種目別に選手の収入をトップから32位まで並べてみると、テニスではトップに近い選手以外は収入が大幅に低いことがわかる。その上、各選手は自費でコーチを雇い遠征費を負担しているのだ/画像をクリックして関連インタラクティブを見る≫

 今年の全米オープンテニスの賞金総額は過去最高の3830万ドル(約39億9000万円)に達する予定だ。このうち男女のシングルス優勝者はいずれも300万ドル(約3億1200万円)を受け取る。これ以外にボーナスを受け取る可能性もある。女子第1シードのセリーナ・ウィリアムズと男子第1シードのノバク・ジョコビッチは、世界で最も稼いでいるアスリートの部類に入る。

 しかし、テニスの主催者側はそのような大金をどのように配分しているのだろう。

 グランドスラム(テニスの4大大会)では32人の選手がシード権を得る。ウォール・ストリート・ジャーナルはこれに着目し、32番目の稼ぎのテニス選手が今年これまでで稼いだ額を、他のスポーツで32番目の選手と比較した。今月18日の時点で、32番目の稼ぎのテニス選手は男子がスペインのフェルナンド・ベルダスコ(30)で75万7446ドル、女子がオーストラリアのケーシー・デラクア(29)で45万7429ドルだった。広告出演料は含まない。

 比較すると、野球の大リーグ(MLB)で32番目の稼ぎの選手はコロラド・ロッキーズの遊撃手トロイ・トゥロウィツキーで、2014年の1年間で1600万ドル以上を稼ぐ見通しだ。アメフトのナショナル・フットボールリーグ(NFL)で32番目はダラス・カウボーイズのクオーターバック、トニー・ロモで、1200万ドル近く。バスケットボールのNBAで32番目の選手はデトロイト・ピストンズのジョシュ・スミスで、収入は1350万ドル程度と予想されている。

テニスではトップと32位の差が大きい/画像をクリックして関連インタラクティブを見る≫

 言うまでもなく、今紹介した主要なチームスポーツの選手はこれを年俸として受け取っており、テニスなど個人スポーツの選手は試合の勝敗に応じて賞金を受け取るという違いはある。では、ゴルフはどうだろう。ゴルフは一見すると、テニスと最も似ているように思われる。しかし、今年のPGAツアーで32番目の稼ぎだったJ.B.ホームズは、200万ドル以上を手にしている。

 この理由は、ゴルフがテニスをはるかに上回る賞金を出すことにある。2014年のPGAトーナメントの賞金は3億0800万ドルに達する見込み。これに対し、男子テニスのATPトーナメントの賞金は、グランドスラムを含めて1億6000万ドルだ。

 テニス選手のマルセル・グラノリェルス(28)は、「シーズンが終わると、トップ選手と残りの選手で稼ぎに大きく差が出る」と述べる。

 バルセロナ出身で現在世界ランク42位のグラノリェルスは、今年に入って82万5789ドルを稼いでいる。シングルスで56万6626ドル、ダブルスで25万9163ドルだ。

 グラノリェルスは「ゴルフを例に取ると、(ローリー)マキロイは今年700万ドル近く稼いでいる。ノバク(ジョコビッチ)と同じくらいだ」と述べ、「30番目のゴルフ選手の稼ぎは200万ドルを超えている。自分の稼ぎはダブルスを除くと、50万ドル強だ。トップの稼ぎと比較すると、テニスだと1対14だが、ゴルフだとおよそ1対3だ」と話した。

 別の面から見ると、大リーグ選手の最低年俸は50万ドル。これはグラノリェルスが今年シングルスで稼いだ額とほぼ同等だ。

 しかも、テニスでは選手自らがさまざまな費用を支払う必要がある。グラノリェルスはコーチとトレーナーに給与を支払うほかに、彼ら3人にかかる諸経費として年間推定約20万ドルを支出している(彼ら3人は長距離を飛行機で移動する際、ビジネスクラスを利用する)。

 賞金のほかに稼いでいる金額を考慮すると、「自分のランキングにしては、かなり良いスポンサーがついていると思う。しかし、スポンサーが30位のゴルフ選手と契約するには、自分の契約額にゼロを1つ足さなければならないだろう」と彼は話す。

 グラノリェルスは今年の賞金の大半を全仏オープンで得た。ベスト16に進出して20万ドル近くを稼いだのだ。

 だがボウリング選手の稼ぎはもっと悪い。

 PBAツアーでランキング21位のライアン・シミネリによると、プロボウリングは過去5年間厳しい状況にあり、米国では試合が年に十数回しか行われないという。シミネリは13年に5万7942ドルを稼ぎ、賞金ランキングで16位に入った。彼は今年に入って1万4421ドルを稼いだが、試合の移動のために1000ドルから1500ドルがかかっているという。

 シミネリは「ボウリングで一流でも、中流の生活しか送れない。他のスポーツで自分と同水準の選手が何百万ドルもを稼いでいるのに」と話した。「わたしはゴルフとテニスの大ファンだし、彼らにはその金額を受け取れるだけの価値があると思う。だが、ボウリングはもっと高く評価されても良いのではとも思う」と言った。

 こうしたスポーツ選手の報酬から学べることは、子供に素晴らしいアスリートの素質が見られたら、野球かバスケットボールの選手になるよう仕向けるべきだということだ。しかし子供が地下室でゲームばかりしているといって悲観する必要はない。マイケル・ヴァンガーウェンは今年、ダーツを投げて63万5393ドルを稼いでいる。

関連記事