(2014年8月25日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム(通称ジャクソンホール会議)の昼食会で、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁は米連邦準備理事会(FRB)のジャネット・イエレン議長の隣に座った。そして講演のため立ち上がると、自分のスピーチはイエレン議長のそれに似ていると指摘することから話を始めた。
欧州の失業は構造的(それゆえ恒久的)だが、米国の失業は景気循環的(そのため、経済回復とともに解消する)というのが既成概念だが、現実はもっと込み入っているというのがECBとFRBのメッセージだ、とドラギ氏は語った。
先進国の労働市場を巡る不確実性
「状況は複雑なんだ!」。今年のジャクソンホール会議からのメッセージはこれに尽きたと言ってもいいだろう。グランドティトン国立公園の壮大な景色を背景に開かれたジャクソンホール会議のテーマは労働市場であり、議論は高失業率が何年も続いた後の先進国の労働市場を巡る不確実性を反映していた。
高い失業率――現在米国で6.1%――は、パートタイムの雇用者数など、労働者にとっての他の変化を不明瞭にしてきた。完全雇用の割合に関する曖昧さは、各国中央銀行が金利を動かすべき時期を見極めるのを困難にしている。
イエレンFRB議長はたくさんの疑問を投げかけたが、答えはほとんど出さなかった。景気後退を理由に何人の労働者が退職を前倒ししたか? 中位技能職の減少は、パートタイムの仕事の永続的な増加を意味したのか? 現在賃金を抑制しているのは、企業の積もり積もった賃金削減願望だったのか?
経済が完全雇用からどれだけかけ離れているか知ることは、金利の引き上げ時期を決定するうえで極めて重要だ。
「この(雇用)ギャップの大きさについての判断は、労働市場の構造の継続的な変化によって難しくなっている」とイエレン議長は語った。
イングランド銀行のベン・ブロードベント副総裁は、生産性の伸びの落ち込みのせいで経済が最大の生産高に近いかどうかを判断しづらくなっている英国にとって、雇用の力学を理解することは極めて重要だと述べた。「何が供給で何が需要かを見極めるには、労働市場に関するデータも参照する必要がある」