The Economist

イラクとシリアの聖戦主義者:イスラム国を止めろ

2014.08.27(水)  The Economist

(英エコノミスト誌 2014年8月23日号)

イラクでイスラム国を止めるのであれば、シリアでも止めなければならない。

過激派組織「イスラム国」戦闘員、シリアに推計5万人

シリア北部ラッカの通りを行進するイスラム教スンニ派過激派組織「イスラム国(IS)」の戦闘員たち〔AFPBB News

バラク・オバマ氏はイラクでジハード(聖戦)主義者を攻撃し、たとえ米国の行動が遅く、控えめだったにせよ、今のところは成功を収めている。しかし、「イスラム国(IS)」は阻止せねばならず、このためオバマ氏はシリアでもISを攻撃しなければならない。これは、イラクでの攻撃よりずっと難しいことが分かるだろう。

 イラクでは、破壊行動に燃える狂信的なISの進撃が今のところ食い止められている。イラク北部シンジャール付近の山に避難していた少数派のヤジド派の大半は救出された。イラクで唯一それなりに統治されているクルド人自治区では、差し迫った危険はすぎ去った。

 6月にISが占拠し、イラク第2の都市モスルを氾濫させる恐れのあった大規模ダムは、米国の空軍力とイラク、クルドの地上部隊によって、政府側の手に奪還された。

 一方、イラクの政治は好転し、破滅的な8年間の末にシーア派のヌリ・アル・マリキ首相が退陣に追い込まれた。世俗的なマリキ氏は、自身の支配機構にイラクのスンニ派を入れず、軍や治安部隊の要職を仲間のシーア派で埋め尽くすことで、穏健なスンニ派を過激派の腕の中へ追いやった。運が良ければ、マリキ氏の後継首相に指名されたハイダル・アバディ氏が、今よりずっと幅広いイラク人を受け入れる政府を樹立するだろう。

地域と世界にとっての脅威

 しかし、ジハード主義の脅威は全く終わっていない。罪のない人々がいまだに殺されている。8月19日、オバマ大統領の空爆に対する報復として、英国訛りのISのジハード主義者が米国人ジャーナリストの首を切り落とした。ISはまだ、その旧名である「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」に出てくる両国の3分の1を支配している。

 ISは世界的なカリフの樹立を目指し、国境を軽んじている。そして外国の若いイスラム教徒を引き付けており、その一部は母国を標的にするだろう。要するに、ISはこの地域、そして全世界にとっての脅威なのだ。

 イラクでISを攻撃することは、解決策の半分でしかない。もしISがイラクから追われたら、戦闘員はシリアで態勢を立て直し、やがて反撃に出るだけだ。イラクだけでなくシリアでもISを攻撃しなければならないのは、このためだ。

 オバマ氏は今、最初からやっているべきだったことをやるべきだ。つまり、同じようにISに脅かされているシリアの穏健派反政府勢力にまともな武器を供与するのだ。しかし、外部から武器と資金の供与があったとしても、穏健派はISに打撃を与えることはできない。それには、米国とNATO(北大西洋条約機構)加盟国による空爆が必要だ。

 これは厄介な問題を投げかける。国際的に認められてい…
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