産経新聞の加藤達也ソウル支局長(48)が朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に関する虚偽の記事を書いた事件を捜査している韓国検察当局は25日までに、セウォル号沈没事故の発生当日、朴槿恵大統領が大統領府(青瓦台)内にいた事実を確認したことが分かった。
また、朴槿恵大統領の国会議員当時の元補佐官で、事故当日に大統領に会った疑惑が浮上したチョン・ユンフェ氏(59)も事故当日に青瓦台に行った事実はないことが分かった。検察は一連の事実関係を踏まえ、朴槿恵大統領とチョン氏が事故当日に会ったのではないかという疑惑を指摘した加藤支局長の記事は事実上虚偽だと判断し、今後の対応を検討している。
加藤支局長は今月3日、産経新聞(電子版)に掲載した記事で「沈没事故発生当日の4月16日、朴大統領が日中、7時間にわたって所在不明となっていたとする『ファクト』が飛び出し、政権の混迷ぶりが際立つ事態となっている」と書いた上で「大統領は当日、あるところで『秘線』とともにいた」と報じた。「秘線」とは秘密裏に接触する人物のことで、チョン氏を指すとされている。
チョン氏は1998年に朴槿恵大統領が補欠選挙で政界入りした当時から補佐役を務めていた人物で、2002年に朴槿恵大統領がハンナラ党(当時)を離党し、韓国未来連合を結党した際に総裁秘書室長に就任した。チョン氏は朴槿恵大統領の父である朴正煕(パク・チョンヒ)大統領の夫人、陸英修氏が死去して以降、朴正熙大統領に影響を与えたとされる崔太敏(チェ・テミン)牧師の娘婿だったが、最近離婚している。
検察は記事内容が事実かどうかを確認する必要があった。事実か虚偽事実かによって、加藤支局長に適用される法律の条項が異なってくるためだ。当然量刑や処罰の水準も違ってくる。
検察はまず、疑惑の渦中にあるチョン氏の事故当日の行動を調べた。検察は今月19日、チョン氏に出頭を求め、当日の行動、青瓦台に行った事実の有無などについて確認した。これに対し、チョン氏は「青瓦台には行っていない」と述べたとされる。チョン氏は検察に対し、当日の行動について具体的に説明し、検察も事実関係を確認した。検察はチョン氏が青瓦台に行っていない点を青瓦台の公式入館記録でも確認した。
検察はまた、青瓦台警護室の記録の提出を受け、朴槿恵大統領が事故当日に青瓦台から外出した事実はない点も確認した。ただ、検察は大統領が青瓦台内部にいたとすれば、青瓦台に行った事実がないチョン氏と会うことは不可能だとして、青瓦台内部での朴大統領の動きまでは具体的に把握しなかった。
結局、朴槿恵大統領がチョン氏と会っていないという点が客観的に確認され、検察は加藤支局長が書いた記事が虚偽だったとの判断を下した。検察は加藤支局長が事実に反する記事を書いた行為について、情報通信網法が定める名誉毀損に当たるとみている。名誉毀損は「反意思不罰罪」に当たるため、被害者が処罰を希望しないという意思表示がすれば、それに反して公訴を提起することができない。
ただ、検察は「既に青瓦台が民事・刑事上の責任を問うと表明しているため、朴槿恵大統領が処罰(を望む)意思を明らかにしたものと判断している」と説明した。