これまで米国株に投資する際、日本語で上場企業を紹介した手ごろなハンドブックがありませんでした。『米国会社四季報』はそのニーズに応える本です。



この本を出している東洋経済新報社は日本の『会社四季報』の出版元であり、信頼できる出版社です。

問題は「日本人がアメリカの会社を調べることが出来るの?」という点ですが、この『米国会社四季報』ではアメリカの格付け機関、スタンダード&プアーズの関連会社であるS&PキャピタルIQからデータの提供を受けています。

企業の説明の箇所は、東洋経済新報社の編集部が独自に書き下ろしています。これはアメリカ人には当然わかっていることでも、日本の読者には馴染みの無い事柄を噛み砕き、簡潔に説明するために取られた編集方針だと思います。この部分はとても文章がこなれていて、業務内容が驚くほど良く理解できます。

なお業績に関しては過去5年分のデータに加えて、今年(2014年)、来年(2015年)、再来年(2016年)の予想数字が掲載されています。(但し「注目会社」のみ)

これらの予想はキャピタルIQが集計したコンセンサス予想が使用されています。キャピタルIQのコンセンサスは広くアメリカの投資家に利用されている数字なので(=例えば英語版ヤフー・ファイナンスの数字もキャピタルIQです)これを利用するのが正しいです。

戸惑うのは、普通、「売上高(SalesないしはRevenue)」に相当する箇所が「営業収益」と表示されている点です。これはロイヤルティなど付帯的な収入を除外した、主業務からの売上高を示したという意味でわざと「営業収益」という名称を用いたのだと説明されています。我々の普段銘柄分析している感覚からは「売上高」の方が馴染みがあるので、この欄はすべて「売上高」と読み替えてください。

もともとスタンダード&プアーズは債券の格付けがルーツなので、【S&P格付け】というデータが記載されています。これはとりわけバリュー投資をする際の足切りに役立つと思います。「A」以下の会社はバッサリ切り捨て、無視すれば良いでしょう。

あと【関連ワード】という項目があります。これは投資テーマで絞り込む際などにとても役に立つと思います。たぶんS&Pではなく東洋経済新報社編集部が独自で付与した「タグ」だと思うけど、とても利用価値が高いと思います。

最後になりますが、一番大事な点で、なおかつ僕がこの本に最も感心した点は、「どの銘柄を収録するか?」という問題です。本書では注目銘柄102社、有力・成長厳選企業583社の合計685社が掲載されています。

いまNYSEには約2300社、ナスダックには約2800社が上場されているので、この685社という数字は、そのほんの一部ということになります。

しかし個人投資家がアメリカ株に投資する際は、この685社でじゅうぶんだと思います。そこでは誰もが知っている優良企業だけでなく、今話題の急成長企業も網羅されているからです。例えば上場して未だ日が浅い、ツイッター(TWTR)などのような会社も、ちゃんと収まっています。アグレッシブ・グロース投資の投資スタイルが好きな個人投資家も、自分の探している銘柄が収録されておらず、落胆するということはないと思います。

この採録銘柄の取捨選択の絶妙さが、日本の『四季報』に比べて厚さが薄い点を、補って余りあると思います。