超電動ロボ鉄人28号FX 全話解説
第45話 傷だらけのヒーロー

脚本:大川俊道 絵コンテ・演出:西澤晋 作画監督:本橋秀之 メカ作画監督:亀垣一、渡部圭祐


 パノラマ島のレジャーランドがアメリカ大統領ビル・ハミルトンの娘であるリサの誕生日パーティーの為に貸し切りとなった。しかしレジャーランドに脱獄した凶悪犯パーカー兄弟がロボット・ボースンが襲いかかり、リサが拉致されてしまう。
 だがパーカー兄弟には凶行に走った背景があった。それは局地戦用の新兵器を開発していたパーカー兄弟の父は、その新兵器があまりにも危険であった故にアメリカにより抹殺されてしまった哀しい過去があった。それ故にアメリカへ彼は逆恨みをしており、今回の犯行へ走ったとも考えられるのだ。アメリカ側は100億ドル用意しろとの兄弟の要求にこたえる一方で、救助作戦として正人達の出動を依頼していた。
 正人と三郎はアジトに潜入してリサを救出するが、脱出の際三郎が相手の流れ弾を受けてしまい負傷してしまう。彼は正人とリサを逃がす事を選んだ。襲いかかるボースンへブラックオックスを呼んで三郎はパーカー兄弟に捕まらないようにしていたが、その行動も虚しくパーカー兄弟に捕えられてしまう。
 リサを救出してビルを始めとするアメリカの人々が湧き立つ一方で、パーカー兄弟は三郎を人質にした事と、化学兵器を満載したトレーラーをフロリダへ向かわせた事を宣言する。トレーラーには三郎が閉じ込められており、もし三郎を救出する為にトレーラーを止めようとしたら積載した化学兵器が発動してしまう。再度100億ドルを求めるパーカー兄弟の脅迫に屈するか、フロリダ全体と人一人の命。どちらを選ぶかが大統領に委ねられる事になってしまった。
 究極の選択に頭を悩めたアメリカ政府。その末にサーミクレイズ爆弾を狙撃させてトレーラーを一瞬で蒸発させる手段を取る事を決めたが三郎も焼死してしまう。ビルは自分を自嘲した――自分の娘を助ける事が出来ても他人を救う事が出来ず争いを止める事が出来ない人間であると。リサから三郎を助けてほしいと頼むも、自分には金と人の命を天秤にかける事は出来ない事と、ただ自分の選択が後において正しいか間違いか、未来の人々への道標になる事が自分のできる事であったと言う。
 だが三郎を見捨てる事は正人には出来なかった。双葉、マイケルと共に鉄人を囮としてボースンの目を引きつけているうちに、正人はフロリダへ向かうトレーラーへ飛び乗ろうとする。爆弾投下までタイムリミットは1時間。鉄人とボースンのバトルに巻き込まれる中正人は傷だらけになりながらも、疾走するトレーラーから三郎を救出する事に成功。マイケルにより操られた鉄人にもボースンは粉砕された。正人と三郎が乗ったままのトレーラーに爆弾が投下されようとしたが、二人は鉄人に飛び乗り間一髪のところで爆発に巻き込まれずに済んだ。
 そして今回の件でビルは正人達へ勲章を送ろうとしたが、彼らはこれを拒んだ。自分達は当たり前の事をしただけであり、傷だらけになってまで勲章を貰おうとは考えていなかったからだ。そしてヒーローとしては勲章をもらって人々に讃えられるよりも、ごく普通の少年としても日常を楽しみたいのである。


親友を救え!アメリカ最大の危機の中正人は……!!

 事実上最終回1個前か、第2部において1,2を争うハードで切羽詰まった感が伝わるエピソードです。志茂脚本回に匹敵するか上回るのではないかと思ってしまう程です。

 アメリカ政府の描写がとにかく細かくてビックリ。相手の要求に屈するか、三郎及びフロリダまで身捨てざるを得ないかの描写で国民によるアンケート調査の結果が賛成、反対、未回答と分かれたり、決断においてはもし誤った場合を想定して大統領が政権交代する際のシナリオを用意したり、リサに対して金と人命を天秤にかける事は出来ないと述べ、自分は次の世代の人々が生きる際、良くも悪くも参考とならなくてはならないとの覚悟が盛り込まれており、一体これは何のアニメなんだ?と思ってしまう程力が入っています。
 正人の三郎と共に自決を覚悟するシーンがあったり、かませ犬に甘んじていたマイケルが鉄人で相手を倒し、二人を救出する大手柄を立てたり、そして最後の勲章を望まない答えを出した正人達の姿は富や名声とは無縁の清廉潔白な正義のヒーローが誕生した瞬間だと名無しは考えています。今までの正人ならひょっとしたら貰って自慢していた可能性もありますが、後半で正義とは何か考える事があった正人の描写から、第34話のように鉄人に勲章が渡される点を除き、本人自身は何も見返りを求め亡くなったまでに成長したはずです。

 時折ハードなエピソードを盛り込み、正人へ試練のように迫った第2部ですが、今回こそ幾多の試練をくぐりぬけた正人の成果を現す回だったのでしょう。欲を言えば凶悪犯ながら父を国に抹殺された点から同情の余地があったパーカー兄弟にも光を当ててほしかったのですが、それを差し引いてもクライマックスに相応しいエピソードです。


今回の突っ込み

 今回はやはり忍者の存在。ハチャメチャです。


次回予告(ナレーション・沼田祐介)

 巨大彗星が地球に激突すると分かり、世界中が大パニックに。そこで物質転送機を使って彗星の軌道を変える作戦が立てられた。ところがスカーレット・ローズの襲撃で物質転送機が故障してしまった!果たして地球が助かる道はあるのか!?
次回、超電動ロボ鉄人28号FX「未来へのおくりもの」ヒーローは地球を救うんだ!

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