本当に好きなようにって感じで。すごい自由な感じです。
日本はそこまででもないかもしれませんが、アメリカだと中にはやっぱり「真のメタルファン」みたいな感じな人たちが、自分の好きな音がポップスとかアイドル音楽とかに入ってくるのを嫌がる方が多いじゃないですか。そういう信ぴょう性みたいなのについてはどうお考えですか?
僕は自分の好みを言いたい放題言いまくっているから、完全に恥知らずなんですけど。特にアメリカとヨーロッパのメタルファンは、いくらオープンマインドって言ってもちょっとだけ恥ずかしい音楽だったらそんなに人には言わないと思いますね。日本ではその意識が向こうほど強くない。僕はももクロとライブやった時、あのお客さん達はメタルファンよりもメタルって感じでした。だから楽しめば良いじゃない。たぶんその意識は日本の方が進んでいる気がしますね。
僕も一度ももいろクローバーのライブを拝見したことがあるんですけど、やっぱりパワーとエネルギーが凄まじいですよね。
その通りですね。
やっぱりそこが一番大事じゃないですか。音楽のジャンルがどうこうっていうよりも、そこの魂というか。
大賛成ですね。音楽は楽しいものだから。Why do you have to be snobbish? (なんでそこまできざっぽくなるの?)損するのは本人ですよね。
僕はアメリカで育ったので、その気持ち超わかる。いきなり友達に「僕は毎日ブリトニー・スピアーズ聴いてるよ」って言ったら友達なくなっちゃうじゃん。やっぱり文化と環境とか色々影響はあるんですけど、固定概念は壊しにくいですよね。
この先J-POPはどういう風に変わって行くと思いますか?もしくはご自身の希望というか、どういう風に変わって欲しいですか?
良い質問ですね。最終的には僕は邦楽を全世界にちょっと広がってほしいですね。そしてK-POPにあまり影響されて欲しくないです。K-POPって結構アメリカの洋楽を意識していますね。日本がアメリカの真似をするのは僕は恥ずかしいと思います。
例えば(ももいろクローバーやでんぱ組Inc.に楽曲提供している)ヒャダインさんの音楽とか、今日本で流行っている音楽は全然アメリカっぽくない。とてもユニークでオリジナルです。そのオリジナリティーを更に発展して欲しいですね。とにかくヒャダインさんみたいな人がどんどん増えると思いますね、彼の影響で。彼はとても素晴らしい、輝いている才能のある人だから、彼に影響を受けている新しい人たちはとっても素敵だと思います。とても未来が眩しいですね。
『Inferno』
01. Inferno
02. Resin
03. Wicked Panacea (feat. Rodrigo y Gabriela)
04. Steroidhead (feat. Keshav Dhar)
05. I Can't Relax (feat. Danko Jones)
06. Meat Hook (feat. Jørgen Munkeby)
07. Hyper Doom
08. Sociopaths (feat. David Davidson)
09. Lycanthrope (feat. Alexi Laiho & Danko Jones)
10. Undertow
11. Horrors (co-written by Jason Becker)
12. Inferno (reprise)
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