(^_^)●●● 風の交差点 vol.29 ●●● 

                
                      1999.12.29                        

            【とっておきの犬の本ーー2】

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              毎週水・土曜日発行

            発行人/kyoshiko

           [1999.9.11創刊]

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 前回に引き続き、『相性のいい犬、わるい犬』(スタンレー・コレン著、木村博
江訳 文藝春秋)から、世界の著名人と犬の話をお届いたします。

[心打たれる話ーー4]

 イギリスの詩人、ジョージ・ゴードン・バイロンは、20歳ぐらいのときに、ボ
ースン(水夫長)という名のニューファンドランド犬と出会った。ふたりはいつも
一緒で、当時、在学中だったケンブリッジ大学へも連れていき、ほかの学生たちの
反対を押し切って、学生寮でともに暮らした。

 そのボースンが発作を起こしてわずか5歳で死んでしまうと、バイロンは亡き愛
犬のために霊廟(れいびょう)と記念碑を建てさせ、自分が死んだらボースンの横
に葬るよう、遺言状まで書いた。

 次は、ボースンの記念碑に刻まれた哀悼詩から。

 ここに
 ひとつの亡骸(なきがら)が眠る
 その美しさは虚栄に通じることなく
 強さは尊大に通じることなく
 勇気は蛮行に堕することなく
 人の美徳をすべてそなえ
 悪徳には染まらなかった

 この言葉も、人に手向けられたものならば
 虚しき追従となろう
 だがここに悼むのは
 ボースンなる犬
 ニューファンドランド犬として
 1803年5月に生まれ
 ニューステッド・アベイにて
 1808年11月18日に逝きしもの

 栄光と無縁なれど、生まれによりて高位に就きし
 誇り高き人の子が土に帰るとき
 彫刻師はその技をつくして悲しみを飾り
 高々とそびえる墓が、その下で眠れるものを示す
 万事終わるとき、墓の下に見ゆるは
 ありし日の彼の姿ではなく、あらまほしき姿
 なれど哀れなる犬は、この世でもっともたしかなる友
 だれより早く迎え、だれよりも先に守り
 誠実なる心は、主人から離れず
 働くも戦うも、生きるも死ぬも、ひたすら主人がため
 誉れなき失墜、認められることなき美徳
 その魂は天に昇ることもなくーー
 かたや人間は、愚かなる虫けら! 許しを望み
 われこそ天にふさわしき者なりと声高に告げる

 ああ人間よ! いっときのはかなき存在よ (中略)
 汝ら、たまさかにこのつつましき墓を眺める者よ
 通りすぎよーーこれは汝が詣でるべき墓にあらず
 この石碑は亡き友を刻むもの
 その友とはただひとりーーここに眠れるもの

 また、代表作のひとつと言われる『ドン・ジュアン』にも、バイロンは犬に
関する詩を書いた。

 快きは、番犬の朗らかなる吠え声
 近づくとともに聞こえてくる、深く嬉しげなるうなり声
 いとおしきは、われらが姿をとらえて
 みるみる輝きを増すその目


 紙幅が尽きそうなので、大急ぎで他の著名人のエピソードのいくつかをあげて
みよう。
・ヴィクトリア女王は、19歳の戴冠式の日、式から戻るや重いドレスを脱ぎ捨
て、愛犬ダッシュ(キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル)をお風呂に
入れてやった。

・心理学者ジークムント・フロイトは診察に愛犬ジョフィ(チャウチャウ犬)を
立ち会わせ、患者のストレスに敏感な犬の反応を参考にした。

・ジョン・F・ケネディーほかアメリカの歴代大統領は揃って大の犬好きで、そ
の恩恵により、危うく政治生命を助けられる場面も少なからずあった。
 しかし、ハリー・トルーマンだけはちがった。彼は、支持者の女性から贈られ
たフェラーという名のコッカー・スパニエルを厄介がり、ごく短期間でホワイト
ハウスから追い出すことに成功した。並はずれた強さと支配欲で定評のある彼の
性格は犬たちと相容れず、トルーマンにとっては、犬に関することごとくがいま
いましくてならなかった。彼はそのために、世論から強烈なしっぺ返しをくらう
ことになった。

・女優ジーン・ハーローの名(迷)言。
「一緒にいて私が引き立つなら、どんな犬でも大好きよ」。

・映画俳優ハンフリー・ボガードは、タフな男のイメージを崩さないよう、犬種
選びにも気を使った。彼のそばにいるのは、いつも、ボクサーやスコティッシュ
・テリアなどタフで自信に満ちたタイプの犬ばかりだった。

 いかがでしたか? さまざまな人と犬の話。お楽しみいただけたらうれしいで
す。


* 1999年もあと2日となりました。今年1年、『風の交差点』をご愛読い
ただきましてどうもありがとうございました。来年は1月5日から配信させてい
ただきます。
 みなさま、どうぞ良いお歳をお迎えくださいませ。来たる2000年が、みな
さまにとって幸多き年になりますよう、心よりお祈り申し上げております。


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