『アナと雪の女王』の「Let it go.」って結局どういう意味なの?

「Let It Go」ってどういう意味なの?

遠藤 今井くん、めずらしく今回は質問があるんだって?

今井 最近インターネットなどでディズニーの「アナとなんちゃらかんちゃら」って映画のタイトルをよく見かけるんですが、知っていますか?

遠藤 『アナと雪の女王』かな?

アナと雪の女王 (字幕版)

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今井 それです!その映画の「Let It Go」って曲が、やたら有名になっていますよね?この「Let it go.」ってどういう意味なんですか?

レット・イット・ゴー~ありのままで~(日本語歌)

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遠藤 今井くんはある程度英会話ができるんだから、「Let it go.」って聞いて何となくイメージできるんじゃないの?

今井 そうですね…。全体的なイメージとしては「it」をピャーッと、あてもなくどこかへ行かせるっていうのかな?はっきりとした目的地もなく、「it」を自由にどこかにピューンって行かせちゃうようなイメージですね。

遠藤 それでだいたい合っているよ。じゃあ、解説してみようか。さきに結論を言うと「Let it go.」って次のイラストのようなイメージなのね。

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 で、それぞれの単語なんだけど、まず「let」のコアイメージは「惰性に任せる」。何かをしたがっているならば、そのようにさせてあげるとか、新たな力を加えずにそのままにしておくとかってことね。

今井 なるほど…。「let」は、あるものの動きを制限しないで、そのままに任せるみたいな意味合いがあるってことですね。

遠藤 そうだね。例えば、今井くんが「銃を撃ちたくてしょうがない」みたいな気持ちを持っているんだけど、親から「そんなことしちゃいけません!」って言われているとするよね。

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グァムでM4を撃った時のテンションの上がり具合は半端なかったDEATH(今井)

 そんなときに誰かが今井くんに「Let it go.」と言ったら、「持っている思いをそのまま外に出させろよ、自由にさせてやれよ」みたいに、そそのかしているようなニュアンスになるってことだね。

 じゃあ、次は「it」だけど、「it」は基本的に「漠然とした状況」を表します。だから「it」は状況次第でなんとでも解釈できるんだよね。

 なので、映画を見ていない人にはさっぱりわからないと思うんだけど、とりあえず挿入歌に出てくる「Let it go. Let it go.」の「it」は、雪の女王であるエルサが持っている「誰の目にも触れさせてはいけない力」を表しています。これはいいかな?

今井 映画を見ていないので「そうなんですね」としか言えないですが、わかりました。

遠藤 OK。じゃあ、最後に「go」だね。「go」は「場の中心から離れて、他のところへ動き出す」って感じです。

 「go」は「行く」という日本語が当てられがちだけど、「動き出す」という意味合いもあることに注意してね。むしろ今回の「Let it go.」では、その「動き出す」ニュアンスが強くて、どこかに行く途中ってわけじゃないんです。

今井 ジブリの映画「耳をすませば」の中で、高校受験はもうやめてイタリアに修業に行くという話があるんですけど、いままさにそうしようとしている人を念頭に置いて「Let him go.」と言えば、「もう高校受験はキャンセルして、あいつをイタリアに行かせてやれ」って感じになるってことですね。

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遠藤 そういうことだね。それに加えて、そのシーンで「go」が前提としている「場の中心」は「日本で高校受験をしている現状」であり、そこから他の場所であるイタリアへ動き出すってことになるね。

 「アナと雪の女王」の場合、雪の女王であるエルサは「誰の目にも触れさせてはいけない力」をずっと自分の中に閉じ込めている。その力に焦点があたっているシーンなので、「場の中心」は「エルサの心の中、内面」になるわけだね。

今井 じゃあ、「Let it go.」で「内なる力を解放させる」みたいな(笑)

遠藤 その通りだね。以上を合わせて「Let it go.」で「自分の中に渦巻いている力を、そのまま外に出してあげよう」と言っていることになるわけです。

今井 なるほど。これでなんとなく分かりました。ありがとうございました。

遠藤 はーい。

後日談

今井 ところで前回話していた「アナとなんちゃら」の正しいタイトルって何でしたっけ?

遠藤 『アナと雪の女王』!

付録:イメリン流の英文解釈

遠藤 本文では触れなかったけれど、この「Let it go.」って、学校では使役構文として習うんだよね。「let+人+動詞の原形」で「人に…させる」と暗記するように言われると思うんだけど、この文にもネイティブが感じる自然さがあります。

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 ①動詞「let」のつくった勢い(動的な矢印)が、まず「it」に当たる。これで「itをletする(それをそのままにする)」ってことね。

 ②動詞「let」の勢いが「it」を突き抜けて「go」にまで続く。これで「itがgoする(それが出ていく)」となる。

 ①、②を合わせて「let→(it→go)(それが出ていくままにする)」という解釈になるわけです。

今井 「it」は「①letの目的語」でもあり「②goの主語」でもある、みたいなやつでしたっけ?

遠藤 そうそう。学校文法流に解釈したらそうなるね。でも、大切なのは「単語がつくり出す流れ」を理解するってことだね。

今井 僕は文法の授業が大嫌いで、文法は実践から学んだと言っても過言ではないんですけど、解説されてみると「なるほど」と思うところがあるんですよね。まあ、自然さがないと、ネイティブでも使えるようになるはずがないですもんね。

遠藤 そうだね。このあたりのことは『英会話イメージリンク習得法』の第9章「英語の原始的構造」に書いてあるので、興味がある人は読んでみてください。

英会話イメージリンク習得法―英会話教室に行く前に身につけておきたいネイティブ発想

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