マートン(左)をハイタッチで出迎える和田監督。2人とも笑顔だ【拡大】
怒り、不満、苛立ち-。胸中を埋めたすべての感情は、バットに染みていた。そう、それでいい。魂はスイングに込めるしかない。前夜、過ちを犯したマートンが3ラン。火矢のようなライナーが、左翼席に突き刺さった。
「この3連戦はリズムが合っていなかったが、ボール球に手を出さなかったことが、最後の2打席で、いい形になったと思う」
4-2で迎えた九回一死一、三塁。広島5番手・横山の真っすぐが厳しい内角を突く。神経は研ぎ澄まされていた。両肘を折りたたみ、一閃。マツダスタジアム独特の、いびつな左翼フェンスのわずか数センチ上を、弾丸が通過した。
ベース一周の際も、勝利の匂いが充満した帰路でも、あの愛着を誘う笑みは、一切こぼれない。前日23日の広島戦で、審判へ暴言を吐き、退場処分を受けた。報道陣からの「きのうのことで気合が入ったか?」の質問には、「大事な試合に勝ててよかった」と直接的な問答は避けた。
球団からは口頭で注意を受けた。峯本達雄管理部長は「(処分については)連盟に従う。あした(25日)以降になると思う」と説明。広島市内の宿舎で直接会談を行ったとみられる和田監督は試合前、「きょうのプレーをみたらわかる」と多くは語らず。グラウンドで結果を出すしかなかった。