先行研究の効率的な探し方:レビュー論文には「過去への入口」と「軸」と「これからの課題」がある!?

中原淳 | 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授

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先行研究を効率的に調べる方法として、「レビュー論文」や「メタ分析論文」を読むというものがあります。

レビュー論文とは、ワンセンテンスで述べるのならば「過去の先行研究を、ある軸をもうけることで、整理整頓した論文」。

メタ分析論文とは「メタアナリシスという手法を使って、過去の先行研究の分析を統合して、知見を統合する論文」のことをいいます。

要するに、前者も後者も

「まとめ論文」

とお考え頂ければ結構です。

ま、「アカデミックなNAVERまとめ」ですな。

先行研究の概観をつかむために、レビュー論文やメタ分析論文を読むことは、研究者の方々にとっては、アタリマエのことです。が、このことについて、先日、ある社会人大学院生の方からご質問を受けましたので、今日の日記を敢えて書きます。

まず、どんな研究領域にでも、レビュー論文は存在することが多いものです。その調べ方は、Cinii、J-Stage、Google scholarといったサイトで、

「自分の調べたい研究領域の概念

レビュー論文でよく用いられる用語」

をinputすることで可能になることが多いものです。

Cinii

http://ci.nii.ac.jp/

J-stage

https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

Google scholar

http://scholar.google.co.jp/

CiniiやGoogle Scholor以外にも分野ごとにたくさんの論文データベースが存在しますが、今は、研究者相手にお話ししているわけではないので、より簡単に、かつ無料で、かつ日本語で利用できる可能性の高いものにしぼって、話題をすすめます。

日本語での文献サーチが終わられたら、英語にしてみることも大切なことですし、分野ごとのより専門的なデータベースをひろってみることも一計です。

後者のレビュー論文でよく用いられる語とは、

「研究課題 レビュー 展開 理論 動向 メタ分析」

などであることが多いものです。

たとえば、今仮に、「リーダーシップに関するレビュー論文」を調べてみることにしましょう。Ciniiで「リーダーシップ 動向」などといれてみます。そうすると、それなりに論文がヒットするはずです。ぜひ、皆さんも探してみてください。かくしてレビュー論文を見つけます。

ところで、レビュー論文が大切なのは、なぜかと申しますと、

1.レビュー論文の中には

「論文を整理する軸」がある

=先行研究を読むための「羅針盤」になる

2.レビュー論文のなかにはさらに

「過去のレビュー論文へのリンク=過去への入口」がある

=さらに過去をたぐるための手がかりになる

3.レビュー論文の中には

「現在までの到達点」と「今後の課題」がある

=自分の研究のオリジナリティをさぐる

手がかりになる

からです。

先ほど申し上げましたとおり、レビュー論文とは、独自の軸やカテゴリーによって、過去の膨大な研究論文を整理整頓した論文ですから、そこには、多くの場合、「過去の膨大な研究論文を整理するための軸やカテゴリーがもうけられていることが多い」のです。典型的には、過去の膨大な研究を2軸4象限で整理して、おら、こんな整理でどうだーなんて主張しているものなら、腐るほど見つけることができるでしょう。

しかし、たかが軸、されど軸です。軸を把握しておけば、過去の膨大な先行研究の海に、投げ出されても、少なくとも「溺死」することは少なくなります。

また、この軸(整理のためのカテゴリー)といった整理のやり方が、レビュー論文のオリジナリティになりますので、当然、レビュー論文の冒頭では、過去のレビュー論文のあり方について言及があることが多いものです。

レビュー論文の執筆でとわれる基準のひとつは「網羅性」です。レビュー論文には過去のレビュー論文に関する言及もありますし、過去の先行研究へのリストも存在します。

ですので、より深く歴史を知りたいと思ったら、レビュー論文から過去をたぐっていけばよいのです。

最後に、レビュー論文には「過去の到達点」と「これからの課題」が述べてあることが多いものです。

以前にも申し上げましたが、研究には「オリジナリティ」がなくてはなりません。ということは、「自分のやろうとしていること」が「過去の到達点」に含まれているのならば、それは、どんなに意義深くても、「研究としては成立しない」ことになります。

そして「これからの課題」に書いてあることは、研究的に意義が深いと研究者コミュニティが見なしていることですので、その中に自分の研究のタネを見つけられれば、それはそれで意義が確認できることになります。

今日は研究者にはアタリマエダのクラッカーのことかもしれませんが、社会人大学院生の方向けに書いてみました。また、このことはわたしの研究分野を想定して書いてあるので、どんな研究分野にも言えることか、どうかは僕には判断できません。

レビュー論文を手がかりに

先行研究の大海をぜひ冒険してみてください。

そこにはまだ見ぬ「お宝」が埋まっているかもしれません。

といいましょうか、、、

研究なんて「穴」だらけです。

世の中には「わかっていないこと」が膨大にあることを

すぐにおわかりになるのではないか、と思います。

そして人生は続

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この記事はNAKAHARA-LAB.NET(2013年10月4日)再掲記事です。NAKAHARA-LAB.NETは、人材開発・人材育成に関する記事が毎日投稿される中原淳のブログです。Yahoo「個人」の方には、しばらくはNAKAHARA-LAB.NETの過去記事の中でアクセスが多かったものをのせていきます。

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中原淳

東京大学 大学総合教育研究センター 准教授

東京大学・准教授(経営学習論)、東京大学大学院 学際情報学府 / 東京大学 教養学部 学際科学科 准教授(兼任)。経営学習研究所 代表理事、最高検察庁 参与、NPO法人カタリバ理事など。博士(人間科学)。企業・組織における人々の学習、コミュニケーション、リーダーシップを研究。単著に「職場学習論」「経営学習論」(東京大学出版会)、共著に「リフレクティブマネジャー」「職場学習の探求」「プレイフルラーニング」「インプロする組織」など多数。各種のワークショップ、セミナーをプロデュース。

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