女性が職場で十分に活躍できるようにしよう。そんな動きが広がっている。

 経団連が主な会員企業約50社の女性登用計画をまとめたところ、27社が数値目標を掲げた。経団連は他の会員企業にも、計画づくりを呼びかけている。

 日本の就業者に占める女性の比率は4割強で、ほぼ主要国と並ぶ。しかし、管理職となると1割にも届かない。米国では4割、欧州各国で3割を超えており、日本の少なさが際だつ。

 日本では出産を機に職場を去る女性が少なくない。長く働き続けることが前提である限り、出産・育児で離職すれば昇進のチャンスは遠くなりがちだ。

 政府は03年に、指導的地位に女性が占める割合を20年までに30%にするという目標を決めている。ようやくではあっても、経済界全体で具体化を始めたことは評価できる。

 先行する企業をみると、女性社員のキャリアを戦略的に考えるとともに、社員全体の働き方を見直す例がめだつ。社員を長時間縛りつけていては、家庭と仕事の両立は難しいからだ。

 長時間労働を避けるために午後8時に消灯する企業がある。始業・終業時間を自分で決められるフレックスタイムと在宅勤務を組み合わせ、柔軟な働き方を認めている企業もある。

 男性社員に育児休業をとるよう促す企業も少なくない。女性が活躍するためには、男性が家庭で応分の責任を果たすことが不可欠だからだ。

 今後は親の介護をする人も増える。仕事と家庭を両立するための工夫は避けて通れない。

 管理職に占める女性の比率の数値目標を経営トップが掲げれば、こうした改革の推進力となる。日本企業の風土や文化にも変化をもたらすはずだ。

 安倍政権は「女性の活躍促進」を成長戦略の柱として掲げている。役員の女性比率や女性の登用プランなどの情報を企業にオープンにしてもらうほか、女性の活躍のための新法を国会に出す方針だ。

 今年の成長戦略には、男性の育児参加を促すことや、男女ともに長時間労働を減らし、年次有給休暇の取得を進めること、などが並んでいる。

 その目標はもっともではあるが、発想が狭すぎないか。人間が性別を問わず仕事に打ちこめる環境をつくることは本来、成長戦略と位置づけるものではない。男女を問わず、働き方全体を見直す契機にすべきだ。

 成長に直結するかどうかは別にして、誰もがより良く働き、暮らせる社会をめざしたい。