オスプレイ:佐賀空港配備 先行き不明 農漁業者に不安

毎日新聞 2014年08月22日 22時47分

 政府が佐賀空港(佐賀市)に垂直離着陸輸送機オスプレイを配備する計画を打ち出し、空港周辺の農漁業者を中心に戸惑いが広がっている。住民が少ないことなどから白羽の矢が立ったようだが、空港周辺は大勢の人たちが広大な農地と漁場で生計を立てており、騒音や事故、軍事基地化への不安は根強い。しかし県は静観の構えで、受け入れの是非を誰が判断するのか不明確なことへの不満もくすぶっている。

 佐賀空港の南側は有明海に面し、北側は見渡す限り干拓農地が広がる。この時期は大豆や水稲が栽培され、冬には麦畑に変わる。「オスプレイの風圧とか、小さな麦や大豆の芽が出た頃には影響がかなり出るんじゃないかな」。空港西側の約60ヘクタールで大豆と麦を生産する農業会社「南川副ファーム」の久米安憲社長(66)は日焼けした顔を曇らせた。

 政府計画は、陸上自衛隊に導入するオスプレイなどを佐賀空港に配備する。更に「沖縄の負担軽減のため」として、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)が名護市辺野古に移設されるまで米軍オスプレイも暫定移駐する。

 そもそもなぜ佐賀なのか。小野寺五典防衛相は軍事的な理由も挙げながら「海に面しているので環境面に配慮しやすい」と説明しており、陸自幹部は「民家がほとんどない」と語る。空港から最も近い集落でも約2キロ離れていることから、他の空港と比べ騒音問題や事故の影響を抑えやすく、住民の理解が得やすいと考えたようだ。防衛省関係者は「周囲が田んぼなので用地取得が可能」と見る。

 しかし、政府が一部をオスプレイの駐機場などに整備しようとしている空港西側の農地95ヘクタールは1960年代、干拓事業に伴う補償として地元漁業者に譲渡された。地権者は400〜700人とされ、県有明海漁協(佐賀市)の4支所が管理し、農業会社や個人農家に貸している。

 「沖縄の負担軽減はよく分かる。でも、どこかの国の攻撃対象になったりしないか……」。空港西側で農地を借りている50代女性は戸惑い、「国は諫早湾干拓事業のように反対住民の声を聞き入れず、ごり押ししてくるのでは」と不信感を持つ。社員5人を抱え、年間の借地料300万円を払いながら経営がようやく軌道に乗ってきたという久米社長も「仮に漁協が土地を手放すとしても、すんなりとはいかん」と語る。

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