[画像]ヴィッツは海外ではヤリスの名で先進国向けに輸出されている。国内モデル最廉価版には価格を抑えるためにダイハツ製の3気筒エンジンを搭載している
ヴィッツやマーチに代表される小型車、いわゆるBセグメントの日本車は、今まさに世界のマーケットで激戦を繰り広げている。もちろん世界で戦っているのはBセグメントだけではない。しかし、日本や米国、西ヨーロッパなどの先進国ばかりでなく、東ヨーロッパや中国、インド、南米など富める国、富まざる国に関わらず世界のあらゆる地域で戦うという意味においてBセグメントは自動車メーカーにとって世界戦略の中核になるクラスだ。
今回は、日本の自動車メーカー各社のグローバルBセグメントカーについて整理してみたい。日本が世界に誇る最先端のハイテクが、新興国では思わぬ弱みになることもあり、日本の優れた技術が必ずしも商品性の高さにつながらない。しかし、一方であっと言う間に経済情勢が変わるのも新興国ならではの現象だ。日本の基幹産業である自動車はまさに一筋縄ではいかない総力戦が求められているのだ。
そもそも「セグメント」とは何か
冒頭に出て来たBセグメントという言葉を初めて聞く方もいられるだろう。セグメントとは要するにクラスのことだ。かつて自動車メーカーはそれぞれに自社の製品を指標にしてクラスを表現していた。トヨタで言えば、スターレット・クラス、カローラ・クラス、コロナ・クラス、クラウン・クラスという具合だ。しかしこれだと日産ではチェリー・クラス、サニー・クラス、ブルーバード・クラス、セドリック・クラスになり、メーカーごとの競合車が解り難い。さらにチェリーが後継車のパルサーになるとクラスの名前が変わってしまって不便だ。
そこで一部の自動車雑誌が、イタリアで使われていたクラス分け表記に目を付け、小さい方から順にA、B、C、D、E、Lの6つに分けたのが日本でのセグメント分類の始まりだ。クラスによっては通常モデルとプレミアムがあってややこしいのだが、今回はひとまず解り易いことを優先し、とりあえず一台ずつ実例を挙げると以下の様になる。
A:フォルクスワーゲンUP!
B:フォルクスワーゲン・ルポ
C:フォルクスワーゲン・ゴルフ
D:メルセデスベンツCクラス
E:メルセデスベンツEクラス
L:メルセデスベンツSクラス
ちなみにEの後がLなのはイタリア語の【Lusso】(豪華・贅沢)を意味し、サイズの上限は無い。Sクラスより大きいマイバッハやロールスロイスもこのクラスに入る。原則としてこのセグメントで表記されるのはハッチバックとセダンとワゴンで、SUVやスポーツカーは含めない。
今回取り上げるBセグメントは概ね1,000ccから1,500ccの排気量を持ち、全長およそ3.6から4メートルのモデルを指す。