慎重な判断を支持したい。

 全国学力調査の結果が公表された。今年度から自治体の判断で、学校ごとの成績を公表することもできるようになった。だが、公表を予定する市区町村は今のところ少ないようだ。

 1年目だけに、様子を見た市町村も多いのかもしれない。ただ、成績がよくなかった学校にレッテルが貼られることは避けたい。そういう配慮が働いたことも確かだろう。

 学力調査は、テストを行うだけではない。参加した小中学生と学校からアンケートも取り、どんな授業方法や生活習慣が学力を高めることに役に立つかを分析している。

 点数や順位より、この分析を読んで行政や学校が政策や教え方の改善に生かすことの方が、ずっと大事だ。

 なかでも、総合学習にきちんと取り組んでいる子や学校は国語や算数・数学の成績も良い、という点は注目されていい。

 総合学習は、たとえば地理と化学で学んだことを使って環境問題を考えるような、教科横断型の学習だ。今の学習指導要領では学力低下批判をうけて主要教科の時間を増やすため、かわりに授業時間数を削られた。

 批判の一因は国際学力調査PISAでの日本の順位低下だった。しかし、PISAは本来、教科横断型の学力を理想とするテストだ。文部科学省の中央教育審議会での大学入試改革論議も、同じ方向を向いている。

 それは、知識よりも実社会で使える学力が世界的に求められているからだ。これからはむしろ総合学習のような学びが重みを増すに違いない。

 次の指導要領で総合学習をどう位置づけるか。調査を参考に、意義を見直すべきだ。

 保護者にとっても、参考になる項目はいろいろある。

 調査から全体的に読み取れるのは、学ぶ動機づけや、社会に関心をもつことの大切さだ。

 ニュースをよく見ている子、学校行事に対する関心が高い家庭の子は、学力が高い傾向があるという。机で勉強するだけが勉強ではない。そう実感させられる。

 都道府県別の成績をみると、大半の都道府県が小さな点差の幅に収まっている。これまで下位だった県が、先生の授業研究や研修を増やしたり、上位の県のやり方に学んだり、努力してきた成果でもあろう。

 どの地方に住んでも同じ水準の公教育を受けられる。日本の強みは健在といえる。わずかな点差に一喜一憂するより、地道な授業改善に役立ててほしい。