大阪・梅田地下街:初の全体像 高低差7m、CGで再現
毎日新聞 2014年08月19日 15時00分(最終更新 08月19日 16時33分)
五つの地下街がつながって迷宮のように複雑な大阪・梅田の地下街の浸水対策に役立てようと、大阪市立大工学部の谷口与史也(よしや)教授らが、立体構造をコンピューターで再現した。梅田の地下街には全体像を把握できる図面がなく、今回初めて最大約7メートルの高低差があると分かったという。東京や名古屋といった同様の地下街にもこうしたデータはない。近年のゲリラ豪雨の増加などに備え統一的な浸水対策が検討され始めており、専門家も活用に期待している。
◇大阪市大教授「浸水対策に」
梅田の地下街は、現在のJR大阪駅南側に1942年、大阪市が管理する大阪駅前地下道(広さ約5700平方メートル)ができたのが始まり。その後、別の地下街や地下鉄駅、ビルの地階などが次々に連結した。今ではビル地下や地下鉄部分を除く五つの地下街だけで東西約1.1キロ、南北約1.1キロ、広さ約12万6000平方メートルに。だが、各地下街は個別に管理され、全体像を正確に把握する図面はない。
一方、大阪府の想定では、南海トラフ巨大地震の約2時間後に最大2メートルの津波が梅田を襲う可能性があるとされる。しかし、地下街への浸水による人的被害の想定はなく、避難計画も各管理者に任されているのが実情だ。
谷口教授らは、各管理会社などから設計図を借り、実際に地下街の出入り口の高さなども測量。約2年がかりで五つの地下街の立体構造をコンピューターで再現した。その結果、連結された五つの地下街のうち、JR大阪駅周辺が比較的浅い位置にあり、最も深いJR北新地駅周辺との高低差は約7メートルだったことが判明した。浸水した水が流れる方向も予測できるという。
大阪府、市や地下街の管理会社などは近年のゲリラ豪雨増加などに備えて「市地下空間浸水対策協議会」を設立し、今年度中に統一した避難計画を作る方針だ。事務局の市危機管理室は「高低差は把握していなかった。浸水対策の参考になると思う」と話している。【吉田卓矢】
兵庫県立大の室崎益輝・防災教育センター長(防災計画)の話 つながった地下街の防災対策は、全体を一体的に考える必要がある。高低差などを含めた地下街の全体像が視覚的に分かるデータは、浸水時の水の流れが把握しやすいなど、大変役立つ。