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鉄道自殺未遂、未通報多く JR各社や私鉄 再発防止へ支援手つかず

2014年08月24日 03時00分 更新

記者:坂本信博


 鉄道自殺が後を絶たない中、駅のホームから線路に飛び込むなどした人が列車と接触する前に助け出された場合、JR各社など鉄道会社の多くが、本人のけがや鉄道側の損害がなければ家族や警察に連絡・通報せず、そのまま立ち去らせていることが、西日本新聞の取材で分かった。自殺者の4割に自殺未遂歴があるともいわれており、鉄道自殺を図ったことがある人を周囲が把握し、支援する仕組みづくりが急がれる。

 鉄道各社によると、線路内に立ち入った人が負傷したり、運休・遅延や車両の破損などで損害が発生したりした場合は、「救急搬送や被害請求の必要があり、身元を確認して警察などに通報する」(JR西日本)ことが徹底されている。

 しかし、けがなどがなかった場合には、「必ず通報する体制にはない」(同)、「個人情報の問題もあり、名前や連絡先は聞かない」(JR東日本)など、多くが身元確認していない。

 九州でも同様の傾向で、JR九州は「マニュアルはなく現場の判断に委ねている。全員に名前などを確認するわけではない」。西日本鉄道も「後続列車に再発警戒を促すほか、挙動不審な場合は警察に通報して保護をお願いしているが、立ち去る人が多い」という。全駅に転落防止のホームドアがある福岡市営地下鉄は「線路内に入ろうとした利用客がいれば制止して保護し、警察に必ず引き渡して対応を依頼している」というが、全国的にも少数派だ。

 国土交通省によると、線路内立ち入りなどによる輸送障害は2013年度に全国で2036件起き、約3割の599件が自殺だった。「自殺と特定できなかったが、その可能性がある事例も少なくない。けがも、運休や30分以上の遅延もなかった場合は事業者が国に報告する必要はないため、未遂に終わった鉄道自殺の件数は把握できていない」(鉄道局安全監理官室)という。

 NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)の清水康之代表は「外傷の有無ではなく精神的な状況の危険度、自殺リスクを踏まえた判断が必要であり、自殺未遂の疑いがあれば警察に通報することが望ましい。鉄道会社だけでなく行政が連携し、支援につなぐ体制を整えるべきだ」と話している。









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